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コルカタホームステイで学んだ家庭伝統ベンガル料理12選 #レシピ

無職になったしインドでも行くか、と思って旅に出て、いまはコルカタにおる。たまたまひょんな縁でコルカタに25年以上住んでいる日本人のドン的な方を紹介してもらうことができ、日本語教師のSubhaさんの家庭でホームステイをさせてもらった。Subhaさんは教員ということと日本語がわかるということが影響しているのかとても面倒見が良く、笑い方は日本人のよう。

コルカタは人々も穏やかだし文化と芸術に満ちている。デリーが政治的な中心地でムンバイが経済の中心地だとしたら、コルカタは文化の中心地ということになるだろう。落ち着いた暮らしがある。

Subhaさんは自分と同い年くらいの息子さんと2人で暮らしており、息子さんの部屋に居座る形になってしまった(寝室は2つなので彼らは一緒に寝ることになってしまっていた)。3泊の滞在で10食をガッツリ食べさせてもらい、料理も時間をかけて教えてもらうことができた。今はちょうど学生のテストが終わったところらしく2月いっぱいはお休みなので、昔のことも含めてたくさんのお話を聞くことができた。材料費は一応渡していたけど、マーケットに連れて行ってもらって果物やら試したい野菜を色々買ってもらって、実家に帰ってきたような気分だった。普段の食事は基本的にはベジの料理を2-3品作って、週に1回程度ノンベジを作るとかそんなもんらしいが、今回はリクエストに応じて特別に色々と作ってもらった。

そんなベンガルのヒンドゥー家庭料理を紹介しつつ教わったレシピを記しておく。家庭料理なので分量は全く正確でないし計測の隙がなかった。基本的な材料と作り方は示しているので、自分なりの好みに基づいてカスタマイズしてほしい。

レシピを見ると意外にスパイスは使っていないが、青唐辛子とマスタードオイルに限っては多用する。マスタードオイルはなるべく品質の良いものを使おう。コールドプレスのものがおすすめ。青唐辛子は切れ込みを入れなければ辛くならないので、風味づけのために入れるのがおすすめ。


ゴティとバンガルについて

コルカタの家庭で食べられている料理はベンガル料理ということになるが、ベンガル料理と言った場合、インドのベンガル州とバングラデシュとその周辺の料理を含む。元々同じ国だったのだが分割し、宗教の違いもあり食文化は異なる。日本に多いのはバングラデシュ料理店。西ベンガルには主にヒンドゥーの人たちが移住しており、Subhaさんのお爺さん世代が移住し、コルカタの南の方に住んでいる。

ちなみにコルカタにもともといた人たちをゴティ(Gothi)と呼び、東側から西側に移住してきた人をバンガル(Bangal)と呼ぶ。食文化もお互い少しずつ異なるようだが、世代を重ねてあまり差がなくなってきているようだ。居住区域や自意識には若干の影響があるらしい。バンガルの人たちは南コルカタの方に集まって住んでいて、北コルカタの中心の方はゴティが多いという話。
これは差別的ニュアンスがある言葉らしいが、本人たちと話していてそういう雰囲気はなかった(部外者にはわからないだけかもしれないけど)。

昔こういう記事を書いたのだが、バングラデシュ料理とバンガル料理(西ベンガルに移住してきた人たちの料理)はかなり違う。そもそものヒンドゥーとムスリムという宗教の違いもあると思うが、世代を重ねて多くの影響を受けた結果変化していっている。ただ、ホストファミリーにカスキ魚(バングラデシュで食べられる)の話をした時に「懐かしい〜!」という反応をしていたり、ボッタのような料理が出てきたりと、地域的に共通する食材や料理などはありそうだ。

このあたりのことはもう少し調べてみる必要がありそう。

ベンガル料理を食べる時の順番

ベンガル料理を食べる時には全てを混ぜて食べたりせず、食べる順番がある。それは厳格に守られるものではないが、なんとなく人々はルールに従っている。自分の皿に米をとりわけ、おかずを盛って米とよく混ぜて食べ、順番に食べながら一つ一つの料理を楽しみ、一通り食べたら進んだり戻ったりも自由なようだ。

①ギーと塩
②苦いもの … シュクトなどゴーヤの入った料理や、ニームの入ったもの
③シャーク(葉っぱ)… 葉っぱの炒め物
④揚げ物とダール … ダールはシンプルに作るので、揚げ物や塩、玉ねぎなどを足すこともある。
⑤ショブジ(サブジ) …. チョッチョリなどの苦くない野菜料理
⑥ノンベジやグレイビー … ノンベジが複数ある場合は味の薄いものから食べて次第に濃いものにしていく

苦いものから食べるのは健康のためと言われる。基本的に一品一品を順番に味わっていって、食べ進める中でまた戻ったりするのは構わないが、あまり積極的にアイテムを混ぜては食べない。その辺りは南インドの料理とは大分違うところである。

Subhaさんは基本的にあまり外食はせず自分の口に入れるものにとても気を遣っていた。塩分と油分の摂取量にうるさくスパイスを極力使わないようにしていた(が、たまに塩を入れすぎてしまったと嘆いてキャベツの葉っぱで塩分を吸収しようとしていた)。「料理に自信がない」とか言いながらどれもこれもミニマルで余計な味がしなかった。


食べたモノ

1日目昼食 ゴーヤとじゃがいものマッシュ、ベグンバジャ、キャベツショブジ、ダール、ダルナなど

食事の最初にじゃがいもとゴーヤを茹でてマッシュしたものから食べ始める。キャベツを中心にしたショブジ、貰い物だというウリの入ったシャバシャバのダールとボリのカレー、卵とじゃがいものカレー、ブロークンバシュモティライス、ナスの揚げ焼きのベグンバジャ、プレーンなダール。初日の昼食で、お邪魔して即ご馳走になった。食事は苦いものから始める。ご飯の進む味。

1日目夕食 ルチとアルータルカリ

ルチとアルータルカリ。ルチは10年ぶりに作ったという。小麦はベンガルでは元々あまり取れないのでやっぱりお米が好き。アルータルカリは新じゃがをシンプルにカロンジで炒めたもの。


2日目朝食 ムリとタルカリ

朝は簡単に済ませる。チャイとパフドライスのムリ、昨日の残りのアルータルカリを一緒に食べる。要するに甘くないポン菓子だ。袋のパッケージには「最新のテクノロジーで作られたムリです」などと書かれている。

2日目昼食 おばあちゃんのシュクト、チョッチョリ、カレラバジャ、カトラのカリア、ショルシェチングリ

4時間かけてたくさん料理を作ってくれた。シュクトはいくつかのパターンがあるらしいが、おばあちゃんの作っていた素朴なバージョンのシュクト。チョッチョリにはカリフラワーの茎の部分を使っている。野菜がたっぷりに甘塩っぱい。ショルシェチングリは簡単なタイプのエビのマスタードカレー。エビの殻の剥き方が独特。
カトラのカリアはムスリム由来の調理法が混在しているフィッシュカレーで、砂糖を入れ忘れたといっていた。


2日目夕食 チキンジョールとあまりもの

チキンカレーを新たに作ってくれた。作り方はかなり簡単だが時間をかけているので味が良く染み込んでおり煮物のような味。鶏はネットスーパーで骨付きのものを購入しているという。

3日目朝食 チキンのあまりとトースト

朝から一緒にマーケットに行く予定が親戚が倒れたということで急遽リスケになり、あまりもののチキンカレーとトーストを食べた。


3日目昼食 ベトキショルシェとあまりもの

Subhaさんが出かける途中でベトキを見かけたといって電話してきた。その場で捌いてもらってもって帰り、後ほどショルシェマーチにした。

3日目夕食 パトゥリ、ジャックフルーツダルナ、ベトキ・バパなど

市場でバナナリーフを仕入れてきて、ベトキという魚を包んで蒸し焼きにする料理を作ってもらった。これは結婚式などで食べられる少しめんどくさい料理で、時間もかかるし特別な体験だった。材料は同じで葉っぱに入れないで蒸したものがバパになる。同じ魚で食べ比べ。ジャックフルーツは時期的にはまだ早いらしいが、食べたことがなかったので特別に作ってくれた


4日目朝食 チャイとトースト

朝はトーストとチャイ。買ってもらったグァバやパイナップルなども食べた。グァバは中身が赤くなく、ちょっとねっとりとしていた。パイナップルもかなり育てられているという。マーケットではイチゴなんかも見た。


4日目昼食 モシュールダル、トプシェのフライ

おかずが食べきれなくて大渋滞しているので新規に作るのはなし。「そういえば基本のはずのダールの作り方を教えていなかった」と言ってシャバシャバのマスルダールを作ってくれた。トプシェという小さな魚をフライにする。昨日の残りのパトゥリは一日経って味が抜けていた。


レシピメモ12選

Cha চা  チャイ

チャイは色で作る。お家で作るチャイは煮詰めすぎずたっぷり飲めるように仕上げよう。

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