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カレーにおける玉ねぎ炒めと時短方法について。玉ねぎ実験総まとめ@八丁堀wacca【東京マサラ部活動レポート】

玉ねぎのことを考えていると夜しか眠れないね。

月に一度、八丁堀waccaさんのキッチンをお借りし、カレーにまつわる要素について様々な実験をしていく「カレーのカガク」プロジェクトが進行中だ。毎回新しい発見がいくつもあり大変楽しい。

三浦さん、いつもお世話になっております!

肉のこと、スパイスのこと、水のこと、油のこと…。扱いたいトピックは山ほどあるのだが、まずはカレー作りの基本のキである玉ねぎについてフォーカスを絞り、3回連続で実験を行った。

今回は、その3回分の玉ねぎ実験の総まとめレポートとなる。まずは過去の実験内容をいま一度振り返ったあと、カレーの玉ねぎ炒めに関して僕らが学んだことと、残された課題についてまとめる。

  1. 塩の有無に時短効果はあるのか?

  2. 時短のために玉ねぎを冷凍するとどうなるか?

  3. 玉ねぎを切ったときに涙が出る理由

  4. 電子レンジを使うと玉ねぎが臭くなる理由

  5. 火の強さ、加熱の温度帯によって起こる反応の違い

  6. 玉ねぎの品種について


第1回実験:カレーの玉ねぎを強火で炒める必要はあるのか?

弱火で炒めた玉ねぎと強火で炒めた玉ねぎは本当に違うのだろうか?

カレー作りに使われる「飴色玉ねぎ」であるが、弱火でじっくり加熱して作る洋食的アプローチと強火で一気に炒めるインドカレー的アプローチに大きく分けられる。 

大量の油を使い強火で加熱し続けるインドカレー的玉ねぎの炒め方は、弱火でじっくり炒めて焦がさないように色づけていく洋食の玉ねぎ炒めとは対極にある。洋食の世界では、強火で炒めた玉ねぎは雑味の原因になり素材感を損なうのでNGとされている。試してみるとわかるが、そうやって炒めた玉ねぎはオニオンスープなどにはやっぱり合わない。

第一回の実験では弱火炒め玉ねぎと強火炒め玉ねぎを、既製ソテードオニオンと同じ15%の重量になるまで加熱して比較をした。

できあがった玉ねぎそのものと、それぞれの炒め玉ねぎを使ったカレーを食べ比べてみたところ、参加者全員が明らかに識別できるほど異なるものになった。

強火炒め

強火で炒めた玉ねぎは香ばしく、フライドオニオンのように半分揚げ焼き状態に仕上がった。カレーにするとスパイス感が増幅するように感じられ、ご飯との相性もよくカレーとしての評価は最も高かった。

弱火炒め

弱火で炒めた玉ねぎは同じ重量でも色づきが浅く、玉ねぎの味が出た甘い仕上がりとなった。カレーにすると玉ねぎの香りが前面に出て、スパイスの香りが分離するように感じられた。

結論として、洋食的な玉ねぎとインドカレー的な玉ねぎは全く別物であり、それぞれを作り分け、その特性を活かした使いかたをするのがいちばんよいということがわかった。なんだか平凡だが、香ばしいスパイス感を活かしたいカレーには強火炒めの玉ねぎが、甘く素材を活かすようなカレーには弱火炒めの玉ねぎなど使い分けてみても面白いかも知れない。

第2回実験:カレーの玉ねぎ炒めに塩を入れることには意味があるのか?

第2回はいくつかある玉ねぎ炒めの時短手法について。時短手法は世の中にいくつか提案されているが、炒め時間が本当に短くなるのか、またそれぞれの手法を取った時に味への影響がどうなるのかを検証してみた。

次の6パターンのみじん切り玉ねぎを用意し、20%重量の油を用い、15%の重量になるまでそれぞれ同じ火力(業務用の強火)で炒めた。

  • 塩を入れずに炒める(基準用)

  • 炒めるときに塩を入れる

  • 塩もみして30分おく

  • 冷凍

  • 一晩干しておく

  • レンチン

結果

重量が15%になるまでの炒め時間は以下のようになった。

干し(3分56秒)<塩もみ(4分11秒)<冷凍(5分31秒)<レンチン(6分00秒)<塩有り=塩なし(6分22秒)

さらに、カレーにしたときの影響を見るため

①塩を入れずに炒めたもの
②塩を入れて炒めたもの
③冷凍してから炒めたもの

の3種類を同じレシピ、同じ時間で同じ重量になるようにチキンカレーに仕上げた。

食べ比べた結果としてはこのようになった。

①塩を入れずに炒めたもの
焦げ感が強く玉ねぎが浮いている感じがあり、なんとなく分離しているように感じられた。
②塩を入れて炒めたもの
玉ねぎがしっかり溶け込みつつも甘さがしっかり出てカレーとしてはまとまりがあり、評価が高かった。
③冷凍してから炒めたもの
玉ねぎが溶け込みきらず、スパイスが分離したように感じられ、玉ねぎの食感がまずかった。

塩を入れてある程度時間を置いた場合には時短効果が認められるものの、炒める際に塩を入れても入れなくても炒め上がりまでの時間は同じ。しかし、味わいに関しては塩を入れて炒めたもののほうが玉ねぎがいい具合にカレーに溶け込み、カレーとしては調和が取れている味わいになった。

また、時短の方法によっては味への影響がかなりあることがわかった。
干し玉ねぎは豊かな味がして美味しかったし塩もみ玉ねぎはサクサクとした食感となった反面、冷凍の玉ねぎは繊維が壊れてふにゃふにゃになり、なんだか気持ち悪い食感に。また、レンチンしたものは素材が弱ったような味と独特の硫黄臭が気になる仕上がりとなった。

結論、玉ねぎを炒めるときに塩を入れても特に時短効果はないようだ。

ただし、材料の量に対して火が強すぎたかもしれないので、予備実験として大量調理をした場合にどうなるかは試してみる必要がある。

第3回実験:本当に、カレーにおける玉ねぎ炒めに塩を入れる意味はあるのか?

実験の結果を踏まえて追試として行われたのが第3回の実験だ。第2回の実験では玉ねぎの量が200gと少なすぎた。それを業務用コンロの強火で炒めてしまったのですぐに玉ねぎが規定の重量まで炒め上がってしまい、本当に差分がないのかはよくわからなかった。

そこで今回は、玉ねぎの量を10倍量の2キロに増やして追試を行った。

仮説

200gの玉ねぎを使用した際は炒めるときの塩の有無で仕上がるまでにかかる時間は変わらなかった。分量が10倍に増えた程度では、同じ火力ならば塩の有無では両者の炒め時間は変わらないのではないか、というのが仮説だった。

方法

八丁堀のスーパーで購入した北海道産玉ねぎをみじん切りにし、差分が出ないようにすべて混ぜてから2kgずつに分ける。
比較のため、400gの玉ねぎ炒めも作る。

業務用ガスコンロで火力を家庭用の強火の火力程度で一定に保ち、重量の20%となる400gの油を用いてフライパンで炒める。並行して同時に炒めると火力に差分が生まれてしまうため、今回はコンロの火力を一定に保ちながら同じコンロで順番に炒めていく方式をとった。

塩なし

400gの植物油を加熱し、100℃に到達したら玉ねぎを全量投入する。

油を抜いた玉ねぎの重量が元の15%に到達したら火からあげる。


塩あり

塩以外の条件を変えずに、同様に塩あり玉ねぎを炒めていく。
塩は1.2%の分量となる24gを最初から投入した。

こちらも同様に、油を抜いた玉ねぎの重量が元の15%に到達したら火からあげる。

400gの玉ねぎ炒め

400gの分量に80gの油を使い、同じ火加減で玉ねぎ炒めを用意する。

3つの玉ねぎ炒めを作るために合計3時間以上かかった。その間我々はガスコンロの前で立ちっぱなしになり、少しずつ色合いを変えていく玉ねぎを見つめながら他愛もない話で盛り上がった。玉ねぎ炒めは現代の焚き火だ。

かつて男たちは昼間は狩りをして、夜は焚き火を見つめながら語り合い、身体と心を休めながら親睦を深めたという。現代の男たちは、カリーのために使う玉ねぎの変化を見つめながら語り合っていた。


結果:

詳細データは煩雑なので『東京マサラ部、インドを作る』
限定パートで公開しています。

炒めあがりまでにかかった時間

塩なし玉ねぎ…炒め始めてから74分54秒で708g(約15%重量)に到達。

  • 40分経過するまでは水分が流出して煮るような状態になり、90℃程度をずっとキープしていた。

  • 45分経過頃にはほぼ水分が飛んでフライドオニオンのような状態になり、温度は100℃を超えていた。

  • 65分経過頃からこまめに重量測定をし、約15%の重量になった74分54秒で終了。



塩あり玉ねぎ…炒め始めてから77分08秒で736g(約15%重量、塩24g含む)に到達。

  • 塩なし玉ねぎに比べて水分がでてくるのが早い

  • 20分経過頃には大量に水が出てきた。

  • 30分経過時点では水が大量に出てきて大量の湯気が出て、煮るような状態に。表面温度は90℃〜95℃程度で、沸騰している。

  • 45分時点で端の方の一部がフライドオニオン状態になり始めた。
    塩なしのときに比べてプラス50gの重量をキープしながら推移。

  • 65分時点で105℃〜120℃に到達。

  • 最終的に77分08秒で終了。

400gの玉ねぎ炒め…全く同じ火力で炒め、20分56秒で15%の重量になり終了。量が少ないため仕上がりは速かった。

考察

両者の炒め上がり時間はほぼ誤差の範囲内だといえる。

時短について
結論として、玉ねぎが炒め上がるまでにかかる時間は火力によって変化する。火力が同じであれば大量調理においても(少なくとも2kg以下なら)塩を入れても入れなくても炒め上がりまでにかかる時間はほぼ同じ。ただし、同じ火力ならば時短にはならないが、塩を入れることで強火というオプションが使えるようになるため、鍋や火力の選択肢によっては時短が可能になる

両者は塩の有無によって水分流出の仕方が全く異なった。塩ありの方は水分が速く出てくるため玉ねぎ自体から出た水分で煮るような状態になり、なかなか温度が上がらなかった。そのため水分が飛びきるまでは塩なしよりも変化が緩やかになり、水分が飛んでしばらくは追いつき追い抜きそうになり、ある時点で追い抜けなくなり、平行線のまま一定で推移した。

塩を入れた場合は水分が出た段階で強火にして水分を飛ばすことができる。塩を入れない場合は強火を使うと焦げてしまうが、塩ありだと強火で焦がさずに炒めることができるためそういう意味では時短が可能になる。



玉ねぎの量と炒め時間による最終的な質感の差分
火力を固定して2kgの玉ねぎと400gの玉ねぎをそれぞれ炒めたが、同じ15%重量の仕上がりにも関わらず最終的な質感が異なった。塩ありと塩なしの間ではほとんど差分がわからなかった。

400gの玉ねぎ炒めは表面の水分は飛んでいるが内部には水分がまだ残っており、全体的に不均一な水分の飛び具合だった。食べると香ばしくシャキシャキしている。一方で、2kgを一度に炒めた玉ねぎは全体的に均一な仕上がりとなり、ねっとりとしてジャムのように口内にまとわりつく甘い味になっていた。

この味わいの差分は大変興味深い。これは加熱温度の差によってある程度説明がつくと思われる。
大量の玉ねぎを同時に炒める場合、鍋に十分な表面積がないと水分の蒸発が難しくなり、鍋の中にどんどん水分が溜まっていってしまう。その結果として十分な油を使っても鍋中温度が100℃以上にあがらなくなり、155℃付近で加速するメイラード反応よりも、カラメル化の方が促進してしまう結果になったのではないだろうか。

おまけ:できあがった炒め玉ねぎを用い、三浦さんがキーマカレーを作ってくれました。

①塩あり15%炒め玉ねぎ(2kg)
②塩なし15%炒め玉ねぎ(2kg)
③15%炒め玉ねぎ(400g)
④レンチン玉ねぎ
の4種類の比較。

wacca特製、ウプキーマカレーレシピ

<材料>
フェンネルシード     小さじ1/2
唐辛子          1本
ターメリック       小さじ1/4
チリパウダー       小さじ1/4
ガラムマサラ       小さじ1
塩           2.4g
合いびき肉       200g
15%炒め玉ねぎ   110g
オイル浸けにんにく 10g
水         200cc
カレーリーフ    あれば20枚ほど

<手順>
・油で唐辛子とフェンネルシード、カレーリーフを加熱する。
・強火でにんにくとひき肉を炒める(本来は玉ねぎを先に炒めるが、玉ねぎはすでに炒められているため)
・炒め玉ねぎを入れる。
・パウダースパイスと塩を入れる。
・水200ccを入れて強火で煮込む。
・最後にチリと塩で味を調える。

食味評価

①塩あり15%炒め玉ねぎ(2kg)カレー
②塩なし15%炒め玉ねぎ(2kg)カレー

正直違いがわからなかった。玉ねぎのうまみブーストが持続し、甘みを長時間感じる。肉の甘味も引き出されている。
反面、香ばしさには欠けており、洋食のミートソースのように感じた。

③15%炒め玉ねぎ(400g)カレー
少量で炒めた玉ねぎを使ったものは甘みが弱く、苦味と香ばしさが全面に出ているが、最もカレーっぽい仕上がりになっていてご飯がすすむ。

④レンチン玉ねぎカレー
同じ材料を混ぜてレンジアップしただけのレンチン玉ねぎキーマはひどいものだった。玉ねぎ臭さが全面に出て水っぽく、スパイスの香りもよくわからない。イオウ臭さや生臭さが出ている。

3回の実験の振り返りは以上となる。
ここから、3回の実験と考察を通して現時点で玉ねぎに関して学んだことをまとめてみたい。


カレーの玉ねぎ炒めに関して僕らが学んだことと、残された課題

塩の有無に時短効果はあるのか?

単純に炒める段階で塩を入れただけでは時短効果は得られない。確かに塩を振ることで浸透圧の働きにより玉ねぎ細胞中の水分を引き出すことはできる。
時短効果を狙いたい場合は予め塩を振って30分以上置くか、最強の火力や表面積の広い鍋を使うことで、鍋の中の水分をいち早く蒸発させることが必要になる。流出した水分量や火力、鍋の形状や材質で仕上がりの味の香ばしさは変化してくる。


時短のために玉ねぎを冷凍するとどうなるか?

若干の時短効果があったが、個人的には食味が著しく劣化するのであまり推奨しない。
玉ねぎを冷凍することで玉ねぎ細胞中の水分が膨張し細胞壁が破壊される。解凍した際に細胞内の液体が漏れ出るため水分を飛ばすことができれば火の通りは速くなるという理屈なのだが、繊維が壊れてフニャフニャした食感になり違和感があった。また、水分が多く温度が上がりきらないのか香ばしさはやや劣る仕上がりとなった。


玉ねぎを切ったときに涙が出る理由

玉ねぎを切ったときに涙が出る理由は、細胞中に含まれる酵素が反応して催涙ガスが発生するからだ。
切れ味の鈍い包丁をつかって玉ねぎを切ると細胞が潰れて押し切られる形になり、より多くの細胞が傷つけられ、より多くの酵素反応が発生し、より多くの催涙ガスが発生する。
実はこのとき、催涙成分に加えて風味や栄養を増強する成分も発生している。それがもしかしたら玉ねぎの香りを増強する可能性があるのではないか、という仮説。

お店の包丁はよく研がれており全て大変切れ味がよく、大量に玉ねぎを切ったときでもほとんど涙が出なかった。僕がキャンプ用に使っていた携帯用の包丁は切れ味が鈍く、みじん切りを少し作るのにも一苦労だったし、切っているだけでめちゃくちゃ泣けた。涙活におすすめ。

鈍い包丁で切った玉ねぎと鋭い包丁で切った玉ねぎは生の状態でニオイを嗅いでみると明らかに違う。そのニオイがした場合、イタリアンやフレンチでは嗅いだだけでNGをくらうという。

だが実は酵素反応に応じて香りも強くなり、炒めたときにカレーに向いた玉ねぎとなる可能性もあるのかもしれない。

冗長になるため上では割愛してしまったが、第3回目の実験での少量400g玉ねぎは鈍い包丁で切ったものだった(なので厳密には変数が一つ増える)。今回は実験のリソース的に、鋭い包丁で切った400g玉ねぎ炒めを作れなかったので比較は出来なかったが、単純に食してみた印象では特に変哲のない香ばしい玉ねぎ炒めだった。
ちゃんと比較してみないとわからないが、ぶんぶんチョッパーやフードプロセッサーで潰すように切った玉ねぎの方が炒めたときに香ばしい香りが強くなり好ましいのかもしれない。


電子レンジを使うと玉ねぎが臭くなる理由

昨今、電子レンジでできるカレーのレシピが流行しているが、生の玉ねぎをレンチンすると臭い、と自分は思う。レンチンした玉ねぎからは独特の香りがする。詳細はわからないが、硫黄化合物やフラン類の残存によるものらしい。炒めた際には飛んでいくはずの成分が電子レンジ加熱だと残ってしまうということのようだ。
加熱の原理的に仕方がないが電子レンジ調理だとメイラード反応があまり進まない。カレーにすると香ばしさが不足した仕上がりになるので、あとからテンパリングオイルを足すレシピなどもある。
ソリューションとしては生たまねぎの代わりにフライドオニオンを使うことだろうか。既製品を使うと油の臭いが気になってしまうし、自分で作ってストックしておくのも少し手間ではあるが。


火の強さ、加熱の温度帯によって起こる反応の違い

これは実験Vol.1のときに書いたやつのコピペである。
水があると鍋中が100℃以上に上がらなくなり、油が十分にあると200℃近くまで温度が上昇させることができる。そういう意味で油や水は食べ物であると同時に道具でもある。

温度帯によって起こる反応が違うので、鍋の中の主成分が水なのか油なのかを常に意識して火力を使い分けたい。「カレー作りは脱水がキモ」と言われているのもそれが主な理由なんだと思います。

カラメル化-Caramelization
糖類を100℃~200℃で加熱すると褐色になり、糖が加熱によって水分を失っていく過程でカラメル独特の茶色くて苦味のある、香ばしい物質が作られる反応。玉ねぎは糖分が多く(糖度が高いことはイコール甘いわけではないが)、切断や加熱の時に細胞が壊れ、内容物のブドウ糖、果糖、ショ糖が出てくる。加熱すると長い鎖のショ糖が分解され、水分量が減り、辛味成分が揮発することでより甘く感じられるようになる。この流出した糖が茶色く変化するのがカラメル化。

メイラード反応(アミノカルボニル反応)
おなじみメイラードさんの発見した反応。複雑なので未だに全容は解明されていない。タンパク質やアミノ酸と糖が結合し、褐色物質(メラノイジン)が生成されたり香ばしい香り物質が生成される。常温でも起こるが最も反応が活発になるのは155℃付近。高温で加熱することでこんがりきつね色になる。

コーヒーの焙煎、味噌や醤油の色素、黒にんにく、肉の表面などもすべてメイラード反応だが、反応の元になる等やアミノ酸の種類によって生成される成分が異なるためそれぞれ独特の香りになる。とりあえず「メイラード反応=うまい」とおぼえておけば間違いない。

焦げ(炭化)
炭化はメイラード反応より少し高い160℃以上で有機物が酸素を遮断された状況で加熱されて熱分解されると始まる。温度を上げすぎて黒くなるのはただの焦げであり、うまみではなく苦味が出てしまう。


玉ねぎの品種について

今回の一連の実験においては普通にスーパーで売っている国産の玉ねぎを使用し、特に品種の指定などはしなかった。厳密に言えば日本の玉ねぎの品種間の違いも気になるし、時期による違いも出てくるだろう。

更には、インドの玉ねぎも試して見る必要があるかもしれない。
日本の玉ねぎはインドではイエローオニオンと呼ばれるようなものであり、一般的にはあまり使われていない。インドの八百屋や路上でよく見かけたのは小さくてコロコロした鶏卵程度の大きさの赤玉ねぎだが、これもまた日本のスーパーで見かける生食用のアーリーレッドとは異なるものらしい。また、英語のレシピを参照しているとよく見かけるのは玉ねぎではなく材料に”Shallot”の指定がある。その場合、正直よくわかっていないので指定の分量より少し多めの玉ねぎを使って代用とすることが多い。ただ、食味も異なるだろうしよくわからない。
また、南インドではサンバルオニオンと呼ばれる小さいにんにくサイズの玉ねぎもあったりする。

どういう風に使い分けるのが一体正解なんだろうか。インド人に聞いたら全然気にしなくていいよって言われるような問題なんだろうなー。


長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただいてありがとうございました。玉ねぎ実験はこれでひとまず終わり、次回からはトマト実験をやっていきたいと思います。お楽しみに。


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▼カレーのZINEを作っています。



今後も月に一回ペースでワッカさんとカレーにまつわる疑問を検証する実験を続けていく予定ですので応援やサポートなどいただけると励みになります。また、カレーに関して気になる疑問などあればコメントいただけますと幸いです。

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実験中の時間、温度、重量の変化と気づき、コメントはこちらのスプレッドシートにまとめましたのでよろしければ御覧ください。

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