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ディズニーシーのカレー屋さんからブランディングを学ぶ

東京ディズニーシーの最奥にあるテーマランド「アラビアンコースト」には、「カスバ・フードコート」と呼ばれるカレーを販売するレストランがあります。
今回はこのレストランがいかに優れているかについて書かせて頂くとともに、その優れた点を仕事に活かせないかという意味不明な観点でnoteに残そうと思います。
ディズニー来てまで仕事の事考えてるなんて…って思いますよね。自分でもそう思います。一応気持ち悪い自覚はあるので、妻には言えないですね。

開業当時はカレー専門店じゃなかった

店内に入ると、商品をオーダーするカウンターが3つあります。
今はすべてのカウンターで同じもの(カレー)を販売していますが、東京ディズニーシー開業後の数年間は、それぞれ違うものは販売していました。

①フライングカーペット・カリー:カレーを販売
②ロイヤル・タンドール:タンドリーチキンやナシゴレンを販売
③ヌードル・チャーマー:かた焼きそばやあんかけライスを販売


3つのレストランが1つになったお店だったので、「フードコート」だったんですよね。
その後、そのうちに3つのカウンターすべて同じものを提供するように変更になり、最終的には現在の形である、カレーのみのメニューに落ち着いたという経緯があります。

ゲスト目線で言うと、様々なメニューが楽しめる場所だったのが、カレーのみになったということで、バリュー(商品の価格ではなく、このお店の存在価値)が低下していっている、ということになります。

肝心のカレーもどんどん内容が…

次に提供される商品です。例えば下の2枚の写真を見てください。

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上の写真は2011年5月の写真、下の写真は2013年12月の写真です。
2011年の時には銀食器でインドの本格的な雰囲気を出していますが、2013年では普通の陶器の食器に変わっています。さらに言うと、現在ではこのカレー用の小さな銀食器すらなく、日本のカレーのようにごはんにカレーが直接かかっている形に変更されています。
企業目線で言うと食器や洗い物に関するコストが下げられているのかもしれませんが、ゲスト目線で言うとここでもバリューの低下があります。

このように、実際の商品価格、チケット価格の値上げ以外にも、ゲストが体感できるバリューの低下というのは一見分かりづらい形で様々行われているのです。
ちなみに、値上げしないための企業努力である、という捉え方もできるので、オリエンタルランドを非難するつもりは全くありません

それでもなぜ人気なのか?

このように、ゲストが体感できるバリューは低下していることが明らかであるのに、「カスバ・フードコート」はいつも大人気です。
相当な席数があるので空席が無いというような事態にはなりにくいのですが、家族連れ、カップル、友達同士で来た学生などでいつもいっぱいです。
何故なのかというのを自分なりに考えてみました。

こんなにメニューが改悪されていってるのに、人気を保てるのは何故なんだ?提供するサービスの品質が下がっても、それでも選ばれる・愛される秘訣ってなんだろう。それが分かれば仕事の参考になるかも?という邪な思いなんですけどね。

理由① 機会の多さ

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冒頭に書いた通り、「カスバ・フードコート」は東京ディズニーシーの最奥にあるテーマランド「アラビアン・コースト」にあります。映画「アラジン」に登場するアグラバーのような非日常的な空間であり、特に夜ライトアップされた際には非常に“映える”場所でもあります。

また、すぐ隣には人気のアトラクション「マジックランプ・シアター」と「キャッスル・カルーセル」があり、どちらも小さなお子様でも楽しめるため家族連れが集まりやすいです。
それぞれのアトラクションの正面には噴水があり、ここは若者たちが自撮りする場所として長時間滞在する事が多いです。

「カスバ・フードコード」は周辺にゲストが集まる要素がたくさんあるため、必然的に集客できるチャンスは多いと言えます。

理由② 競合の少なさ

「アラビアン・コースト」には、「カスバ・フードコート」以外のレストランは存在しません。近くにシェイブアイスを提供する「サルタンズ・オアシス」があるくらいです。
一応、少し歩いて隣のテーマランドまで行けば「セバスチャンのカリブソキッチン」(ハンバーガー)や「ユカタン・ベースキャンプ・グリル」(お肉)というレストランがあります。

理由③ 競合よりも安い価格

2021年8月現在のメニューと価格は以下の通りとなっています。

・コンビカリー(タンドリーチキン添え) ¥1,300
・ビーフカリー(中辛) ¥1,100
・チキンカリー(甘口) ¥900
・ベジタブルカリー(中辛) ¥840

東京ディズニーシーのレストランにおいて、ファストフード以外のメイン料理で単価が1,000円未満というのは破格の値段設定です。

理由④ 高いユーザービリティ

「カスバ・フードコート」は非常に多くの席数があり、5人以上の人数でも座れるような大きなテーブルもあります。学生が友達みんなで行くような場合には4人以上になることも少なくありませんので、大人数で座れるということはメリットになります。
また、「カスバ・フードコート」は平屋建てであり、すべての座席が購入するカウンターと同じ1階です。購入してから座席まで行くのに階段やエレベーターは必要ありません。これは高齢者、ベビーカー、障害のある方などにとっては大きなメリットとなります。

理由⑤ 揺るがない核心部分の品質が高く、皆に愛される

「カスバ・フードコート」はハウス食品がスポンサー企業となっているレストランです。
ハウスのカレーと言えば説明不要であるほど有名だと思いますので、そんな有名なメーカーが提供するカレーがおいしくないはずがありません。もし「ハウスがやってるディズニーシーの彼はまずい」なんて評判が立ったらメーカーの存続に関わります。

あと最も重要なのは、提供しているのがカレーだということです。
カレーは(絶対とは言いませんが)嫌いというゲストは少なく、老若男女が楽しめるメニューです。理由②で書いた「セバスチャンのカリブソキッチン」や「ユカタン・ベースキャンプグリル」は若者以外では苦手とする年齢層もいるかもしれませんよね。

まとめ

理由を①~⑤まで書きましたので、振り返ってみましょう

①機会の多さ
②競合の少なさ
③競合よりも安い価格
④高いユーザービリティ
⑤揺るがない核心部分の品質が高く、皆に愛される

なんとなく、いかなるビジネスにおいても有利となる要素が集まっている気がしませんか?

要は元からあった他の要素が非常に高い品質でまとまっているいるため、妥協した部分(今回の場合メニューの数や盛り付け、付け合わせの内容などのダウングレード)があっても最終的なゲストの評価はほとんど影響しないということです。
正確に言うと、ゲストの評価は多少下がったとしても、それを理由に他に行くようなレベルにはなっていないという感じです。

確固たるブランディングがされているからこそ、こういったことができます。
街にあるインドカレー屋さんで、ひとつの陶器の皿の上に白米とナンが乗っていて、日本のカレーのように盛られていたら、「なんだこりゃ」ってなりますよね。ディズニーではそれはありません。

なんか見た目ショボくなったけど、結局カレーはうまいし、安いし、みんな食べれるし、入りやすいし、目の前にあるもんね、しかも水もタダ!みたいな。
結局、「東京ディズニーシーでカレーを食べる」という出来事において、「カレーの盛り付け」は優先度としてかなり低いということが立証されているのだと思います。

重要なのは「何を強くすればいいか」だけでなく「何を弱くしてもバレないか」を見極めることである

最後にそれっぽいタイトルにしてみました。
ビジネスにおいて、個人的にこのことは非常に重要だと思ってます。

95点を100点にする

のは本当に大変です。しかし、

実は70点なんだけど95点だと相手に思わせる

というブランディングがちゃんとできていれば、

90点になった時、相手の評価は105点になる

という事になります。
それを実現するための、何が重要で何が重要でないか、相手は何を求めているのか、を見極める力を普段から養っておくだけで、やみくもに技術スキルを高めることに没頭したり、上層部にペコペコするだけよりもずっと効果的なだと思っています。

うん、何が言いたかったのかよく分からなくなりました。
とりあえずディズニーのカレーはおいしいですよ。

Yuz.

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