映画「Kinetics」について


「コロナウイルスによる不確実な時代に楽しみや洞察に役立つように、この映画をあと4週間無料で観られるようにしました。」
との案内があり、昨年の京都でのワールドパーキンソンコングレスに出品されて上演もされていた、パーキンソン病のドラマ教師ローズと、寄宿舎学校の生徒ルーカスとの交流を描いたパーキンソン病関連の映画が現在以下のサイトで観られます。
 英語の映画で字幕もありませんので多少解説します。(わたくしの怪しい英語理解についてはご容赦を)
 ドラマの教師のローズはパーキンソン病であることに気がつきます。左手の動きがどうも悪い、きっとエントラップメントに違いないわとおもってGPにいきます。これは紹介しないといけないといわれて、神経内科医の診察をうけて、ショックかもしれないがパーキンソン病であると診断されます。まだ薬をのむほどではないけど、サポートグループもあるしパーキンソン専門のナースがいて彼女はとっても優秀だからそちらに行って下さい。とイギリスらしい診察風景が描かれます。診察はだいたい六ヶ月おきぐらいのようですね。
 ローズは壁や塀の上を走り抜けることに快感をみいだしひたすらそれを練習する、ルーカスという少年と出会います。もちろん学校でローズとルーカスが衝突しそうになって出会います。パーコウというスポーツだそうですが、ネットでしらべたらparkour、日本語ではパルクールと訳されていることが解りました。学校では授業を聞かないで寝ているし、そのくせ勉強はできてしまう彼はADHDの診断を下されます。
 ふたりの共通点はdesire to move 動くことに対しての渇望、でそれが映画の底流となります。
 ローズは自分のパーキンソン病であることについて自撮りのインタビュー(自分語り)を記録していきます。パーキンソン病といわれたこと、薬を飲むこと、副作用をしらべて、アゴニストの副作用は、私が角のドラッグストアー(イギリス定義)にいって店員を誘ってしまうことになるの、なんて素敵、なんていいながらも、うけいれられずいらいらしている様子が記録されます。
 ルーカスはADHDと診断され、リタリン(のイギリス版、多分)を処方されますが、これは私をおとなしくしてゾンビにするものだ、と叫んでビルの屋上(かれの追求するスポーツ、parkourのフィールド)で捨ててしまいます。
 ルーカスとローズは馬が合って、ルーカスはときどきローズの教師部屋にいきます。ローズは1人でランチを自分の部屋でとっているのは、学校に自分がパーキンソン病であることを知られたくないから、などすこしずつルーカスに心を開いていきます。ルーカスはローズの飲んでいる薬がマドパーであることに気がつきます。彼の祖母がパーキンソン病だったので知っていたのです。そうしてローズはルーカスにパーキンソン病であることを知られてしまいます。ルーカスは動きを極める練習をしているわけですが、練習すればできるとローズにいいます。ローズは私はパーキンソン病なのでできっこない、私の気持ちなどわからないといいますが、段々にお互いを理解していきます。
 自撮りビデオのなかで、パーキンソン病は治らない、薬は症状をやわらげるだけと嘆き、原因もわからない、50年前と同じ薬を飲む(あらためてそう考えると私もショックでした)しかない。Life threating ではないけどlife changingだと恨みます。
 ローズはかつては女優でボンドガールだったそうです。ルーカスはno way といって感心しています。そのルーカスもスイスの母親が脳腫瘍になって試験がおわったら面倒をみにいくと、またルーカスにも人生の試練が訪れます。
 パーキンソン病の定期受診(どうも医師ではなくプラクティショナーナースの診察のようですが)の際に、隣にもう少し進んだパーキンソン病患者のおじさま(ルーカスに後に説明するときにはboyと呼んでいます)に、ローズは怒っていると指摘されます。パーキンソン病はf*ckerだと彼は笑い飛ばし、自分も昔は怒っていたがと、accept adapt adjustのマントラを教えてくれました。受け入れて、慣れて、修正していく。このメッセージを自分でルーカスに伝えられたところで映画は終わります。
 全編をつうじて決して明るくない映画ですが、ローズのパーキンソン病であることを受容して前向きに生きていくというメッセージを伝えるなかなか素敵な一編です。全部英語の映画を一時間みるのは難しいかもしれませんが、是非皆さんも挑戦してみてください。
 日本でも、きっとパーキンソン病をうけいれて前向きに生きていくというメッセージをもつ映画ができてくると思います。


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