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鮨・肴匠くりやレポート

今回はさやわかのカルチャーお白洲256番組アーカイブ記念番組で紹介されていた札幌の美味い寿司屋こと、「鮨・肴匠くりや」(札幌市白石区・本郷通商店街)に行きましたので、そのレポートとなります。おたよりでも送りましたが、更に書き加えたバージョンとして公開です。

今回のコースはひとり14,000円+ドリンク代。ふたりで行って40,000円には届かないというくらいの金額でした。8月から値上げ(コースが+2,000円)ということもあり矢も楯もたまらず勢いで行きましたが、本来的には誕生日とか記念日みたいなときに行くのがいいでしょう。誕生日とかに行きたいですね、本当に。カウンター席のみで6名、目の前のケースに並んでいる食材ほとんどがその日の6人に提供されるという仕組み。一応追加オーダーもできそうでしたが、ほぼコース料理で満腹という感じでした。

コースの内容ですが、
1.積丹古平のウニを乗せた茶碗蒸し

茶碗蒸しには仕込みなどで出た切れ端などが入っている

2.二晩寝かせた真イカのソーメンめかぶ和え
3.ヤイトガツオ(スマ)の刺身
4.ウナギの串焼き
5.マグロ3種(大トロ・中トロ・赤身)の細巻き

マグロ三種がひとつの巻物に入っています、グラデーション!

6.キンメダイの握り
7.マグロ赤身の握り
8.玉子焼き
9.焼きアスパラ・焼きニシン・タコの柔らか煮

大将の伝統の先をゆくロジカルなタコとニシン

10.失念(白身魚、おそらくスズキ系かタイ系なんですが・・・)の握り
11.ボタンエビの握り(生)

生エビのしっかりした食感と旨味が感じられる。ボタンエビは実は卒論研究対象でした。

12.マグロ中トロの握り
13.コハダの棒鮨

序盤から仕込まれていた棒鮨。裏巻きシャリの海苔や干瓢がいい仕事をします

14.アワビの肝ソース和え(シャリ玉を添えて〆はリゾット風)
15.数の子と奈良漬けのあん肝和え
16.横綱アサリのブイヤベース

圧倒的な横綱アサリの出汁を和風のブイヤベースで。最後の一滴まで旨い

17.キンキの握り
18.漬けマグロの握り
19.車海老の握り(茹で)

こちらのエビは茹で。ボリュームだけでなく味もパーフェクト。
生とは違う全く味わい。

20.利尻バフンウニの握り

置けば崩れるウニ。序盤の茶碗蒸しを思い出させつつも、全く違う味わい。

21.アナゴの手巻き
22.〆の玉子焼き
という内容でした。

合わせたお酒は1杯目こそハイボールでしたが、2杯目以降はアテも多かったことから、日本酒と合わせていただきました。お店のおすすめは「クラシック仙禽 無垢/栃木」とのことでしたが、今回は飲んだことのない「純米超辛口 鶴齢(かくれい)/新潟」「純米吟醸 水芭蕉/群馬」「天命 福乃香×夢の香 一回火入れ/福島」をセレクト、辛口も爽やか系もアテに合う、美味しい!

店を信じて知らない酒を呑むスタイル

ということで、一品一品に感動して食べていましたが、そのうち3品についてピックアップして書こうと思います。

まず9品目の焼きアスパラ・焼きニシン・タコの柔らか煮。アスパラについては言わずもがな、朝採れのものを鮮度を保持するために切り口を水に浸け、調理のタイミングで包丁を入れホイル焼きに。水分たっぷりで甘くて美味い、最高のアスパラの食べ方です。特筆すべきはニシンの火入れについて。ハモのように骨を断ち切りながら、皮目が焦げることなくニシンの身全体に均一に火が入るよう包丁が入っていました。大将曰く、ニシンは小骨が多く料理人としても面倒な魚だから、あまり画期的な手法が編み出されていないとのこと。ニシンは基本的に一本一本骨抜きをするのが丁寧なやり方として考えられている中、その固定観点の外側からアプローチすることが、既存の料理から一歩抜けた新しい料理に繋がっていくのだなと思いました。

つぎに13品目、コハダの棒鮨。コースの最中に料理の仕込みが見られる、というのが目の前で板前が調理する寿司屋の魅力です。この棒鮨も面白く見ていました。カンピョウ・ガリを裏巻きにしたシャリにコハダを一本乗せ、棒鮨の状態にして提供まで少し寝かせる。ほかにもネタが寝かせられて、いつ握られるのか楽しみに待つシーンがありましたが、特に棒鮨は握りたてが提供されるわけでもないので、ドキドキしながら仕込まれたあと、まな板に再登場するのか楽しみでした。食べてみれば、ほどよく締まったコハダ、ほかの握りより少し多めの赤酢のシャリ、歯切れのいい海苔、ガリとカンピョウの異なる歯応え、が一口のなかで次々と感じ取れ、まさしく料理漫画のワンシーンのよう。食戟のソーマであれば「おはだけ」していましたね。エビ、マグロという強めの寿司の〆としてちょうどよく、一方で情報量で引けを取らない流れに圧倒されました。

さいごに19品目、クルマエビの握り。多くの人が想像するクルマエビの握りは生のクルマエビが頭と尾をつけた状態で握られいるか、茹でられていても腹~尾が切られずシャリを覆っており、大きいエビの豪華さを目で楽しむところから始まるだろう。しかし、今回のクルマエビは生ではなく茹でての提供。しかも、シャリよりも大きいサイズではなく、包丁でシャリのサイズに合わせて成形されて握られる。ここで切られた部分は捨てられるのではなく、ワサビが塗られるネタの内側に一緒に置かれる。口に含むと、濃厚なエビの香りと味、茹でられたエビの食味が一気に広がり、生で食べたボタンエビとは全く違うエビのポテンシャルを知ることに。ほかの料理もそうですが、同じような食材が異なるアレンジで提供されることで、ひとつの食材のもつ完成形がひとつだけでなく、料理人の手を介すことでいくつも存在するのだ、ということを再認識できました。

17時に食べ始め、〆の玉子焼きを食べ終わってみれば19時半。2時間半のアテと寿司のラッシュが終わりました。金額だけ見れば、この時間に対して20,000円弱は高いと感じるかもしれません。もちろんわざわざ郊外に行かなくとも、札幌のど真ん中、東京のど真ん中でも楽しめる食材でしょう。

しかし大将曰く、純粋にコストを食べ物に載せられる方がいいものをお客さんに提供できること、こういう郊外に一軒くらいイイモノの店があることに意味がある、とのこと。確かに、ネタだけでなくシャリや海苔、薬味といった素材のクオリティの高さやその組み合わせの妙、調理方法はこの店独自のものも多く、単に高いものを食べた、美味かったというだけではなく、いい形で楽しめたと思えました。

もし観光で北海道、札幌に来ることがあっても絶対に行かないであろう商店街のなかの隠れ家的名店。カウンターでの寿司は食べるだけでなく、調理の流れを見て楽しむこともできます。今後もメニューの改良や品数の見直しを続けるとのことだったので、どう内容が変わっていくのか、次行くときが今から楽しみです。

さやわかさん、改めてありがとうございました!みなさんも札幌に来たときは是非!
尚、飛び入りできるようなお店ではないので、まずお店を予約してから飛行機を押さえましょう。中心部からも遠く、地下鉄駅なども遠いので事前にルートを確認し、タクシーなどで自動的に拠点に行けるような準備が必要かもしれません。

彼女にも大好評でした、この場を借りてお礼申し上げます。では!

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