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ファイアモモの悪口/ポンディシェリに思い馳せる/茨城にあるスリランカ:カレー哲学の視点(21/7/18〜7/24)
日曜日:ファイアモモ
カレーの季節がやってきたな。
夏到来の嬉しさに、十年来の友人と大塚のネパール料理店に行った。お互いのことをすでに知り尽くしている仲の良い友だちというのはまるでセーブポイントのようだ。しばらく会っていなくても、再会と同時に以前セーブした日時から時が動き始める感覚がある。それに、この十年の間のあらゆる自分も彼の中に保存されていて、そんな昔の自分に会えるという意味でもセーブポイントだと思う。何も変わらないように思えても彼の緩い尿道括約筋は緩む一方だというし自分もスパイスへの依存度は年々増すばかりなのだが。
裸で首にタンバリンをかけながらひと晩中踊り狂ったのが仲良くなったきっかけだという、もはや定番となってしまった僕たちの馴れ初めの話をしながら、彼と彼の奥方とともにグンドゥルック・コ・アツァールとバフ・スクティを食べた。バフは脂の甘味がじゅわっと感じられる。
ファイアモモも食べたのが、よくわからなかった。旅館で使われているようなあの固形燃料に火がつけられて、中心が開いたしゃぶしゃぶ鍋のようなものに乗っかったスープモモが出てくるだけだ。特に辛くもないのでファイアーの意味が二重になっているわけではないようだ。トマトベースのスープが延々と熱せされていて常に熱を保っているのではあるが、この独特の形の器では単純にモモが取り出しにくいし、加熱され続けることで皮に火が通り過ぎてしまう弊害もある。ファイアモモはすでに形骸化したパフォーマンスなのか?味は美味しかった。
インドで流行している、髪の毛を燃やす理髪店のことを少し思い出した。髪の毛の先端がシャギーになる効果があるらしいのだが、それも形骸化したパフォーマンスなのか?噛みタバコパーンに火を付けるファイアーパーンというのもあるし、彼らは単純に火が好きなのだろうか。
カレーはできたてで、ライブ感があってかなり美味しかった。
文章を書くリズムを作るため、何も考えずに毎週日記を書くことにした。主にカレーを食べた記録とカレーを作った記録、カレーについて考えた記録。
推敲も校正もせずに気軽に更新するnoteです。
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バックナンバー
月曜日:三つ葉のサンボル
月曜日にニュースを期待してはいけない。特に書くべきこともないが、余っていたイドゥリを蒸しまくったこととゴトゥコラのサンボルを参考にして三つ葉のサンボルを作ったら三つ葉の存在感はほぼなくなっていたことくらいだろうか。
火曜日:フィッシュアサド
年越しから残ってしまっている蕎麦をインディアーッパだと言い張ってカレーとともに食べたがむなし。スリランカ料理に全然合わない。声に出して読みたいシンハラ語ナンバーワンを決める大会があったら自分は「アーッパ」を推したいと思う。「ッ」の入る位置が難しい。
ポンディシェリについて調べていると冷蔵庫にたまたま死んだブリの切り身があったため、ポンディシェリ料理のフィッシュ・アサドを作ってみた。インド料理を作るのは久しぶりだった。クミンとアニスをミックスしたパウダーが特徴的で、最後にカシューポピーシードペーストや濃いココナッツミルクでソースを作るような工程があり、確かにフランス料理っぽさがあった。
詳しくはこちらの記事にまとめたのだが、そういう伝統的なミクスチャー料理はいつでも現地で食べられるわけではないようだ。少なくともちょっと旅行したくらいではたどり着けないようだ。保護対象の失われし文化なんだろうか。インドに早く行きたくなってきてしまった。
水曜日:カッパ
四連休の前夜祝いということでケララバワンに行った。ケララの主食の一つであるキャッサバ芋を単純に炒めたカッパ(そのままキャッサバ芋の名前)という料理を食べたことがなかったので食べてみた。カレーと合わせて食べられる。冷凍で入手したベトナム産のそれより新鮮な味わいがした。ピーマンも入っていて、普通にじゃがいもを炒めたかのような、ジャーマンポテトのベーコン抜きのような料理だった。ケララバワンでは群馬かどこかに畑を持っていて、毎年収穫した芋を一年分まとめて冷凍しておくらしい。
ケララバワンに行くとどんなに無理してもイドゥリを食べるのだが、今日もイドゥリの調子はよかった。サッシーさんがウェットグラインダーの使い方を事細かに教えてくれた。ウラドダルを挽くときに水を入れすぎないことが一番大事らしい。
木曜日:嫁入りパリップ
嫁入りパリップを煮てみたが失敗した。嫁入りパリップとは、スリランカにおける味噌汁に相当するココナッツベースの豆カレー、パリップを何も見ずに作ってみることで己のスリランカの力を試す試練である。
悪くはなかったが、シナモン、フェヌグリークを入れ忘れなんだかぼんやりとした味わいのシャバシャバめのパリップが出来上がってしまった。いつもインドにつられてしまう。
夜はれんこんみたいな駅のモダンスリランカ料理店に行く。もともと赤坂とかでずっと外国人相手のレストランをやっていたところ、コロナを機に板橋に移転。いままでの30年の料理キャリアを注ぎ込んだ渾身のお店だという
柔らかなラムビリヤニとシーフードライス、竹炭の入った黒いアーッパのデザートなど。途中から何料理を食べているのかわからなくなったが、接客や空間も含めてエンターテインメント性が高い。
スリランカはとてもホスピタリティが高いというか、サービスのクオリティがツボをついているなと感じる。島国だからなのか、観光業が発達しているがゆえなのか...。
金曜日:偽ランプライス
祝日。朝からポルロティを作ってみたが失敗した。なんだこれ。
突然だが自分は車の運転も体育会系の人間も好きではないし、スポーツ観戦の楽しみ方がわからないまま大人になってしまった。別に一人で身体を動かすのは好きだし、昔は運動部に所属していた。灼熱47度のインドの夏で2-3時間サッカーをし続けるくらいの体力はある。スポーツが嫌いになった要因として一番に思いつくのは、子供たちのスポーツクラブで本気で出しゃばってくる大人たちのせいかもしれない。子供がサッカーをしているときに「上がれ!上がれ!」しか叫ばない彼らのことである(一体どこに上がるというのか)。子供の発育や教育のためだという大義を掲げてはいるが基本的に彼らは自分のことしか頭にない。
...これくらいにしておこう。別に自分が運動が得意ではないからというわけではない。
今月はずっとスリランカ料理を作っているのだが、このnoteを見て茨城県に遠征に行くことに決めた。料理店4軒(一軒は改装中で食べられず)と食材店を一軒、スリランカ食材の農園を一日で駆け抜けるという過酷なツアーであった。詳細はまたどこかに改めて書こう。結果的に4年前に行ったお店を再訪してしまったが、自分の知識が増えれば増えるほど料理の味わいは増す気がする。これって、情報を食っているんだろうか。
昨年に始まったスリランカ野菜農園では大量の見慣れない野菜が作られており、話を伺いながら野菜の収穫もできた。ここ10年ほどでスリランカ人の人口は増加の一途をたどっているという。
スリランカ人は東京は嫌らしいのだが、大阪に住んでいれば「大阪はスリランカに似ている」と言い、常総に住んでいれば「常総はスリランカに似ている」という。誰かがファーストペンギンとなり何らかの拠点を作り、そこに故郷の仲間たちが集ってきてコミュニティが出来上がる。日本の中のスリランカについてもっと知りたくなった一日だった。
茨城土産としてスリランカ野菜を一通り買ってきたのですべてカレーにする。
土曜日:スリランカ汁
月に一回は東京マサラ部室の大掃除をしている。そのため、普段は小掃除にとどめている。放って置くと冷蔵庫や冷凍庫にものがたまり、油断するといつ湧いて出たのかわからないものたちが増えるので、それをまとめてやっつける。解凍して食べたり、駄目になっているものは捨てたり、今はもういなくなってしまった元住民の作ったビリヤニを眺めて思い出話をしたりする。
25人のインド人が住むシェアハウスや監獄のような風呂なしトイレ無しの会社のボロい寮、うさぎ小屋のようなアパート、駅から遠くて安いばかりのアパートなどいくつかの住居を転々としてきたが、住処の問題はついてまわる。それもこれも人間が定住してしまったからだ。
他者と暮らすということは、自分のテリトリーに自分のコントロール範囲外の物事が増えるということである。それがいい意味でも悪い意味でも刺激になり、学びにつながったり、やたら疲れたりもする。最近は余り物を家で食べて片付けなくてはならない主婦の気持ちがわかるようになってきた。
キッチンが片付いてよく晴れた日だったのでワランを水に沈めた。
スリランカのclay potワランは3日間水に沈めてから完全に乾かし、ココナッツオイルを塗って完全に吸収されてから初めて使えるようになるらしい。
— カレー哲学たん(करी टेछगाक तन) :東京マサラ部 (@philosophycurry) July 24, 2021
呼吸してるよ、夏っぽいですね。 pic.twitter.com/RkZqimlWoD
最後に宣伝
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夏休みですね。今年の夏はスパイスを使ったクラフトジンジャーエールに挑戦してはいかがですか?
こちらはスパイスをこじらせた成人男性がジンジャーエールのレシピを低音ボイスで読み上げるだけの動画です。ご査収ください。https://t.co/G7wMli0p0I pic.twitter.com/cokjjmZKOW
このジンジャーエール動画の中の人をやっています。この夏はクラフトジンジャーエールを作ろう!
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