いつの間にかガが好きになっていました 日本には約6000種のチョウ目の生き物がいて うちチョウ類は5パーセント 残り95パーセントがガだそうです とてつもない数です 大きさも数ミリのものから手のひらを超えるものまでさまざま 姿形もさまざま 生き方もさまざまでとても魅力的です 5月の森で最初に見たのはシロヒトモンノメイガでした 頭上の葉裏に隠れていましたが私に見つかってしまいました それにしてもなんと穏やかなやさしい姿でしょう 続いて現れたのはヒトリガ科コケガ亜科のスジベニ
バスを乗り継いで1時間半 降車後は徒歩15分で森に着きます 森の中心は農業用の溜池で 周囲2キロメートルに散策路が巡ります 大学の演習林ということもあり 散策路以外への進入は制限されていますが ルールを無視してまで森深くに分け入る人の姿は ここにはありません 入れば イノシシに襲われる スズメバチに刺される マムシに噛まれる といった注意書きがあちこちに掲げられ 散策路から外れそうな人の足を踏みとどまらせているからです というわけで私ももっぱら散策路沿いに虫を探します なか
子供の頃唯一「なんて不思議なんだ」 と興味を持った虫がナナフシです 見る機会がないままここまで歳をとり 虫を撮り始めてからは「見てみたいな」と思い出すことはあっても どこに行けば見つかるのかわからず 居場所を調べてまで探すこともありませんでした ところが先日 買い物の道でふと見上げた葉上に その生き物はいました もっとも最初はカマキリの幼虫と思い近づいたのです でもカマがない なんじゃろこの虫は と考えるうちに思い当たりました これがナナフシじゃねえのかと 調べたところト
谷底に光が当たる時間 黒いアゲハチョウが並んで吸水を始めました てっきり同じ種類の雌雄かと思ったのですが 左がカラスアゲハで 右はモンキアゲハでした チョウはこうした砂地でよく水を吸っています 水辺の泥土や湿った岩肌で吸ってることもあります 何かは書きませんが道に落ちてる何かに留まって 水分を補給してることもあります 休息を兼ねているのか それとも夢中になっているのか 吸水時のチョウには近づきやすい気がします 突然現れたのはナガサキアゲハです モンキアゲハにちょっかいをか
春から全国的にも有名な観光スポットを訪れています いまだコロナ禍であるものの 週末の散策路は混雑を極め飲食店には行列ができるほど その人通りから外れた谷に私は入ります 遊歩道があるにもかかわらず人影は稀 重なり合う植物の陰に 生き物の息遣いが潜んでいそうで ちょっと恐ろしくもあります ある日の午前 ふと見上げた葉裏にトンボの影がありました イトトンボのようですが それにしては胴が太め 逆光のせいもあり全身が黒く ずんぐりとした姿です といっても体は葉っぱの上ですから 種
海に霞がかかる日に島に渡ったのは4月半ばのこと 今はその頃には影もなかったトンボが飛び始めています 虫を撮っていると あっという間に季節が思い出になっていきます 島で最初に見つけたのはガ 調べても名前がわかりません ヤガ科でもなくキバガ科でもなさそうです ガは日本に約5000種いて 知識がないままに ただ写真を見比べてもとうてい名前が判明しそうにありません 諦めました アジサイの青い葉に影を落としていたのは ヤブキリの幼虫でした 幼虫は数も多く島の至
4月初旬 海辺のまちを訪ねるとまだ桜が盛り 川向こうの満開の山の中には 人の気配がまるでなく でも梢の高みを飛び交うヒヨドリや すぐ近くの枝を行き来するエナガなど しだいに生き物が立てる音が聞こえてきます そして足元にひらりと翅を開いて タテハモドキが降りてきたのです モドキなどと失礼な名前をつけられたこのチョウは 20年ほど前の北部九州ではまだ迷チョウで 定着したのは近年のこと 表翅の大きな目玉模様が特徴ですが 翅を立てる(閉じる)と 枯葉に擬
田んぼだったところや 山だったところが 住宅地に変わる光景を目にします その一方で古くからの住宅地では 空き家や空き地が増え続けています 方や新たに人が暮らし始め 方や住人がいなくなる 誰かが英断を下して これ以上生き物が暮らす環境が破壊されないよう うまく差配してくれないものかと考えたりします 比較的新しい住宅地を歩きました 休耕田がたくさんあります そんな一画がレンタル農園になっており 油菜科の黄色い花に モンシロチョウとミツバチが群れていまし
池の遊歩道を歩いていて 植栽の葉裏にユスリカを見つけました 水が温むのを受けて幼虫が羽化し 池を離れたものと思われます 写真はユスリカにしては大きなオオユスリカという種で 体長は1センチ弱 これから池には燕がやってきます 蜻蛉も現れ 夏の夕方には蝙蝠が飛び交い 周囲の柵にはハエトリグモなどの蜘蛛も出没 羽化するや否や ユスリカは彼らのかっこうの餌食となります またその幼虫は 観賞魚や釣りの際の餌として使われています まるで他の生き物の食糧となるために 生まれてくるかのよう
2月27日 河畔の林で日暮れを待っていました できればこの冬が終わるまでに フユシャクのメスの姿が見たい それには彼らの活動が活発になる夜に 彼らの活動しそうな場所にいることが より目撃の確率を高めることになると考えたのです 対岸の住宅の明かりが輝きを強め 樹木の間の闇が深くなっていきます 梢の向こうに星が瞬き 耳を澄ますと 植物の呼吸音が聞こえてきそうです でも枯葉を踏む足音以外 何者かが蠢く気配はまるでありません と 足元から小さな蛾が飛び立ち 懐中電灯の灯りの中を横
昨年羽化直後のツクツクボウシの写真をアップしましたが そのひと月前にはアブラゼミの羽化を記録しています ただその夜は羽化に至らなかったセミの最期も目撃し その壮絶なドラマに打ちのめされていました 私たちがぞんざいに扱う命は 食われる命も食う命も 一つ一つが必死で生きており 一つ一つが儚く消えていく まだ数えられるくらいの シリアゲアリの一種と思われるアリは 成虫になろうとするセミの 殻から露出したやわらかい背に這い上り 強靭な顎を使って肉を食いちぎっていきます その数は
河畔の林に入って最初のサクラの幹に クロテンフユシャクがいました うれしかったあ この冬ずっと探していたのです フユシャクとは冬に活動するシャクガ科の蛾の呼び名です いるところにはいるので珍しい蛾ではありません 日本には35種いるそうです 虫探しも釣りと同じで どの場所でどの時刻にどのような道具を用意するかが 探し当てる際の決め手になります 私のようにただやみくもに歩き回っても 見つけられるものではありません この日は運がよかったのです ただメスには会えませんでした 交
なんとなく夏のイメージがあるクサカゲロウ 1月の林縁にとまっていました 成虫の活動時期を調べると初秋までとの記載もあれば 成虫越冬となっているものもあります こうやって目の前にいるからには 遅れて羽化する種もいるのでしょう でも気になるのは食べ物です 成虫は花粉やアブラムシの甘露(排泄物)を食べるようですが 食物探しはさぞかしたいへんでしょう そういえば この数日前にはちょっとくだった森の入り口の シュロの木に産み付けられた卵を撮影していました クサカゲロウの卵は 「優曇華
どんなに小さな虫にも体があり 脚があり顔があって 眼があります 冬 寒さに耐える体から発せられる 健気な力感を誰かに伝えたくなります そのために写真がうまくなりたい もっとちゃんと撮りたい そう思う日々です 扉の写真はお尻の黒点と透明感のある体色から クロスジホソサジヨコバイの幼虫とわかります 体長は4ミリほど 森に入って葉っぱをめくっていたら出てきました サクラの木の皮を剥ぐと アカアシノミゾウムシが付いていました 目を覚ますとぴょんと跳ねて一瞬で視界から消えます ほん
虫を撮っていると人社会の身勝手さを見ることになります なにも宅地開発のような大掛かりな自然破壊の様を 言っているのではありません (それもありますが) 近所の公園や緑地にある草地さえ 刈り払うならまだしも除草剤を撒く人がいます 新築の家々では土の上に コンクリートやボードや人工芝を敷き詰めて 生き物の生活の場を奪っています 言い方を替えるなら 人は家づくりにおいて またそこでの生活において 木や草や土を遠ざけ つまりは「庭」を求めなくなったのです その結果生き物の居場所は
12月1日 森の入り口に置かれたテーブルに ミナミトゲヘリカメムシが休んでいました 地味な虫ですが見飽きることはありません 姿形だけでなく 感情まで読み取れそうな気がしてきます 12月7日 森の入り口に細身のカメムシがいました 緑の体色が美しい クモヘリカメムシです ほんとは飛んで逃げたいのでしょうけど この日の気温では這い逃れるのがやっとです 12月12日 森に入るとハートを背負った