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避難場所をつくる

新年早々、不動産屋を回ってアパート探しをしてきた。この時期から新社会人や大学新入生がアパート探しを始めるので、案の定お店は混雑していたけれど、無事に目当ての物件を確保することができた。

引越しを決めたのは、今のアパートが更新時期を迎えるというのもあるけれど、環境を変える必要を感じていたことが大きい。

強迫行為の染みついた部屋

アパートに住み始めてから半年もたたない頃から、外出前と就寝前の確認行為が止まらなくなった。始めはIHコンロの確認だけだったのが、エアコンの電源、電気プラグ、窓の戸締り、トイレの照明、冷蔵庫、キッチンの蛇口、電気ポットの電源、洗濯機の蛇口と、確認箇所が際限なく増えていって、最後には小さな1Kアパートの中を1時間半かけて確認して回るようになった。

自分のやっていることがおかしいと分かってはいるのだけど、どうしてもやめられない。何度確認しても安心できない。そんな魔のループにはまっていた。

幸いにも薬物治療と認知行動療法、そして家族の見守りのおかげで症状は治まってきている。でも、強迫行為の染みついたあのアパートに戻って一人暮らしを再開すれば、また症状が出てくるんじゃないかという恐怖はある。

それに、この部屋に住んでいた頃のわたしはかなり切羽詰まった生活をしていた。アパートは大学病院の目の前に建っていて、キャンパスからは目と鼻の先にある。周りはクリニックと薬局ばかりで、息抜きできるようなお店もない。そんなところで、毎日アパートと大学を往復するだけの生活をしていた。アパートは築20年以上たっているせいか、どんなに掃除をしても下水の臭いが消えなかった。「こんな部屋に住んでいたら病気になるよ」と母にも言われた。だから、引越しをすることにした。

Safe haven

新しい部屋は大学から離れた住宅街にある。家賃は今より1.5万円高い。そのかわり浅築で、清潔で、南向きのベランダからは日の光がよく入る。

正直なところ、住む場所を変えたところで強迫性障害が改善するという保証はない。大学の教員はは相変わらず厳しいし課題も多いだろうから、復学した後に強迫行為が出てくるかもしれない。

だからこそ、新しい部屋をストレスから身を守るための避難場所(safe haven)にしたい。疲れて帰ってきたら、温かいお湯につかれる場所にしたい。教室の喧騒や教員の怒鳴り声から切り離された、静かな空間にしたい。休みの日には勉強から離れて、ゆっくりひなたぼっこできる場所にしたい。

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