万引き

「万引き家族」を観にいった

人間は結局、いい人しかいないんじゃないかって思った映画だった。性善説を思い出させる映画。そんなことはないと普段は思っているけれど、そう思えるほど、暖かさに満ちた映画だった。

わかりやすい悪人は誰もいない。みんな自分以外の誰かのために優しさを発揮している。

押し付けがましい優しさではなく、誰かの幸せが頭に浮かんだから、誰かの痛みに気づいてしまったから、ふとやってしまった、というような、小さな行動や言葉。
この映画はそんな優しさで満ちていて、涙を流してしまったシーンも、すべて優しさに泣いてしまったものだった。
血の繋がりがなくても、人間はみんな、優しい心を根に持っているから、誰かに優しくできる、そう思わせてくれた。

キズナを描いた映画だと、公式サイトのストーリー紹介に書いてあった。
でも、家族のキズナというよりも、人間が一緒に暮らしていくこと、一緒に暮らすことで生まれる優しさや愛情についての話なのではないかと思った。
祥太やゆりは拾ってきた子で、あきもほとんど関係のない子だ。それでも信代や治は家族として接し、優しい眼差しを向ける。たとえ祥太やゆりがもっと違う性格の子であっても、家族として接しただろう。一緒に暮らす、近くで長い時間を過ごすということは物理的な力を持ったものなのではないかと思った。同じ家で暮らすことでつながるキズナを家族のキズナと呼ぶこともできるだろう。
しかし、同じ家に暮らしてはいなくても、血縁で結ばれているキズナもある。

家族のキズナには様々な形がある。つまり人間の関係性にも色々なものがあって、傍目ではわからないものがたくさんある。どんな形をしているかはわからないが、まだ未知のそれらを体験していけるこれからの人生が、少し楽しみになった。

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祥太が「わざと捕まったんだ」と言った時のリリーフランキーの顔、「楽しかったんだよ、5年じゃお釣りがくるくらいだよ」と言った時の安藤サクラの表情、「いたいいたいだね」と手を包み込んだ時の松岡茉優の目、「私があんたを選んだんだよ」と言った時の樹木希林の微笑み

この映画の役者さんは、みんな文句なしに演技に凄みがあって、腹からにじみ出る優しさを内包した表情や手つきがとても良かった。このキャストさんたちと是枝監督だからこそ生まれ得たこの「万引き家族」を見ることができて幸せだったと思う。

とても良い映画で、映画館で見られたことはとても幸せだった。すごくいい映画だったのに、私の語彙が拙いせいで、存分に伝えることができたとは思わない。また、ネタバレしないようにと思って書いたため、抽象的な事ばかり並べてしまった。でも、本当に素敵な時間だったのだ。観るのを迷っている方は、ぜひこのやさしさに包まれに行ってほしい。

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