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【Phidias Trio vol.10 “Live on... Ⅱ”】作品紹介: 神本真理 «記憶のコラージュ» (2002/2024 revised)

2024年7月6日にPhidias Trioの定期公演「Live on…Ⅱ」が行われます。
今回は、田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子各氏の作品を演奏します。

公演に向けて、神本真理さんの《記憶のコラージュ》(2002/2024 revised)を紹介します。作曲家による作品解説を引用します。

本作品は2002年に作曲し、東京にて初演された後、2003年にパリで再演。また、2012年に東京で再々演されています。
この度、Phidias Trioの皆さまによって初演から22年ぶりに上演されますことに、嬉しさと気恥ずかしさが入り混じる思いです。
2024年版は、初演版から大きく乖離しない程度に、3つの楽器それぞれに細かい改訂を施しての上演となります。
初演時のプログラムノートは下記の通りです。
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ひとつの事象に対する記憶とは、「過去」という長い時間の流れにおける、ある一点(瞬間)を拾い出し、その部分的な時間を呼び起こすツールである。それは、「現在」という時間の経過と共に、限りなく遠い存在となっていく。
つまり、「過去の記憶」とは、とどまることなく進み続ける「現在」との時間的距離を介して、増幅された時間感覚の中で捉えられるようになっていく、ということではないだろうか。 
そうした記憶が甦る時、中心となる事象にまつわる他の幾つかの事象も、無意識のうちに思い起こされ、もとの記憶がより豊かに膨らんでいく。このような〈無意識の思考体験〉を音楽に反映させるべく、作品としてまとめたものである。
Es音を基軸として広がっていく〈響きの層〉、および 断片的な種々の素材による〈ディヴェルティメント的な語り口〉、双方の座標における変容を追求したものである。
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(神本真理)

《記憶のコラージュ》は、神本さんがパリ留学前に書かれた作品で、〈無意識の思考体験〉から着想を得ています。初演後、再演を経て、今回の2024年版として改訂されました。
 3つの楽器が一つの音高を中心に重なり合う箇所や、ポリリズミックに進行するセクションなど、トリオのアンサンブル力が試される作品でもあります。創作初期の作品ならではの、瑞々しい音楽性とエネルギッシュな魅力を感じながら、演奏に取り組んでいます。
近年は、新たな音楽の境地を開いておられる、神本さんの他の作品動画もぜひご覧ください。(Phidias Trio)

神本真理  Mari Kamimoto
1975年神戸生まれ。東京藝術大学•大学院、パリ国立高等音楽院にて学ぶ(作曲科、楽曲分析科、管弦楽法科を修了)。文化庁派遣芸術家在外研修員(2005-2006年)。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、いずみシンフォニエッタ大阪、Ensemble InterContemporain等の団体、また、優れたソリストたちにより国内外で作品が演奏されている。自身のプロデュース公演《Les temps croisés》を2009年と2013年に開催。
近年は〈残響を聴くこと〉を創作のテーマとして、演劇作品の制作も考案している。
Babelscoresより、楽譜が出版されている。現在、東京藝術大学、国立音楽大学、各非常勤講師。https://www.marikamimoto.com/

公演詳細

phidias-vol10.peatix.com

【Phidias Trio vol.10 “Live on… II”】

2024年7月6日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)
一般3,000円 / 学生2,000円(当日券500円増)

プログラム
田中吉史 : bogenspiel Ⅰ for violin solo(2003)
神本真理 : 記憶のコラージュ (2002/2024 revised)
山本哲也: Psychedelic Study for clarinet solo (2011)
松尾祐孝 : The Stratosphere (1985)
木下正道 : 炎は炎の中に消える、そして時間は時間の中に VI (2021)
渡辺裕紀子 : Memory and Stain (2019)


フィディアス・トリオ10回目の定期公演となる今回は、〈vol.7 “Live on…”〉に続き、現代を生きる日本人の作曲家たちを特集する。
田中吉史、神本真理、山本哲也、松尾祐孝、木下正道、渡辺裕紀子 — 彼ら6人の作品は、もはや一括りに形容できないほどに、多彩な個性や価値観を感じさせる。この多様性をもたらしているのは、何よりも、徹底した独自の思索と、妥協なき創作姿勢である。
今を生きる音、これからも生き続ける音。それをひたすらに追い求める作曲家たちの軌跡を追う。


出演
Phidias Trio (フィディアス・トリオ)
ヴァイオリン・ヴィオラ 松岡麻衣子
クラリネット 岩瀬龍太
ピアノ 川村恵里佳

2017年に結成。これまでの主催公演では、現代の優れたクラリネット三重奏の作品を取り上げるとともに、 オーストリア、アルゼンチン、ブラジル、チリ、トルコ、韓国、日本の若手作曲家の新作を初演し、 好評を博す。また、ハニャン現代音楽祭(韓国・ソウル)や、日本作曲家協議会主催「日本の作曲 家2021」等、数々のプロジェクトに招聘されている。2021年12月に出演した日本現代音楽協会 主催「ペガサス・コンサート vol.3」の公演の模様は、NHK-FM「現代の音楽」にて、2週に渡って放送された。読売新聞に掲載の「評論家4氏が選ぶ今年の公演ベスト3」にて、2023年の主催公演「Phidias Trio vol.9 “Re-interpret”」が選出される。

https://phidias-trio.com


お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio

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