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幼少期のわだかまり

あれは、中学校2年生のころだったと思う。反抗期を迎えた3歳年下の妹は、母親と毎日のようにけんかを繰り広げていた。

朝起きたときからけんかは始まり、学校から帰ってきたらまたけんか。毎日毎日繰り返されるくだらない怒鳴り合いに、私はうんざりしていた。

その日は、トーストにチーズを乗せるかどうかで、朝から大げんかが繰り広げられていた。

あまりにくだらない内容すぎて耐えられなくなった私は、逃げるように家を出て、いつもより早めに学校に行った。

学校を終えて家に帰ると、少し不機嫌な母が「行くよ」と言って私にかばんを手渡した。今日はピアノのレッスンの日だ。

車に乗り込むや否や、母親が私に一言こう言った。

「あなたもさ、妹のことうざいと思ったらうざいって言っていいんだからね」

15年以上経った今でも覚えている、衝撃的な言葉だった。

子どものころの私にとって、親というものは絶対的な存在だ。何があっても無償の愛を注いでくれているものだと思っていた。

「ああそうか、母親は妹のことをうざいと思っているんだ。妹のことが嫌いなんだ」

今ならきっと、当時の母は「言われっぱなしになってないで、言い返したっていいんだよ」というのを私に伝えたかったのだろうというのは理解できる。

毎日毎日怒鳴り合いのけんかを続けていて、母親だって妹に対してうんざりしていたのだろうということも、わかる。

でも中学2年生の私は「親とけんかしたら嫌われるんだ」と思い込んでしまった。

感情をまっすぐに爆発させてぶつけられる妹が、うらやましくて仕方なかった。

私だって反抗期真っ只中だったはずなのに、表現できないもやもやとした感情は、どこにもぶつけられることなく自分の中にしまい込むことになった。

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