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映画「ミッドサマー」に関する考察
「ミッドサマー」観ました。
面白かったです。
主人公の女性に不思議と好感が持てる。
反面、彼氏がひどい(笑)。
でもある意味リアルですね。
こういう[社会の中ではやり手なのだけど、
人間味に欠ける男性]というのは、この世に沢山いるものなので。
まぁでも、だからこその、この映画のテーマなのですよね。
それにしても、この監督さんの芸風がわかってきました。
この監督の作品の怖さというのは、
やっぱり[救いの無い日常との対面]にあるのだと思う
(この世の理不尽こそが我々の考える怪物だと定義して)。
「エクソシスト」や「It」は、
理不尽という怪物を退治する[理性ある救い=信仰]が
ちゃんとあるのだけれど、
「ミッドサマー」や「ヘレディタリー」にはそれが無い。
なぜなら魔物が無造作に人間を襲う[破壊の物語]というより、
人間が身内を都合よく罠に嵌めていく
[淀みの維持の物語]だから。
だからある意味、キングの世界よりも救いが無い。
多分そういう世界を描きたい人なのでしょう。
[この世にはヒーロー不在のこんな世界があるんだよ]という事が。
あるいは人間(特に女性)に貞操観念を求めるのが[キリスト教]だとすると、
それが不在な世界を描いているとも言えます。
「ホドロフスキーの世界観に似ている」
と言った人がいましたが、似て非なるものだと思う。
ホドロフスキーは、トラジ・コメディや、ヴァニタスを強調するから
一見、理不尽で病的な世界を描く様に見えますが、
実は根底にキリスト教的な[救いの讃美歌]が流れているんですよ。
そう考えると「ミッドサマー」の表現には、ヴァニタスすらない。
人間が生み出す底力とか、コミカルさが全く無い。
例えばメル・ギブソンの「パッション」に出てくる
[蛆の湧いた死骸]というのは、
[神の栄光]があるからこそ、その日陰にある惨めな場所が
ヴァニタスとして描かれるのですが、
それが「ミッドサマー」は無いんですよね。
光も影もない世界って怖いのかもしれません。
ある意味、全く救えないし、
向こうもそれを求めてないから。
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