見出し画像

【Phidias Trio vol.7】曲目紹介: 北爪道夫《トリプレッツ》

2022年11月12日に、Phidias Trio 定期公演「Phidias Trio vol.7 "Live on…"」を開催します。今井智景、牛島安希子、北爪道夫、松平頼暁、森紀明、森田泰之進、渡辺俊哉ら、現代を生きる7人の日本人の作曲家の楽曲を演奏します!

このnoteでは引き続き、公演に向けて、演奏作品について紹介をしていきます。今回は北爪道夫さんのトリオ作品、《トリプレッツ》です。

作曲者によるプログラムノートを掲載します。

複数の人が、同じ空気のなかで同じ話題について同じ言葉で発言したとしよう。この時、全神経を集中して相手を模倣したとしても、厳密な意味で「同一」にはなり得ない。お互いに近づこうとする意志をもつことによって、逆に、それぞれの個性が際立って浮き彫りになってゆく…極めて単純で当たり前の話だが…この作品の出発点はここにある。この作品における登場人物は3人であるが、タイトルはトリオではなく「三つ子」を表す《トリプレッツ》とした。「3」はまた、様々な社会性への第一歩であり、無限の宇宙への拡がりの可能性を示す最初の数字でもある。発音原理の異なる3つの楽器によるアンサンブルである。
私は、この作品と同様の発想により、《ペア・ワーク》(PAIR WORK for flute and piano / 1996 / 全音楽譜出版社刊)と、《ツインズ》(TWINS for violin and marimba / 1997)を書いている。

北爪道夫 

3人が奏する、リズミカルで音階的なパッセージがこの作品を構成する主要な要素となっています。
それに加えて、リハーサルを進めるうちに感じたのは、曲中にたびたび出てくるフェルマータの存在も、この曲の大切なポイントになっているという点です。楽譜にはフェルマータの長さについて秒数等の細かい指示がありますが、北爪さんご本人にリハーサルを聴いていただいた際には、書かれた長さを厳格に守るだけではなく、その中にあるアイデアを演奏者が解釈し、音楽的な間や空間を自発的に作っていくということについてアドバイスをいただきました。
どの作品の演奏においても共通することですが、譜面から音楽を読み取り、解釈し、表現していくというプロセスの中にある楽しさと、多彩な可能性を再認識しました。

北爪道夫 プロフィール
東京藝術大学大学院修了後、77~85年「アンサンブル・ヴァン・ドリアン」で企画・作曲・指揮を担当し内外の現代作品紹介に努める。79年文化庁派遣芸術家として渡仏以降、多様な演奏家・団体からの委嘱で新作発表を続け国際的評価を得る。これまで2度の尾高賞、ユネスコ国際作曲家審議会グランプリ、文化庁芸術祭大賞、日本吹奏楽アカデミー賞、日本クラリネット協会賞などを受賞。また、サントリー芸術財団主催「作曲家の個展・北爪道夫」等の成果で中島健蔵音楽賞を受賞。森羅万象からヒントを得て磨かれた創作は、オーケストラや邦楽器を含む様々な楽器、電子音や声と多岐にわたり、NHK-FM「ベスト・オブ・クラシック」等のテーマ音楽や劇場・放送など様々な音楽シーンと係わる。一方、大学・行政・コンクール等を通じて教育啓蒙活動に携わる。愛知県立芸術大学名誉教授。CD:「北爪道夫オーケストラ作品集」(FOCD2514)、「北爪道夫・作曲家の個展」(FOCD3505)他。

公演詳細
Phidias Trio vol.7 "Live on…"

2022年11月12日(土)
15:00開演(14:30開場)
KMアートホール (渋谷区幡ヶ谷1-23-20 京王新線幡ヶ谷駅より徒歩6分)

一般3,000円 / 学生2,000円(当日券は各500円増し)

プログラム
森田泰之進:Soaring in Circles (ReincarnatiOn Ring V-a) (2021) 舞台初演
牛島安希子:浮遊都市 I (2022・委嘱新作) 初演
松平頼暁:秋山邦晴のためのメモリアル (1997)
北爪道夫:トリプレッツ (1999)
渡辺俊哉:あわいの色彩 I (2017)
今井智景:Weaving (2018)
森紀明:Warum ist das Fragen sinnlos? (2018)
※プログラムが当初の予定より変更になりました。

演奏家の役割のひとつが、楽譜を手掛かりにさまざまな解釈を導き出すことだとすれば、作曲家との直接的なディスカッションは、極めて有意義なもの。演奏は常にアップデートされ、作品は生き続けていく。今回フィディアス・トリオがご紹介するのは、いずれも作曲家との濃密な共同作業を経た、7つの作品。今井智景、牛島安希子、北爪道夫、松平頼暁、森紀明、森田泰之進、渡辺俊哉ら、個性派揃いの作曲家達のユニークな楽曲を演奏する。いま聴きたい、そして後世に残していきたい音楽が体感できる、刺激的な二時間。

チケット購入
https://phidias-vol7.peatix.com/

お問合せ
phidias.trio@gmail.com

主催:Phidias Trio
文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?