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GoogleスプレッドシートとLLMを用いた侵害予防調査のスクリーニング

ClaudeはClaude for Sheetsというアドオンを提供しており、GoogleスプレッドシートでClaudeのLLMを関数として使用することができます。これを利用することで、実施行為が競合企業の特許のクレームに対して文言上含まれるかどうかのスクリーニング作業をさせることが可能になります。

1. はじめに

侵害予防調査は、事業への影響が大きく極力漏れを排した再現率を重視した調査を行う必要があるため、母集団の件数が膨大になりやすい傾向があります。そのため、何段階もスクリーニングを行うことで、しっかり確認すべき特許を絞り込んでいきますが、このスクリーニング自体の負担も大きいという問題があります。AI分類ソート機能を有する商用の特許DBを使うことで、主にノイズを落とす1次スクリーニングはかなり負担が軽減されてきました。ただ、それでもなかなか母集団を2桁以内に絞り込むのは難しいので、2次スクリーニングに生成AIのLLMが活用できないか検討していたところ、こちらのウェビナーでGoogleスプレッドシートでLLMを関数として扱えることを知り、応用すればそれっぽいものができるのではと考えました。

2. 事前準備

まずはGoogleスプレッドシートにClaudeのアドオンをインストールし、ClaudeもAPIが使用できるように準備する必要があります。具体的な手順は以下の記事をご参照ください。

3. 手順

下記のように、スプレッドシートの各セルに、プロンプト、スクリーニングしたい実施行為とメインクレーム等を記入します。実施行為がメインクレームの構成をどの程度含むのかパーセンテージで示す指示をプロンプトに記入しておくと、後でソートする際に使えて便利です。実施行為を比較したい特許やメインクレームが複数ある場合は、下の行に連続的に追加しておきます。ちなみに実施行為は、今回入力した10件のメインクレームをランダムに組み合わせたイ号をGemini 1.5 Proに考えてもらいました。

スプレッドシートへの記入例

次に、アドオンとAPIの設定によって使用可能となったclaude関数に、下記のようにプロンプトと実施行為、クレームを合わせて文章として入力されるように指定します。プロンプトと実施行為はオートフィル時に同じセルが参照されるように、$を付けておきます。LLMはClaude3Opus並のベンチマーク性能で、高速かつClaude3Sonnetとトークンコストが同じClaude3.5Sonnetを使いました。

claude関数の記入例

4. 実行例

上記のようにclaude関数を入力すると、推論が実行され、その結果が出力されます。出力結果に問題なければオートフィルによって、他のメインクレームについてもまとめて実行します。なお、Claudeは課金に応じたレート制限があるため、私の場合はアドオンのサイドバーをからRecalculateを実行する必要がありました。
下記が実行例ですが、実施行為とメインクレームが比較され、パーセンテージやその理由も出力されています。クリアランス調査のスクリーニングは最終的に人間が精査して判断する必要があるものの、大体のパーセンテージが分かると、パーセンテージによってソートすることで、ノイズを先に落としたり、怪しい特許から先に確認したりすることが可能となります。

実行例

5. まとめ

簡易的ではありますが、GoogleスプレッドシートとClaude for Sheetsを用いることで、LLMによるクリアランス調査のスクリーニング支援ができそうな感触が得られました。
一方で、プロンプトのクオリティやAPIのレート制限を考えると、企業知財の場合は素直にサマリアPatentfieldAIRの導入を検討したほうが良いかもしれません。
ClaudeはAPI利用した場合はモデルの学習には利用されませんが、実施行為はなるべく社外に出したくない情報なので、社内の関係各所から許可が得られないといった懸念もあると思います。
ただ、プログラミング知識のない自分でも簡単に実現することができたので、生成AI技術の発展は知財実務者にとってもキャッチアップすべき事項かと思いました。

参考資料




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