女神の前髪 6  フル回転

   初期量産に自動機械導入が間に合いませでした。
毎日休みなく量産が続きだしました。
小さな会社が初めて多額の投資をして始めた新規事業でした。
自動機械の代わりの多数の人手による加工費で、毎月多額の現金が流出しました。
当然にして単価は機械加工ベースですから差額は当方負担です。
社長である父は心配で眠れんと言っていました。
私はグ~すか眠り、信じて待っていました。

機械が出来上がってからは、五月のGWも休めずフル回転することになりました。
連休も休めないなんて御免だと、若い社員が結託して三人辞めました。
製造設備を導入した工場建屋は、従来の得意先の新事業の為に用意した小ぶりの建物でした。
その建屋は新築してから六年ほど稼働していませんでした。
目的の新事業が頓挫して、得意先の計画が実行されず、倉庫代わりになっていたのです。
私の方針はコンパクトな製造設備で量産能力が高い専用工場という事でした。
おあつらえ向きに建屋がフル稼働し、既存品の停滞傾向の中で救世主の感がありました。
この時は夢中で、「ついてる」という感覚もありませんでした。

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