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はずき奥様ストーリー【1】

 俺の名前は洋平。とある町で水道局の職員をしている。こう見えて一応、地方公務員だ。
 公務員はモテる、なんて世間ではよく言われているが、あれは嘘だと思う。現に俺は、40手前にもなって結婚できていないし、女性経験も数えるほどしかない。
 公務員といえども、水道局の職員などやっていてもいいことなんかほとんどない。普通の職業と比べていいところといえば、首になるリスクがないくらいだ。
 水道局というのはその特性上、職員のほとんどの比率を男が占めている。スーツなどほとんど着ることもなく、作業服で1日を過ごす。典型的な男の職場なのだ。
 職場に女っ気が無いのも、俺が結婚できない理由の一つだ。昔から人見知りで、特に初対面の女生徒はまともに話すことすらできず、当然合コンなどに呼ばれてもまともな成果があった試しがない。
 そんな俺の数少ない楽しみは、家に帰って一人で飲むことと、お気に入りの動画を漁って自慰にふけることぐらいだ。
 いい大人が情けないと、たまに自分でも自虐的に考えてしまうことがある。
 いつまでも若いつもりでいたのだが、たまに鏡を見ると老けた自分の顔にびっくりしてしまうこともある。昔は仲間に呼ばれて、よく合コンに参加していたが、最近ではもう声も掛けられることはなくなってしまった。
 それも致し方ない。もう合コンに参加するような歳でもないし、そもそも仲間たちはみんな結婚して、独身の俺と遊ぶような暇はないのだ。
 このまま大した楽しみもなく、一人孤独に死んでいくのだろうか。たまにそんな悲観的なことを考え、ため息をついてしまうのだ。

 俺の職場に若い女はいないが、若い男は腐るほどいる。毎年毎年、春になると新しい若い男が何十人も配属されてくるのだ。
 最初のころは、年下が増えることが嬉しかった。だが最近では若者のノリについて行くことができず、ウザいとしか思えなくなってしまった。
 おそらく向こうも同じようなことを思っているのだろう。若者たちのキラキラとした輝きが羨ましくてしょうがないのだ。
 最近の若い者は、なんていうのは老人の言うことだと思っていたが、最近は職場の若い連中に、最近の若い者は、と思ってしまう。それだけ自分が年を取ったということだろう。
 最近の若い連中は、休憩中などでも先輩の相手をしようとしないのだ。若い連中だけで集まって、それぞれの彼女の話なんかを楽しそうにやっている。
 みんな自分たちと同い年ほどの、20代前半の彼女がいるそうだ。
 正直羨ましい。20代の頃など男も女も性欲が溢れていて、頭の中はセックスのことしか考えていないだろう。
 職場の若い連中も、仕事終わりの飲み会には参加せず、みんな彼女のもとへ真っすぐ帰っていく。クリスマスには有休をとる不届き者もいた。

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