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情報のインプットに大事なのは「頭の中に木を植える」こと

なくてもいいけど、あると人生が豊かになる雑貨のような知識を集めた「知識の雑貨店」というマガジンをはじめてみました。その第一号の記事として、知識のインプットについて書いてみます。

あの人忙しいのにどうやって情報インプットしてるの?

そういう人がいませんか?むしろ成功していて忙しい人ほど、知識が豊富で、新しい情報へのキャッチアップも早かったりします。そういう人は、一体どうやって情報をインプットしているのでしょうか。

このことを考え始めたのは、3日間連続で同じ質問を受けたからです。「普段どうやって情報をインプットしているんですか?」という質問です。一人は部下から。もう一人はメンティー(メンターにキャリアの相談をする人)から。そして最後は、講師をさせていただいた企業研修の参加者から。

私自身は成功者でもなければ、有名なわけでも、何かの第一人者なわけでもありません。しかし幸いなことに、身の周りの何人かの人からは、人より幾分知識が豊富だ、と思っていただいているようです。そして、情報のインプットに関して、若干人とは違うことをしている、という自覚もあります。今回はそのことについてお話します。

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大事なのは量でも質でもなく「事前に引き出しを整理」しておくこと

そうなのです。これがこのノートの結論です。ただ、さすがにこれだけでは解らないと思いますので、この先で詳しく説明させてください。

「事前に引き出しを整理しておく」というのを、難しい言葉を使ってもう少し具体化すると、「あらかじめ情報を構造化しておく」ということになります。

「構造化」などと言われると少し「怖い」と思いますが、わかりやすい例えがあります。「ロジックツリー」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、情報の構造はよく「木」に例えられます。ここでもその例えを使って説明していきます。

情報が構造化されている、というのは、頭の中にいくつも「木」がある状態です。企業の広告部門で組織長をやっている私で言えば、「マーケティングの木」「組織マネージメントの木」「人材開発の木」などです。また、私は読書が好きなので、私の頭の中には「西洋史の木」「文学の木」「哲学の木」などもあります。

それぞれの木には、太い枝があり、そこから伸びる細い枝があり、さらにそこに葉っぱがついています。この葉っぱが一つ一つの情報です。情報を構造化するというのは、頭の中にあらかじめ、このような「大きな枝」「小さな枝」を持つ木をこしらえておくことです。そして、新しい情報=葉っぱを仕入れたら、それをただ頭に放り込むのではなく、正しい枝の正しい場所に貼り付けていくのです。

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知識の差は実は「引き出す」工程で生まれる

情報が構造化されていないと、つまり、頭の中に葉っぱだけが散らかっている状態だと、せっかくインプットした知識を、必要なタイミングでうまく引き出すことができません。

読んだことのある本の話をしているんだけど、うまく議論についていけない、という経験をしたことはありませんか?それはおそらく、頭の中で情報が構造化されていないので、今話している内容についての情報が一体どこに入っているのか解らないのです。知識としてはインプットされているので、決して勉強不足、ということではありません。

これに対して、「木」「大きな枝」「小さな枝」といった具合に整理して頭に入っている情報は、すぐに見つけ出し、引き出すことができます。あ、この情報は、マーケの木の、あの枝のあそこあたりにあったな、といった具合です。そして、それに関連する別の情報もすぐに引き出せるので、あの人色々知ってるよね、となるわけです。

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知識が豊富に見える人とそうでない人の差というのは、実はこのように「情報を引き出す工程」でついているのではないかと思います。そういうと「アウトプットで差がついているのですね」と考えがちなのですが、それも少し違います。どちらかというと、情報をインプットする前の準備段階で差がついているのです。

つまり、事前に「木」と「枝」を用意しておき、そこに情報である葉っぱを貼り付けていく、ということなのですが、正確にいうとこれは必ずしも「事前に」行われているわけではありません。最初に新しい木をつくる時は、情報をインプットしながら、つまり木に葉っぱを貼り付けながら、同時に大枝・小枝を形作っていきます。

また、一度作った木の骨格は、その後全く変更しない、ということでもありません。新しい情報=葉っぱが追加されるたびに、大枝、小枝、そしてそれに張り付いている葉っぱの位置を調整することは多々あります。

インプット「量」だけを追い求めると「中毒」になる

情報が構造化されていない状態で、いくらインプット量を増やしても、本当に使える=必要な時に引き出せる知識は増えません。逆に、インプット量がそれほど多くなくても、情報が構造化されていれば、ここぞという時に使える知識は豊富になります。これこそまさに、「忙しいのに知識が豊富な人」の秘訣なのではないでしょうか。

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「普段どうやってインプットしているのですか?」と質問してくれるような人は、だいたいかなり熱心に情報のインプットをしている人です。本を読んだり、インフルエンサーのSNSをチェックしたり、セミナーに参加したり、サロンのメンバーになったり、積極的に人と会ったり。

しかし、「木」「大枝」「小枝」の状態で構造化して頭に入れていないと、実際に使える情報は増えませんので、「忙しいのに知識が豊富な人」との差は縮まりません。そこで焦って、もっとインプットしなくては、となる。情報をインプットしている間はそんな焦りもありません。すると、ある意味そこに安らぎを感じて、これもあれもと手を出すようになります。

それはある種の「中毒」である可能性があります。そして、そんな焦りからくる中毒症状につけ込んで、若く経験の浅い人のお財布を狙っている人や業者も、残念ながら存在します。

では、どうやって「木」「大枝」「小枝」をつくるのか?

残念ながら、ここに「魔法の杖」はありません。頭の中に上手に「木」「大枝」「小枝」を形作れるようになるには、それを何回も試み、試行錯誤を続ける他はありません。

しかし、試行錯誤を効率的にしてくれる大事なポイントがあります。それは、あくまで「自分の」木をつくる、ということです。例えばマーケティングを勉強するとして、優れたマーケティングの教科書には、あらかじめそうした構造があります。それを参考にするのはいいのですが、鵜呑みにはせず、自分の頭で考え、100%理解できるように再構築し、時に簡略化しながら自分のものにするのです。

というのも、知識の構築はその教科書だけで終わるものではありません。その後も色々な知識を、色々な方法でインプットしていくにあたって、別の人が考えた別の構造を持つ知識の束に出会うかもしれません。そもそも構造を持たない独り身の知識=葉っぱに出会うこともあるでしょう。

そんな時、自分で考えた、自分だけの木を頭にこしらえておかないと、それらをどこに貼り付けるのか、という判断がなかなかできないのです。

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自分の「木」は間違っていてもいい

そして、自分でこしらえた自分だけの木は、必ずしも正解である必要はありません。そもそも、情報の構造に正解などというものはありません。多くの人がこう考えている、という通説はあるかもしれませんが、それが自分の頭にしっくり来るかはどうかはわかりません。学者の間の通説であれば、学者と自分ではそもそもの基礎知識に差がありすぎます。

また、先ほども言った通り、木は随時つくりかえていくものです。新しい情報がインプットされ、そのことがきっかけで、大枝・小枝のつくりが間違っていた、と気づくことなどはしょっちゅうです。

大切なのは、正確な、正しい木をつくることではなく、自分だけの木をつくることです。なぜなら、それは自分の頭の中の木なのですから。他の人がつくった、他人の頭の中の木を自分に植え付けることは困難です。子供時代に濃密な時間を過ごした自分の親とだって、頭の中で木が育つ発育環境は大きく異なるものです。

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さあ、自分の木をつくろう!

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。きっとみなさんは、情報のインプットに熱心な方に違いありません。そんなみなさんの中で、頭の中に自分の木ができていないな、と感じた方がいらしたら。ぜひまずは一つ、小さな木をつくってみてはいかがでしょうか。

自分の一番好きなテーマ、得意なテーマ、から始めるのが良いでしょう。実際に木の絵を描いて、「大枝」「小枝」「葉っぱ」をそこにあしらっていくのも良いと思います。ワードやメモ帳の「箇条書き」ツールを使って、箇条書きでまとめていくのも一つのやり方です。

このようにノートにまとめる、人に説明する前提でアウトプットしてみる、というのは、私のとっておきの裏技です。皆さんのお知り合いの「知識が豊富な人」も、積極的に人前で自分の考えを披露していたりしませんか?それは実は、自分の頭の中の「木」を整理するためにやっているのかもしれません。

釈迦に説法、になってしまった方も沢山いらっしゃるでしょう。そうした方には失礼いたしました。しかし、みなさんの「周り」には、「情報インプット中毒」になってしまっている経験の浅い人もいるのではないでしょうか。ここまで読んでいただけた、ということはある程度共感いただけたということでしょうから、そうした方々に向けて、この記事をシェアしていただけると幸いです。

おわり。

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マーケターのように生きろ: 「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動

※本文中のイラストは、illust imageさんのものを利用規約に従い利用させていただいています。


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