見出し画像

「アルコールで中途覚醒が起こる」と言われるが、どういうメカニズムなのか。

    アセトアルデヒドがREM睡眠を阻害し、浅いnonREM睡眠が続く。と、英国のロンドン睡眠センターのイルシャード エブラヒム医長らは主張している。
【情報元】
https://dm-net.co.jp/calendar/2013/019659.php
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-01/ace-rae011413.php

    早稲田大学人間科学学術院で睡眠を研究する岡島義先生は下の図を示し、アセトアルデヒドは覚醒度を高めるので、浅い眠りになってしまうと話す。

画像1

    アルコールは入眠時間を短縮させることは確か。血管拡張による体温上昇と、麻酔作用でそうなる。
 https://mananavi.com/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E3%82%92%E5%A6%A8%E3%81%92%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E3%80%81%E3%81%8A%E9%85%92%E3%81%AF%E5%AF%9D%E3%82%8B%E4%BD%95%E6%99%82%E9%96%93%E5%89%8D%E3%81%BE%E3%81%A7/

    また、アルコールは『GABAA受容体』と結びつくことで、リラックスや幸福感をもたらすと同時に、興奮性神経伝達であるグルタミン酸系を抑制(特にNMDA受容体の抑制)することで、入眠が促進される。
    https://business.nikkei.com/atcl/skillup/15/111700008/042200054/?P=2

    1g/kgBwのアルコールを投与した場合、睡眠の質と量は以下のような変化を見せる。
    量:睡眠後半で覚醒が増加(睡眠時間は減少傾向)
    質:REM睡眠は前半で減少する(後半で代償的に増加する場合あり)。アルコール摂取量を増やすと、REM睡眠は一夜を通して減少する。
    ただし、「1g/kgBwのアルコール」は体重60Kgの人でビールで言えば約1,500mL、焼酎なら1.5合くらい、日本酒で3合くらいに相当するので、飲酒量としては多い(アルコールの適量はアルコール量として20~40gとされている)。
    https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1120080787.pdf

    入眠後に訪れる徐波睡眠だけを見れば、寝酒は睡眠の質を高めそうに思える(下図)。しかし、アルコールによってもたらされる反跳性作用によって、nonREM睡眠から切り替わった後のREM睡眠が長く続くために、中途覚醒を招きやすい。つまりアルコールは、睡眠全体を見ると質を低下させてしまう。
    アセトアルデヒドが脳内で増えると、交感神経を優位にするために、睡眠時における正常な脳の休息を阻害する。
    (新橋スリープ・メンタルクリニック・佐藤幹院長)

画像2

    (上記図の説明)アルコールの作用で入眠が早くなり、ステージ3~4まで到達する時間も早くなるために「徐波睡眠」が増えると考えられている。しかし、その反跳性によってレム睡眠が長くなり、これが中途覚醒の要因になるとされる。
    https://business.nikkei.com/atcl/skillup/15/111700008/042200054/?P=2



仕事より趣味を重視しがちな薬局薬剤師です。薬物動態学や製剤学など薬剤師ならではの視点を如何にして医療現場で生かすか、薬剤師という職業の利用価値をどう社会に周知できるかを模索してます。日経DIクイズへの投稿や、「鹿児島腎と薬剤研究会」等で活動しています。