マガジンのカバー画像

短歌人

21
運営しているクリエイター

記事一覧

「短歌人」2020年9月号

「短歌人」2020年9月号

髙橋小径 会員2

青葉城、青葉山とう力士いて祖父といっしょに声援送りき

ただいちど祖父の涙を見しことよ 田端義夫の「かえり船」きく

中学の制服つくった駅前のデパート今は廃墟のごとし

島尾敏雄『日の移ろい』を読みながら年齢なりのおとろえ認む

すぐ怒り涙を流して考えるわたしをあなたは思想と呼んだ

「短歌人」2020年8月号

クレマチス彼の好みしクレマチスされど祭壇には捧げがたしよ
コンドームの自販機のみが現役の小さな薬局の跡を見ている
もうわたし車の運転しないけど家に届けば読むよJAFメイト
示唆めいた言葉を欲しがりすぎていて何も得られずに読書は終わる
突きとめること必ずしも是ならず父よあなたの娘は狡い

髙橋小径

「短歌人」2020年7月号

手洗いに十分な長さをはかるため「ハッピーバースデイ」二回歌えり
ケネディに捧げたモンローの歌ならば一回で「ハッピーバースデイ」
結社誌を読めばまざまざ目に浮かぶ二ヶ月若いわたくしのこと
粉末のアルコール世にあると聞きちょっとときめく 舐めてみたいな
手甲塩ならぬ手の甲にアルコール粉つけて滅びてゆきたい今は

会員2 髙橋小径

「短歌人」2020年6月号

「短歌人」2020年6月号

世の中のドアは全てが裂け目だといつしかわれは思いにけるかも
酒をのむという尊きおこないでいのち損なわれるは悲しき
七北田川の河口に満ちる水を見て「きみの目みたいだ」とあなたは言った
風船をうまくふくらませたときに大人になったとつくづく思う
鳥の名で呼ばれていたら朝が来てよその垣根の沈丁花かぐ

「短歌人」2020年5月号

髙橋小径
泣きながらビールを飲むし泣きながらごはん食べるし泣きながら死ぬ
青山にみじかいあいだ勤めたる君がやすみし髙橋公園
是清は仙台藩士の養子にて出世したけど苦労もしたよう
甘い水苦い水とはいいたくない酒はひたすらうまいものなり
あなたから指環がほしいもういちどとびきり大きなガラス玉のやつ

「短歌人」2020年4月号

「短歌人」2020年4月号

髙橋小径

飲みすぎと食べすぎならば飲みすぎを選ぶであろう 朝日がのぼる
流されてマンション住まいとなる今も門飾り買えと母は言いたり
こけしある居酒屋で飲むを好みますかつてのわが家で飲んでるみたい
リヤカーで中島丁を下りていく美術部一同作品のせて
美術書をいくらでも読める場所もあり宮城県美術館はわれらの庭で

「短歌人」2020年3月号

「短歌人」2020年3月号

髙橋小径
死ぬ前にひと目あいたい人もまたもう死んだ人なのだ はつゆめ
生物の教師に「ひよこ鑑別士」すすめられたことを思い出している
ここがあの場所だったことに気づかずに目やにのついた猫と目が合う
押し出しと寄り切りの差を知りしとき相撲ますますおもしろくなる
ぽかんとはどんなことなのか知りたくて鏡の前で口をあけている

「短歌人」 2020年2月号

髙橋小径
うますぎてうますぎてどこか味がしない美空ひばりの「悲しい酒」は
これだけは心強いと思いたり高校を出た街で暮らしていること
令和だが二十一世紀だが来年は浪花千栄子がモデルの朝ドラ
ひとはみな命の果てを知りしときそこに咲いてる花は手折らず
錠剤を投げ込むように飲んでから効能書きをじっくりと読む

「短歌人」2020年1月号

「短歌人」2020年1月号

髙橋小径  宮城

長月の宮城県民会館に薬師丸ひろ子のうたごえを聴く
仙台はいい匂いがしてあちこちで鼻歌をうたっている人がいる
二曲目で泣きそうになって横見たら隣の人はすでに泣いてた
何となくふられた歴史を思い出すコンサートでした楽しかったよ
出たことも見たこともあるステージは十年以内に建て替えられる

短歌人2019年12月号

短歌人2019年12月号

朝焼けが闇を満たしていくようにいつかは必ず元気になれる
ありがとうお給料ありがとう実際は給料明細の封筒
腹の立つことばかりだが封筒に二円切手のあるはかわゆし
まんじゅうを肴に酒を飲む友のありてなかなか人生はよし
普通酒を呷れば雪の街なかを歩く勇気が出てくるもので

会員2 髙橋小径

短歌人2019年10月号

正しさがどこかにあると信じてた丸ノ内線丸ノ内駅
それなりに大きい鞄を提げていく何も入れずにただ提げていく
大酒の呑めるしあわせ身のうちに流しで冷水汲んでいる朝
おおよその日の出の時刻を知っている泣く笑う泣く泣く笑う泣く
胡麻粒が歯にはさまっているような気持ちであなたに恋しています

髙橋小径(会員2欄)

短歌人2019年11月号

滅びないしかし昔の愛であるアマポーラとはひなげしの花
いたわりを知りし愛またよみがえるナナ・ムスクーリの「アマポーラ」聴けば
きぼうとかみらいみらいとかひらがなで書くときに生じるずるさを咬みしめている
バイオリン弾きは静かに眠るためエスカレーターを下っていった
冷えていく身体に見合う愛情を得られないことを何と呼ぼうか

髙橋小径

「短歌人」2019年9月号

日曜の午後二時にはなればFMをあなたはつけるきれいな指で
ここにある水ぜんぶ飲む怪物がわたしの中に眠っています
ほんとうはあなたはどこかで生きていて今度はわたしをきちんと捨てて
好きなだけ旅に出たいとみずうみの水面ゆらさぬほどの問いかけ
音楽を聴きながらでもまどろめるこの二時台は永遠である

「短歌人」2019年7月号

「短歌人」2019年7月号

眩しいと分かっている席で待っているそうしてそれを悔いてもいない
お互いの熱でとろけるはずだったかたまり今も冷たいままで
心臓にバターナイフを入れていく柔らかく君を傷つけていく
賭けに勝てばどこかほんのりさみしくて帰り道にはハンカチを買う
地図ばかり眺めてすごした地理の時間 正しいすごし方と云えよう

会員2 髙橋小径