見出し画像

2021年中学受験用 時事問題対策テキスト 5社の比較


はじめに

 いよいよ入試直前。社会の受験で、時事問題対策に困っている方もいるのではないでしょうか。
 時事問題対策のテキストは各社から出ていますが、種類が多く、どれを選んで良いか困っている方もいるのではないでしょうか。そこで、学研、四谷大塚、栄光、サピックス、日能研の時事問題対策を買ってきて、内容を比べてみました。
 また、ちょうど冬休み中の親戚の中1女子(某私立女子校に通学中)が来ましたので、感想を書いてもらいました。
 時期的にギリギリではありますが、皆さんの助けになればと思います。
 なお、この文章は投げ銭100円を設定してありますが、全文を読むことができます。これらのテキストは私の自腹で購入しています。テキスト代程度、支援していただければ幸いです。m(__)m

(変更履歴 2020年1月8日 栄光のレビューを追加しました。中1の評価を追加しました。投げ銭して下さった方、ありがとうございました。)

学研「時事問題に強くなる本」

学研表紙

<全体の構成>
政治、経済、国際、社会・文化、理科・環境のセクションに分かれています。4ページのブロックで1つのテーマを扱い、最初2ページが解説、次2ページが練習問題になっています。練習問題の内容は、簡単な空欄補充問題が1ページ、実践的な問題が1ページです。この他、キーワード解説(8ページ)、地理の最新統計資料(4ページ)理科の予想問題、理社の統合問題が収録されています。星占いが載っているのがご愛敬です。

学研内容1a

<利点>
知識紹介の部分、全体の3分の2がカラーページです。写真やSDGsアイコン、説明がカラーで理解しやすくなっています。重要なところが赤で示されているのはわかりやすいですね。他社の本は、カラーは先頭のみなので、大きな特徴といえるでしょう。
知識の次のページに練習問題があるので、知識を学んだらすぐに練習問題を解くことができます。知識の定着を即座に行えるのは、大きな利点ですね。また問題のページ数は、4社中最も多くなっています。

学研内容2a

<欠点>
一つのテーマは必ず1ブロックにまとまっています。コロナも1ブロックですので、コロナについては他社に比べ明らかに分量が少ないです(巻頭で補足はありますが)。
テーマごとの解説が2ページしかないため、全体的に圧縮されており、ごちゃごちゃして見づらい感があります。

<こんな人向け>
世の中で起こっている問題を、幅広く知っている必要があるが、あまり高度なことは問われない学校を受験する人に向いています。問題解決を記述するのではなく、言葉だけ書くような学校です。また時事問題を知識として確実に定着したい、という人にも向いています。

<中1の意見>
・受験生占いは楽しい。
・カラーなのはやっぱりわかりやすい。カラーユニバーサルデザインに配慮されてないようにも思えるけど。
・いろんな情報がぎっちり詰まっているので見づらい。語句説明のための引き出し線のせいで見づらくなっている。見出しが白抜きになっているのも見づらい。文字の下に小さい字で解説があるところがあるが、追加で書き込みできないのでよくない。

四谷大塚「ニュース最前線2020」

四谷表紙

<全体の構成>
出そうな順に12のテーマが取りあげられています。コロナ、国内政治の動き、国内経済の動き…など。テーマのうちの一つは理科(宇宙の中の地球)です。
一つのテーマは4~6ページ(理科だけ7ページ)のブロックで成り立っており、説明2~3ページ(理科だけ5ページ)、一問一答で言葉を答える基本問題1ページ、応用問題1~2ページです。この他総合問題があります。
記述問題が4ページあるのが大きな特徴です(すべてのテーマに対応)。また学習事項確認カードが8ページ分ついており、切り離して単語帳のように持ち歩くことができます。
一方他社にはある時事用語の解説や、資料ページはありません(カードで一部対応)。

四谷内容1a

<利点>
文字が大きく、空間が大きいため、全体的に読みやすいです。またセクションごとに練習問題があるため、知識を学んだ直後に問題に取り組むことができます。短い時間で時事問題の知識を手に入れることができます。
最大の利点は、独立した記述問題のページがあることです。これは他3社にはない、大きな特徴です。
学習事項確認カードは、受験の時に持って行くのに向いています。サピが一問一答形式なのに対し、こちらは一枚のカードに関連事項がまとめてあります。

<欠点>
空間が大きいということは、文字数が少ないことを意味します。他社に比べて全体的に知識量も深みも劣ります。そもそも全体のページ数が少ないです。
明らかに重要性が高いレジ袋有料化があとの方で、順位付けに疑問があります。また国際関係は2ブロックしかなく、アメリカ大統領選はわずかしか触れられていません。

<こんな人に向いています>
社会があまり得意ではないが、時事問題が多く出る学校を受ける…という人は、四谷が向いています。基本的な時事問題を、急いで、確実に学びたい、という人に。記述の対策をしたい人向けに。またカードが気に入った人向けに。値段の割に内容が少ないですが、社会が苦手な人にはちょうどいいかもしれません。

<中1の意見>
・字間が大きくて見やすい。ふんわりしたレイアウトがいい。
・本文のフォントと太字のメリハリが小さく、どこが重要なのかわかりにくい。
・2色刷りのオレンジが淡くて、ちょっとほかの会社より見づらい。
・確かにほかの会社より内容は少ないけど、覚えなきゃいけないことはきちんと書いてあると思うよ
・時間がない子に向けて、「ここをこのように見るべき、こう勉強すべき」というアドバイスがあるのはいいね。
・記述の練習があるのはいい。記述は単独ではなかなか練習しづらいから。
・確認カードは一目でいろんな知識が確認できるのはいい。

栄光「重大ニュース2021」

栄光表紙

<全体の構成>
巻頭にカラーマンガが8ページあるのが大きな特徴です。ちょっと絵がざっくりしすぎな印象もありますが、2020年の出来事について概要をつかむことができます。
理科の割合が多いのも大きな特徴です。社会の解説が目次込み44ページに対し、理科は20ページです。理科は最近の出題傾向や、実際の2020年受験の問題も示されており、どのように対応すればよいかが非常にわかりやすいです。前年の受験問題を提示するのは、社会でもやってほしいところです。
社会は、コロナ、大震災からの復興、菅新内閣など17セクションに分かれています。理科は風水害、長雨と酷暑、サバクトビバッタ、はやぶさ2の帰還の4セクションです。
日本と世界の地図各2ページ、時事用語の解説が8ページあります。社会・理科の一問一答式の問題と、予想模擬問題もあり、演習のために必要な要素は揃っているといえるでしょう。

栄光1マンガ

<利点>
理科の割合が、他社よりずっと高いです。理科の時事問題対策を重視したい場合は、栄光が第一選択です。過去問が挙がっているのは本当にわかりやすいです。
巻頭にマンガがあってとっつきやすいです。時事問題をまず大まかにつかみたい、という場合は、このマンガが役立つでしょう。
知識の量については、社会のページが他社より少ないため少なめですが、十分な量があります。予想問題も少なめではありますが、十分対応できます。

栄光理科a

<欠点>
フォントが小さく密度が高いです。また2色刷りの2色目が赤なので、人によってはきつく見えるかもしれません。
理科の割合が多いのは、欠点といえるかもしれません。他社に比べ、社会の分量は少なくなっています。ですから社会の時事問題対策だけを行いたい場合は、栄光を選ぶべきではないでしょう。

<政治的な記述について>
社会の部分では、なるべく公平な立場から記述しようとしているのですが、最終的に政権寄り、保守的な立場からの記述になっているところが目立ちます(下図をご覧ください)。また外国との関係については、日本の立場を一方的に示している記述があります。
他社の本では、政治的立場を示しているものはなく、こうした立場が見えるようになっているのは、栄光だけです。
これを良しとするか悪しとするかは、読者の皆さんの判断にお任せしたいと思います。

栄光3a

<こんな人に向いています>
理科の時事問題対策を強化したい人に。今年一年の時事問題の概要を手早くつかみたい人に。裏表紙に「入試直前、詰め込みすぎず短期間に学習できる必要かつ十分な内容」とある通り、受験直前に短期間で概要をつかみたい人に向いていると思います。

<中1の意見>
・字が小さくて読みづらい!
・2色刷りで2色目は赤。サピ、日能研、四谷のオレンジのほうが見やすい。
・表紙の似顔絵が激烈に似てない。
・巻頭のマンガはわかりやすいけど絵柄が古い。私には合わない。
・本文は行間が狭く、字も小さいので読みにくい。太字と本文とのメリハリがないので読みづらい。
・コラムで知識を紹介するのはイメージをつかみやすい。
・理科で出題例が出ているのはとてもいい。実際の試験問題が出てると実戦でも対応しやすい。
・高偏差値の学校では多様性が重視されるから、政権寄りの姿勢では対応しづらいんじゃないかなあ。

サピックス「サピックス重大ニュース」

サピ表紙

<全体の構成>
全体的に「読み物」になっているのが最大の特徴です。第1章は「コロナと日本社会」をテーマに、コロナ禍において浮かび上がった日本の様々な問題点(菅首相就任、経済へのマイナス、インフォデミック、テレワークなど)が描かれています。第2章は「国際社会の動き」で、米中関係、アメリカ大統領選、イギリスのEU離脱などが挙げられています。第3章は理科の問題で、風水害、天体が取りあげられています。
この他ノーベル賞受賞者、伝統行事と旧暦、各地の祭り、祝日などの資料10ページと、2020年のニュースカレンダー、時事用語の解説5ページがあります。付録として、切り離して単語帳的に使える、一問一答カードが8ページ分付属します。

サピ内容1a

<利点>
全体的に共通しているのは、その事柄が起こる社会的背景、歴史的背景がきちんと説明されていることです。例えばコロナに関連するデマやヘイトスピーチの項目では、とらえどころのない不安に対して、目に見える他者に原因を求めるものだ、とあります。また「なぜそうなるのか」「なぜそのような対策が行なわれるのか」という理由についても、きちんと説明されています。これらを通じて、「記述する力」「問題をもとに考える力、解決方法を探る力」がついていきます。
第1章は「コロナ禍から見た日本」というテーマで統一されており、コロナとの関連がわかりやすくなっています。第2章も項目ごとに統一感があり、世界の問題を分かりやすく理解することができます。
なにより優れているのは、「人権を守る」という考えが、基盤にあることです。各章の最初には対話が載っており、コロナにしても国際関係にしても、打撃を受けるのは弱者やマイノリティであることが触れられます。そして格差を広げてはならない、弱者をさらに不利な立場に追いやってはならないという記述が繰り返されます。「人権を守る」ことを考えさせることを軸に、記述する力をつけようとしていることがうかがえます。 
問題の内容は記述が多く、内容も高度です。また一問一答カードは、受験本番に持って行くのに適しています。

サピ内容2a

<欠点>
問題がテーマごとに分かれておらず、総合問題になっています。テーマごとに練習したい、というニーズには向いていません。
問題の内容は高度ですが、問題のページ数は他社にかなり劣り、問題の絶対量は負けています。

<こんな人に向いています>
「理解する」「考えて答える」「問題解決力を育てる」という点では最も優れています。さすがは最上位校にフォーカスしたサピのテキストといえるでしょう。記述の多い最上位校を目指している人に特に向いています。
一方事柄ごとに練習したい、問題数をこなしたいというニーズには向いていません。一問一答系が多い学校は、日能研や学研の方が向いているでしょう。

<中1の意見>
・章の頭にある「話し合ってみよう」がいい。差別について考えたり、国際関係について考えたり。今の世の中は極端な意見に走りがちだけど、中立的な立場で考えることができる。
・判型がA4で大きいため、見やすくていい(これは四谷も同じ)
・さすがサピだけあって偏差値が高い子向け。読み応えがある。どの塾もサピのテキスト使えばいいんじゃないの?

日能研「重大ニュース2020」

日能研表紙

<全体の構成>
全部で23の項目から成り立っています。1から6(コロナウイルス関係2項目、水害、レジ袋有料化、少子化と人口減少、アメリカ大統領選)は4ページ構成です。最初の2ページで時事問題を説明し、次の2ページで今まで学んだ地理・歴史・政治問題との関係を説明しています。7から21(首相交代、オリンピック延期、働き方改革など)は各2ページ、22、23は1ページで説明されています。
資料が非常に充実しており、歴代総理大臣、現在の政党、選挙制度、裁判制度、社会保障制度などが説明されています。また世界の紛争地図や、主な国のデータが載っているのは日能研のみです(資料は合わせて22ページ)。
時事用語の解説は目次・索引込みで36ページもあり、中学受験で出ると思われる範囲以上の言葉が説明されています。中受で出ると思われるアルファベット略称の一覧が載っているところもポイントが高いところです。
演習問題は、各項目ごとに1ページずつの確認問題(空欄補充が中心)があり、1から6については4ページずつの応用問題があります。

日能研内容1a

<利点>
各項目の記述は「事実のみを述べる」ことが中心で、サピのように背景や意義、影響はそれほど書かれてはいません。ですが事実については過不足なく述べられています。
なんといっても優れているのは、資料と用語解説です。他社に比べて質・量ともに圧倒的です。また世界のデータ(人口、面積、一人当たりGNI)が載っているのは日能研のみです。
問題量が多いのも利点です。それほど重要性が高くないと思われるテーマ(八ッ場ダム)にも問題が設けられているところは、お得感があります。

日能研内容3a

<欠点>
理科がないことです。他社は理科と社会の領域横断的な問題が設けられていますが、日能研ではほとんど意識されていません。
項目1~6の応用問題は、時事問題そのものについて答える問題よりも、それに関連する既存の知識を答える問題が多くなっています。ただ、これは多くの受験でも同様なので、それほど大きな問題ではないといえるかもしれません。
項目7以降は、比較的簡単な問題しかなく、1~6と比べると物足りなさを感じます。

<こんな人に向いています>
知識量の幅広さは一番で、時事用語解説の多さは圧倒的です。とにかく多くの問題を書かせる学校を受ける人に向いています。また「受験生は知らないであろう事柄を示し、そこから考える」問題を多く出す学校にも向いています。最上位校の受験生は、サピと併用するのがよいでしょう。

<中1の意見>
・ウポポイが取り上げられてるのはいいね。
・本文のフォントが細く、重要な部分のフォントが太くなっていて、差が大きい。カラーの本では重要部分を赤にしてるけど、それよりこちらの方が見やすくてわかりやすい。フォントは重要。
・巻末の用語集が多く、本文中に用語集へのリンクがたくさんあるので、幅広い知識を手に入れられる、時間があるとき巻末の用語集を読んでおくと力がつくだろうね。
・サピは地図が多く入っている一方、日能研はグラフが多く入っているのが印象的。具体的なデータや数字がわかりやすいのはいいところ。

5社の比較

5誌の比較カラー

5社の本をデータと読み込んだ印象で比べてみました。知識量から奥深さは5段階で評価しています。
知識量は、1位日能研、2位サピ、3位学研、4位栄光(学研と栄光はだいたい同じで栄光がちょっと少ない)、5位四谷です。
このように見てみると、サピがもっとも評価が高いです。ただサピは問題数が少ないという問題があります。
日能研はサピより評価が低めですが、知識の量と幅広さはサピを上回っています。
このように比べてみると、次のような運用が良いかと思います。
・最上位生はサピと日能研の併用がベスト
・準上位は日能研
・記述が多い学校はサピ
初見で戸惑うような問題を多く出す学校は日能研
社会があまり得意ではない人は四谷
・確実に知識を定着させたい人は学研
受験直前に急いで学びたい人、時間がない人は栄光か四谷
理科を重点的に学びたい人は栄光
…となるかと思います。
いかがだったでしょうか。塾ではもう時事問題対策は終わっていると思いますが、塾の対策が不十分だと考えている方、また塾に通っていない方には、ヒントになったのではないでしょうか。

有益な情報と感じられたようなら、ぜひ投げ銭をお願いします。


ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?