キリスト教徒にサンタが来た話

僕はキリスト教徒だ。カトリック。最近は教会に行けていないが、日に一度はイエスに感謝する。もちろん、主（神のこと）にも感謝する。クリスマスは、家族と過ごし、天に感謝する日だと思っている。

以前の記事に書いたが、家族4人中3人が新型コロナウイルスに感染した。検査で陽性が出たので、間違いない。助かっているのは僕だけだ。「まともなのは僕だけか….！？」と言いたい。3人は、20日に症状が出始めた。現在は26日の23時。いまだに僕は無症状だ。

「勝ったな….」と思っていた矢先、事件が起きた。

うんこが出ない

うんこが出ないのだ。便秘という意味ではない。
肛門さんは、「うんこくん来てるわよー」と言っている。すぐそばにいるのを感じる。そばにいるね、とうんこが言っている。
が、うんこが出ない。サイズが大きすぎる。

25日の23時頃に、便意がやってきた。コロナ感染者と同じトイレを使うので、便座やレバー、ペーパーホルダーを念入りに消毒して、便座に座った。いくら消毒しても、居心地は悪い。換気のために、窓もドアも開けっ放しだ。ドアを閉めると、陽性者がドアノブに触ることになる。消毒しても、気分は良くない。
便座に座って、おなかに力を入れた。少しずつ、おなかの中をうんこが動いている。寒い。
「あ、出るな」と思った。肛門から、うんこの頭が見えた。いや、僕の目は顔についているから、肉眼では見ていないけど。
肛門から声が聞こえた。思ったよりも低い、鼻にかかった声だった。うんこはハッキリと、「こんにちは」と言った。
もう出るなぁ、と思ったが出なかった。詰まっている。
「ちょっ、ちょっとお下がりくださいね」と声をかけた。うんこは「あ、はい」と控えめな声で応えて、腸の方へ戻っていった。
もう一回だな。おなかに力を入れた。また、肛門から「こんにちは」と声が聞こえた。低くて、鼻にかかった声で、一聴してさっきと同じヤツだと分かった。さっきと同じように、同じ場所で詰まった。
これは長期戦になると覚悟した。僕は1年365日のうち300日くらいは下痢、64日は普通の硬さで、1日がカッチカチ。今日は、カッチカチの日だ。しかも、サイズが大きい。大きすぎて、骨盤にうんこが当たっている気がした。もちろんそんなわけはない。
こういう時はウォシュレットだな、3分ほど、こんにちはしたうんこに当てた。再度、おなかに力を入れる。出ない。
3度繰り返したが、出ない。もう諦めるかぁと便器の中を見ると、数滴、血が滴っていた。真っ赤な鮮血だった。戦意喪失した。

トイレから出て、ベッドに横になる。時計を見ると、夜中の1時前だった。クリスマスの終わりを、トイレで過ごしていたんだな。
血が怖いのもあるが、ウンコが肛門のすぐそこにいる。一度、肛門まで呼び出したウンコは、腸まで戻ってくれないんだ、初めて知った。腰を曲げたり、立ったり座ったりするたびに、ウンコが出そうになる。もちろん、詰まっているから出ない。怖い。ギリギリの状態で、あり得ない平衡感覚で、この状態が成り立っている。鮎川誠のレスポールは、テイルピースのビスに引っ掛ける部分が折れていると聞いたことがある。じゃあなんで弦がちゃんと張れてんの？と思う。そういうこともあるのか。俺のケツは今、鮎川誠のレスポールカスタムと同じ状態なのかな、と思った。
30分ほど横になっていたが、つらい。ケツが痛い。うんこがいる。意を決して、もう一度トイレに行った。30分ほどトイレに籠ったが、成果はなかった。鮮血の代わりに、濁った血が出ていた。

良い薬ないかな、とGoogleに聞いてみた。Googleは、「オイルデルがいいよ」と言った。僕の憧れのラジオスター、伊集院光さんもおススメしていた。明日、これを買いに行こうと決めた。

夜中の3時、もう一度戦うことに決めた。腸は「出てるよ」と言っていて、肛門は「まだ出てないよ」と言っている。ロストバゲージみたいなことになった。こうなると、もう違和感が我慢できない。あと、鈍痛がする。

トイレに入って、おなかに力を入れる。何度目だろう。同じように突っかかった。
「もういいか」
どんなデカいうんこなんだ。俺を針でツンと突いたら、パン！と破裂して、少し小さい俺の形をしたうんこが中から出てくるんじゃないかと思う。んなわけないなぁと鼻で笑う。笑った拍子に、おなかに力がぐっと入った。もう後戻りできない。肛門が死ぬのか、うんこが死ぬか、便器が死ぬか。どうなっても良い気分で、おなかに力を入れた。
「ﾏﾘｯﾏﾘﾏﾘﾏﾘﾏﾘ」と音を立てて、うんこが出た。

力が抜けた。はぁ。便器を見ると、めちゃくちゃ太いうんこが、1本のうんこが、そこにあった。うんこの両端が水から出ていた。1本で、水が埋め立てられていた。血は出ていなかった。

勝った。コロナに勝ちかけているが、うんこに負けるところだった。危なかった。トイレで十字を切った。時間は朝の4時前だった。