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ネパール料理店でネワリカジャとローカル酒を楽しもう(ネワリカジャのレシピも)

ネパールでよく食べられているものといえば豆のスープであるダルと白飯を中心とした定食であるダルバート、と即答されるかもしれない。そしてその中でも、美食で知られるタカリ族のダルバートが特に有名だ。

ネパールは多民族国家なので全土的に食べられているものはダルバートとモモくらいなのだが、実際にはダルバート以外にも民族ごとのたくさんの料理が存在する。今回はその中でも独自の発展を遂げているネワール族の料理と食について紹介。

※民族の話はカーストの話と直結することがあり、人によってはナイーブな話題なのでネパールの方と話す時は気をつけた方がよいようです。

dancyuで通称「インネパ」と呼ばれる「インド・ネパール料理店」で飲み歩きをする連載があり、酒場放浪記のようで都内のお店も紹介しているのでおすすめ。興味ある方はこちらの書籍もおすすめ。


「ネパール」と「ネワール」は語感が似ているので混同してしまいがちだが、ネワール族はカトマンドゥ周辺に定住し、13世紀から15世紀にかけて王朝を築いていた、ネパールという国ができる前に栄えていた民族でネワール語を母語とする。ネパール語とネワール語は似ているようだが全く違う言語。話によると方言レベルではなく英語と日本語くらい別の言葉らしい。

noteメンバーシップ内でネパール料理に関する研究活動をしています。今回はネワール族の食文化についてまとめてみました。

メンバーシップ内では日々テーマに沿ってレシピや食べ歩き情報などが交換され、読書会やオフ会などが盛んに行われています。ほっといても情報が流れ込んできてマニアックな話が遠慮なくできます。迷ったらとりあえず参加がおすすめ。2023年2月はパンジャーブ料理!


ネワール料理とは

ネワリカジャ(Newari Khaja)はネワリボエ(Newari Bhoye)やサメバジ(Samai Baji)とも呼ばれるネワール族の民族料理である。かつてはネワール族の特別な料理だったものが今では他の民族にも浸透し、ネパール全土で食べられるようになっている。サメバジはネパールのお祭り的料理で、いくつかの料理の盛り合わせのため料理の内容はさまざま。

炊いた米の代わりに干し米のチウラを敷き、その周りに豆や野菜、肉の料理を盛り合わせる。チウラは提供前に炒ってカリカリにすると美味しい。

カトマンドゥで食べたカジャセット
大久保セクワガルで食べたカジャセット

ネワリカジャはおつまみとしても優秀。ネパール国内にはバッティと呼ばれる居酒屋がたくさんあり、ロキシーという焼酎や、どぶろくのようなチャン、発酵した雑穀にお湯を入れて飲むトゥンバなどのお酒が飲まれている。ローカルのビールやウイスキー、ラムもあるネパールは、実は飲酒文化がかなり発展した土地なのである。

現地感さながらのネパール居酒屋バッティが大塚にあるのでこちらもぜひ行ってみてね。


チャン

チャンはマッコリにも似た、白濁したどぶろくのようなお酒。炊いた米に麹を入れて発酵させて作る。
軽い酸味があり、微炭酸のカルピスのような甘味がある。爽やかで飲みやすい。お店によってはマッコリを代わりに出していることもあるが酸味や発酵感は全く異なる。


ロキシー(ラキシー)

米やヒエなどを原料にした蒸留酒でアルコール度数は40度を超えてくることも。基本的には家庭で作られるもので、1週間程度経って発酵が進んだチャンも蒸留してロキシーにされる。ソバやタロイモ、マンゴーやバナナなどが原料に使われることも。ネワールの人はアイラと呼ぶ。


トゥンバ

キビの実を醗酵させて作られたチベット系民族のお酒。
お湯を注ぎ、金属のストローでちゅうちゅう飲む。ストローにはスリットが入っているのでキビの実は混入してこないというグッドデザイン賞。

魅惑のネワリカジャたち

ネパール料理では食材+調理法がセットで呼ばれて料理名になる。サーグブテコ(青菜+炒め)よりは、ブテコサーグ(炒め+青菜)の方がネパールっぽいらしい。

セクワ सेकुवा

スパイスでマリネした肉を串に刺して炭火で焼いた料理。豚、羊、やぎ、チキンなど色々な肉が使われる。
「セクワガル」という名前のお店が新大久保周辺にもいくつかあるが「セクワのある家」という意味でつまり焼き鳥屋みたいな感じである。

スクティसूक्ति 

Wikipediaより

ネパール語で「干す」は सुकाउने/sukaune/スカウネといい、マトンや豚、水牛、場合によっては水牛などの干した肉のことをスクティと呼ぶ。顎のトレーニングによく使われることで有名。料理に使う際は一旦揚げてから野菜と炒め合わせたりする。

自家製スクティ

日本のインドネパール料理店ではタンドールの上で干したりしている光景をたまに見ることがある。
家庭ではフードドライヤーや乾燥機能付きオーブンなどで自家製のスクティを作ることもできる。レシピは後述。乾燥にはこれ使っていますが、あれこれめっちゃ便利なのでおすすめ。


チョイラ छोयला

ポークチョイラ

ネワールの祭儀料理として重要なものの一つ。焼いた肉と野菜をスパイスと油で和えた料理。マスタードオイルとチリが強め。水牛が人気だが、山羊やチキン、鴨やマッシュルームなどでも作られる。チョイラは冷たいままで提供されることが多い。

サデコसाधेको

グンドゥルックのサデコ
ポークチョエラ

サデコはスパイスが効いたマリネで、野菜がメインのサラダっぽいのもある。チョイラと似ているがチョイラは基本的に肉を使うのに対して、サデコは肉とは限らない。また、基本的に切った野菜が多めに入る。グンドゥルックサデコ、ポークサデコなど色々なサデコがある。

バラ/ウォー

大久保セクワガルで食べたカジャセット

ウラドダルを浸水したものをペースト状に挽いて焼いたもの。豆腐ハンバーグのような味がする。カジャセットの卵の下にあるものがウォー。見た目はパンケーキって感じですね。


カチラ

半生の肉料理。水牛の肉などをミンチにしてニンニク、コリアンダーなどを和えた後にスパイスをテンパリングして油ごとかけたユッケのような料理。

参考:


ちょっとレシピも紹介

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