見出し画像

ホラー小説「ドールハウス」第7話 忘れたい事

前回はこちら

注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


13.春香

薄暗い書斎にある椅子でうとうとしていた。
眠くてあまり頭が働かない。起きているはずだが、まるで夢の中に居るようなふわふわした不思議な感覚だ。
私はぼんやり窓の外を見ていた。周りは森で家は見当たらない。窓から助けを求めようとしても誰かが気付いてくれる可能性は低そう。
美夏さんはスケッチブックを見ていた。愛美がこの部屋に置いていたのだろうか。
そういえば、愛美はよく休み時間に絵を描いていた。
絵がすごく上手くて、美術部から勧誘が来たこともあった。
愛美は可愛らしい女の子をよく描く傾向があった。愛美が描く女の子はみんな、人形のような可愛い服を着ていた。
スケッチブックを見ていた美夏さんは恐ろしそうにいきなりこんな事を口にした。「やっぱり、あの子はあたしたちを殺してマリーみたいに人形にするつもりらしい。」
「あたしたちの絵をスケッチブックに描いていた。」
スケッチブックには美夏さんに似ている人が描かれていた。

本当に愛美はわたしと美夏さんを殺すつもりなのか?
「優等生の愛美はこんな事しないはず」と信じたいが、あの日記を見ていたら、そう思えなくなってきた。
死体に話しかけていた愛美は本当に愛美なのか?
何が本当で、何が嘘か分からなかった。

14.美夏

スケッチブックに挟まれた紙が落ちた。行方不明者捜索のビラだった。
ビラには小柳百合の写真や特徴が載っている。ほかの行方不明者の写真も載っていた。
行方不明者の中にどっかで見たことがある長い金髪の人が居た。目覚めた部屋の死体に似ていた。
そういえば、少し前に駅前でこのビラを配っていた人が居たのを思い出した。あの時は無視していたが、皮肉なことに今、あたしは巻き込まれてしまっていた。

もう、この部屋には何もない。ほかの部屋を探してみることにした。
書斎を出ると、ある便利な物の存在に気づいた。
それは、受話器だ。アンティークなデザインでこの屋敷の雰囲気に合っている。
さっそく、使おうとしたが使えなかった。おそらく、壊れてただのインテリアになっていたのだろう。
春香は書斎の隣にふすまがあるのを見つけて、手をかけようとしていた。
「あたしが先にこの部屋を見てみるよ。」あたしは春香より先にこの部屋に入ろうとした。
あたしはふすまをそっと開けた。春香より先に入る決断は正しかったようだ。
部屋は和室で目にピンク色のガラス玉をはめられた着物を着た女性の死体が畳に座っていた。
あたしはすぐにふすまを閉めた。
部屋の外に居た春香はこの部屋が気になっている様子だった。
あたしは「見た限り、この部屋は何も無かったよ。」と春香に言った。
この部屋の中を春香に見せるのはやめておこう。
できるだけ、春香が死体を見てしまうのを避けたい。
精神衛生上、その方が良さそうだ。
あたしは春香が長い黒髪の佐々木愛美と仲良く映ってる写真を見た。春香の話を聞く限り、春香は佐々木愛美と仲が良かった。
しかし、春香と仲良かった佐々木愛美は狂って、死体と会話していた。
それを見た春香はすごいショックを受けていたようだった。
あたしが春香に「守るから」と言ったんだ。心も守らないといけない。

春香はまったく知らない人だが、この場所で唯一、信用できる人。
あたしは正義感から春香を守ると約束した。責任をもって、約束を守らないといけない。

よかったら、サポートお願いします。 いただいたサポートは創作に使う資料や機材を買う費用として使わせていただきます。