見出し画像

ホラー小説「ドールハウス」第5話 ずっと、一緒だよ。

前回はこちら

注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


9.春香

アルバムがあった場所の下に日記帳があるのに気づいた。
怖いけど好奇心から愛美の裏の顔が知りたくなった。
私は気になって日記帳を開いた。

2023年4月13日
今日は部活で春香さんをモデルに写真を撮影した。
春香さんはこの学校で一番可愛い子だと思う。
少し恥ずかしながら、被写体になってくれた彼女の表情は可愛かった。
私はそんな春香さんが大好き。ずっと、一緒だよ。

私が知っている愛美が書いている文章だ。
この日は写真部で愛美に写真のモデルを頼まれていた。
愛美はよく私に写真のモデルを頼むことが多かった。
写真を撮られるのは恥ずかしかったが、愛美は「春香ちゃんは可愛いから憧れちゃうな。」とか言っていたな。

2023年4月18日
学校帰りの途中できれいな女の人を見かけた。
その人はお人形さんみたいに美しく、子供の頃持っていたマリーという人形に似ていた。
その姿はマリーが命を宿したように見えた。
あの頃の楽しかった記憶を思い出してしまう。
きっと、マリーが人間に生まれ変わって私の前に現れてくれたんだ。
その人の美しさに見とれて、ついその人が住んでいるアパートまで後を追ってしまった。
今日はマリーと再会できた気分で嬉しかった。可愛かったなぁ。

マリーという名前が出てきた。
確か、小柳百合が行方不明になったというニュースが流れ始めたのは5月頃だった。
マリーが小柳百合の事だとしたら、この日記は小柳百合が行方不明になる約一か月前に書かれたはず。
愛美がマリーと呼ばれる女性をアパートまで追跡したことが書かれている。
さすがに、これは嘘日記だよね?
優等生の愛美が人を追いかけまわすなんてしないはず。

2023年4月22日
今日は休みだったので、一日中マリーに似ている人の後を追ってた。
ここ数日追ってるが、いつ見ても人形みたいに美しい。
写真もいっぱい撮っちゃった。
家に帰ってから、撮影した写真を眺めていた。
笑顔の彼女を見ていると、マリーとおままごとをしたり、絵本を読んでいた頃を思い出して懐かしい気持ちになった。
あの頃が一番幸せだったな。あの頃に戻りたい。

2022年4月25日
今日も学校が終わったら、マリーちゃんに似ている人を追って撮影していた。
今日も可愛いな。写真もいっぱい撮ったし、行動パターンも把握してしまった。
彼女はここ最近引っ越してきた大学生で、アパートで一人暮らしをしている。
最近は彼女に夢中で、彼女を見るのが楽しみで仕方がない。
彼女を見つめると、楽しかった頃を思い出せるからだ。

確か、この日は写真部のミーティングがあった日だった。しかし、愛美は部活を休んでいた。
この頃から愛美は「用事がある」という理由で部活を休むことが多かった。
別にゆるい部活だから、怒られることも無かったので、気にしたことはなかった。
しかし、愛美が部活を休んでいた本当の理由がストーキングだったなんて信じたくない。

2022年5月13日
今日は電気屋さんでプリンターのインクを買いに行くことにした。
そこの電気屋さんは昨日、マリーちゃんがイヤホンを買っていた。
彼女がその時間に通るかもしれない道を歩いていると、予想通り会えた。
彼女の声が聞きたくて道が分からないふりをして電気屋さんへの道のりを聞いてみた。
ずっと追っていた彼女に話しかけるのは今日が初めて。
彼女に道案内してもらったが、彼女の声は優しくてきれいな声だった。
本当に人形のマリーが自分の声で喋ってるみたいだ。
近づいてみると、高身長で遠くから見た時や写真で見た時よりも何倍も可愛かった。
あの人は姿も声も子供の頃大好きだったお人形さんのマリーちゃんだった。
対応も優しく、笑顔で案内してくれた。おかげで無事にインクと延長コードが買えた。

愛美がこんなことをしていたなんて信じたくない。
きっと、私は悪い夢を見ているんだ。

よかったら、サポートお願いします。 いただいたサポートは創作に使う資料や機材を買う費用として使わせていただきます。