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市民の公園ボランティア。身近な公共空間の里親になるアダプト・プログラム。

みんなのための、みんなの公園。前回の記事(誰も排除しない、みんなのための公園デザイン。インクルーシブな遊び場という考え方。)が思った以上に反響があって、おかげさまで自己最高のスキがもらえました。ありがとうございます。最近はいろいろとユニークな公園も増えてきましたが、私の住む鎌倉のお隣、逗子市のとある公園で、こんな看板をみつけました。

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「え、公園に里親!?」
この手書きの看板から、なんだか愛が溢れています。公園の清掃など美化活動を行うということは、公園愛護会と同じ?それにしても、住民が里親で、公園が里子の養子縁組って、なんだ?

調べていくと、これは「アダプト・プログラム(公園里親制度)」というもので、自治体によっては、公園愛護会のような位置付けでこちらを採用しているところもあることがわかりました。

アダプト・プログラムって?

アダプト・プログラム (英語:Adopt program) は、市民と行政が協働で進める清掃活動をベースとしたまち美化プログラム。アダプト (Adopt) とは英語で「○○を養子にする」の意味。一定区画の公共の場所を養子にみたて、市民がわが子のように愛情をもって面倒をみ(清掃美化を行い)、行政がこれを支援する制度。(Wikipediaより

ふむふむ。アダプト・プログラムは1985年、ハイウェイでの散乱ごみ問題が深刻化していたアメリカで生まれたまち美化・清掃活動プログラムで、1985年にテキサス州がはじめて導入し、その後、急速に全米に普及したそうです。全米の他、プエルトリコ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどでも導入されているんだとか。

日本でのスタートは、1998年徳島県神山町から。現在では400以上の自治体で、45,000を超える数の団体があるのだそうです。

日本でこのアダプト・プログラムを普及・推進しているのは、公共社団法人食品容器環境美化協会という、複数の飲料メーカーが集まった団体。「のんだあとはリサイクル」のあのマークを作った方々です。

対象は「まち」全体

道路や公園、河川、海岸、駅前、繁華街、公共施設など、その対象エリアは、まち全体。たしかに、ポイ捨てやゴミ削減といった視点で捉えれば、まちじゅうが対象になりますね。たまたま公園きっかけで発見しましたが、特に公園に特化しているということはないようです。

美化活動に必要な物品をサポート

アダプト・プログラムは、市民と行政が契約をして、役割分担をしながら、そのエリアの美化活動を行うという考え方。市民は清掃や除草、花壇の整備や違法広告撤去などを行い、行政は活動に必要な物品の提供や、ゴミの回収、ボランティア保険の加入をしたり、活動の看板を立てたりします(私が見たのはこれだったんだ!)。

メンバーは、個人、グループ、企業、自治会などの地域団体、なんでもOK。行政は必要な物品を提供し、市民は活動をする。とてもシンプルな制度に見えます。

もともと清掃活動がベースになったプログラムなので、このアダプト・プログラムの主たる目的は環境美化。私もつくし公園愛護会の活動を始めてみて分かったのですが、気軽に公園の清掃をはじめるのに、物品提供のサポートは本当に助かります。必要な道具の選定も、買いに行く手間も、会計管理も、それなりの業務になってしまうから。

公園愛護会と、何が違うの?

1961年に横浜市から始まったという公園愛護会制度は、まちづくりの文脈の中でできた制度なのではないかな?と思っています(今度そこも詳しく調べてみようと思っていますが)。一方で、深刻なゴミ問題から生まれ広がったアダプト・プログラム。似ているようで、ちょっと違いそう。

行政の中では、公園と道の管轄部署が異なるので、道のみ、とか、河川のみ、公園のみ、といった形でアダプト制度を取り入れて運用している自治体もあります。公園愛護会制度のある自治体では、公園は公園愛護会、道や河川はアダプト。といった棲み分けをしているところもありました。

公園愛護会とアダプト・プログラムの両方の制度を並行して採用している自治体もありました。昔からある公園愛護会は、自治会・町内会などの地域団体が主なベース。エリア内の複数の公園を対象に、報奨金で必要なものを購入しながら活動しています。しかし最近では自治会も高齢化などで愛護会ができなくなるケースも。そんな公園を、個人や企業がアダプト制度を使って、カバーしていくという流れが起こっているようです。物品提供のみのアダプト・プログラムは、報奨金が発生する公園愛護会よりも必要な書類のやりとりが少なくて、気軽に取り組める、という声もありました。(活動費が出るアダプト・プログラムを設計している自治体もあります)

公園愛護会も、アダプト・プログラムも、身近な公園での定期的な清掃を通して、市民が行政と協力しながら地域の公園の安全を守ったり、地域での暮らしをより楽しんでいこうという点は共通しているようです。公園愛護会制度がない自治体は、このアダプト制度を採用しているところも多い印象。

「自分のまちはどうなんだろう?」なんて、もし興味があれば、住んでいる自治体の公園課のような部署に聞いてみるのもいいかもしれません。

市民がパブリックスペースに能動的にかかわること

まちの美化活動がシンプルに制度化されているアダプト・プログラム。公園をどう活用していこうか?とか、どうやったらパブリックスペースがもっと豊かになるだろう?といった、まちづくりの視点とはまた違う起点ですね。

それぞれの町で、未来はどうつくられていくのか?実情に合ったやり方はどうなのか?今後どうなっていくのか?興味深く見ていこうと思います。

きっかけは違っても、町や公園に市民が積極的に関わることは、愛があっていいまちづくりに繋がっているんじゃないかと思います。自分ができることを少しずつでも、みんながそれぞれ持ち寄ったら、きっと今より少し優しいまちになる。

公園愛護会もアダプト・プログラムも、やってみると見える世界がある。ただ、これらは継続が前提なので、気軽にはじめるにはまだまだハードルが高い。継続前提の大切さも分かるけど、もっといろいろな機会があってもいい。いきなりずっとは約束できないから、お試し的に体験できるボランティアの世界がもっと広がったら、いいなと思います。

住んでる町はもちろん旅先でのアクティビティ感覚で気軽に参加したりできるのもいいし、行きたいときだけでOKの、いつでもウェルカムな雰囲気のボランティアコミュニティだったりもいい。多世代で多様な学びがあったり、ゆるやかに継続したりできるようなプログラムとか、とにかくいろいろな幅や色があるといい。昔ながらの、一度入ったら抜け出しづらい村社会文化的な問題もあるかもしれないけれど、システムの工夫で解決できることもあるんじゃないかと思う。ただの利用者もいいけれど、能動的にもう一歩踏み入れたその先は、ちょっと面白い世界が広がっている気がするから。

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