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もしも母が私にチョコを渡そうとしたら

1月末のことです。

「ラジオがほしい」

と母が言うので、いっしょに有楽町のビッグカメラへ行きました。

私のビッグカメラポイント約9000円分が1月31日で失効するので、それを使って買おうという話になったのです。

とはいえ、このごろめずらしく仕事が盛り上がっていて、

「ラジオ買ってねーで働け」


という全仕事関係者からの声が聞こえてくるような状況だったのですが、かつて

「仕事がどんなに忙しくても親を優先する」

と言っていた友人の言葉を思い出し、なんとなくそれに従ってみたのです。


当日。

電車に乗ってもお店に入っても、話題をポイポイ投げかけるのは基本おしゃべり好きな母。でも、ラジオのある2階に上がろうとエスカレーターに乗ったとき、たまたま会話が途切れちゃったんですよね。

すると、母が突然ハッとした顔で言ったんです。

「そうだ!あなたにチョコあげようと思って」


私は急に襲ってくる気恥ずかしさを正当化し、バッグをガサゴソする母に言いました。

「いや、いま渡されるとパクった物みたいに見えるから」

実際、ビッグカメラではバレンタインフェアでチョコを売ってたので(しかも2階で売ってた)、それを理由に母のガサゴソをさえぎったんです。

「あぁ、そうね、ごめんごめん」

チョコを取り出すのをやめる母。


で。

30分くらい悩んでラジオを購入し、1階へ降りようとエスカレーターに乗ったんですが、そこでまた話題が途切れちゃったんです。

すると母はまたハッとした顔で言いました。

母:そうそう、チョコを渡さないと!


私:いやいや、まだ店内だから。

母:あぁ、ごめんごめん。

バッグのガサゴソをやめる母。

その後、1回でラジオ用の充電池と充電器を探して購入し、ようやくお店から出ることに。

私は「母からチョコをもらう」という気恥ずかしさをこらえ、母に向けて手を差し出して言いました。

「はい、ちょうだい」

すると母はこう言い放ったのです。



そう。

母は、

チョコのことを忘れていたのです。



いや

まぁ

たしかに

私がラジオの入った紙袋を持っていて

母は本来そのプレゼントをもらう側なわけで

「渡すのはそっちだろ」

と母は思ったのかもしれません。

その気持ちはわかります。




でも

わかりますか?

有楽町のビッグカメラ前

人通りめっちゃ多い駅前の道で

息子が

母に

チョコを催促し、

「は?」

と言われた時の気持ち。


人生恥ずかしかった経験ランキングTOP3ランクインですよ。



・・・

という複雑な感情を丸飲みしつつ、なんとか無事チョコを受け取ることに。

その後、母は

「あ、このへんで今お父さんがテニスしてるからちょっと見に行ってくる」

と言い残し日比谷のほうへ去っていきました。


フリーダム!



まぁでも。

「仕事がどんなに忙しくても親を優先する」

という経験は、悪いものではないなと思いました、


ちょこっとね。





●後日判明したこと

・あのあと母は父のテニスを見に行くのをやめて、買い物に行ったそうです(なおフリーダム)

・チョコレートはバレンタインではなく普通におみやげとしてくれたものでした(恥ずかしさ返せ)



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