【文語詩】【新体詩】獄門謡

零落れいらくの音ぞする 雪の散る梢こずえから
あらまほしきや 堕つるべき時
唯ただひたすらに堕ち抜く事の

地獄の血 紅き火の光無き骸むくろの眼
どす黒き空底から見上ぐ
果て無き癖に夢見し業苦

霊域の撹乱の贖ひあがないは骨以もてす
曽根崎心中邪婬じゃいんの呪ひのろい
護国神社の荒ぶる御霊みたま

然しかあれど 然あれど 吾われ御法みのり貫けり
あはれなるかな 獄も天下と
閻魔たりとも道譲り給ふたもう

さあれども俗人は狂人の戯たわむれと
荒魂あらたま幾度いくたび捨てたりとても
護法ごほうの御旗みはた汚すはならじ

錯乱の汚辱にて汚さなむ 覚へおぼえずに
功徳と罰を一身に受け
尚なおも呼吸を辞めぬ事では

果たされぬ誓願の数程かずほどに狂ひたる
三千大千世界の咎人とがびと
一念三千いちねんさんぜん吾に有り