いのちの停車場
南杏子 著
ライオンのおやつを読んで、緩和ケアについて関心を持った。
こんなに穏やかな最後をもたらすことができるのか、と。
もう少し知りたいと思った。
調べたら出てきたのがこの本だった。
東京の救急救命センターで働いていた、62歳の医師・白石咲和子は、あることの責任をとって退職し、故郷の金沢に戻り「まほろば診療所」で訪問診療の医師になる。
これまで「命を助ける」現場で戦ってきた咲和子にとって、「命を送る」現場は戸惑う事ばかり。
Amazon より
そして調べてから知った。2021年5月に映画化されていた。なんと…。
でも確かに映画としても見栄えがしそうな1冊だった。
一分一秒を争う救命センターとは180度方向が違うような訪問診療。患者を救うという目的は同じでも、取り囲む環境や患者と向き合う期間の長さなどは全く違う。
一人ひとりの患者と丁寧に、真摯に向き合う咲和子の姿勢はとてもかっこよく見えた。
きっと現実にはこんなに1人に対して手をかけていられない、と理想と現実で苦しむ医者もいるのだろう。
そのまさに理想を形にしたらこんな感じかな、と感じた。
できる限りを尽くし、患者の家族ごとサポートする。
患者ばかりに向けられがちな視線を、家族にも向けることは忘れられがちかもしれないが、大切だと改めて実感した。
レスパイトケアという単語も覚えた。
介護する側の休息だ。
介護の苦労というものは計り知れない。
自分がいつかその立場になったときに、とてもじゃないが耐えられる自信がない。
人生において、適度で上手な気分転換というものはとても重要だと思う。
話は変わり、作中で金沢の砂浜を車で走るシーンがある。
千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイというらしい。
日本で唯一、砂浜を車で走れる場所なのだそう。
金沢にはずっといつか行きたいと思っていたが、この本の聖地巡りとしても十分素敵な場所を巡れそうだ。
そして、私はこの本をカフェで読み終えた。
やはり人の生死が関わる本は外で読むべきではないなあと再認識した。
これから読む方はお気を付けて。
せめてティッシュは用意してから臨むことをおすすめする。