ペンギンハイウェイ

ペンギンハイウェイを観た

レイトショーで「ペンギン・ハイウェイ」を観に行った。すでに公開されて1か月近くたっているので、かなりの滑り込み鑑賞だ。

原作は森見登美彦さんで、森見さんには割と珍しい、京都も大学生も出てこない作品だ。森見作品の中では突出して、とてもさわやかな部類のものと言っていいだろう。

個人的に森見さんの作品は、言葉遊びでつらつらと森見ワールドに引き込む側面と、巧みな言葉づかいで森見ワールドをさも眼前にあるかのように錯覚させる側面があると思っていて、ペンギン・ハイウェイは全く後者なのではないかと思っている。なので、とても映像化と親和性が高いのではないかと期待していた。

その期待は、我ながら本当に的を射ていたといってもいいのではないだろうか。

ペンギン・ハイウェイのストーリーはこのようになっている。

小学4年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録している男の子。利口な上、毎日努力を怠らず勉強するので、「きっと将来はえらい人間になるだろう」と自分でも思っている。そんなアオヤマ君にとって、何より興味深いのは、通っている歯科医院のお姉さん。気さくで胸が大きくて、自由奔放でどこかミステリアス。 夏休みを翌月に控えたある日、アオヤマ君の住む郊外の街にペンギンが出現する。ペンギンたちはいったいどこから来てどこへ行ったのか……。ペンギンの謎を解くべく【ペンギン・ハイウェイ】の研究を始めたアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。ぽかんとするアオヤマ君に、笑顔のお姉さんが言った。
「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」 一方、アオヤマ君と研究仲間のウチダ君は、クラスメイトのハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体”海”の存在を教えられる。やがてアオヤマ君は、海とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考え始める。
そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は異常現象に見舞われる。街中に避難勧告が出される中、アオヤマ君はある【一つの仮説】を持って走り出す!
公式サイトより一部抜粋


まぁ、長い。これでも削ったのだけれど。
とにかく、アオヤマ君というノートを書くのが好きな小学4年生の男の子と、ミステリアスで魅力的な胸の大きなお姉さんが出てくる。
街に現れるペンギンや、球体、お姉さんの謎を解くことができるのか?アオヤマ君!というような、お話。

まず、アニメーションがとても素敵だった。
まだ観ていない方はぜひ想像してみてほしいのだけれど、コーラの缶をえいっと青空に放り投げると、空中でやわらかなペンギンになり、ぽてぽてっとコンクリートの上におちて、むぎゅむぎゅとバウンドする。

重力や物理法則がなくなった不思議空間と化した街を、ペンギンボートに乗って、たくさんのペンギンたちと一緒に駆け回る。街は誰も乗ったことのないジェットコースターみたい。

ペンギンの質感も、街の景色も、不思議な現象が妙にしっくりくる描き方も、とてもよかった。色彩もとてもきれい。セピア色をほんの少しだけ混ぜたような色合いなのだ。

また、キャラクターもとても魅力的に描かれていた。
アオヤマ君は、本当に偉い。
観たもの、考えたことをノートに記録して、毎日少しずつ世界について学ぶ努力を怠らず、将来はどれほど偉くなるか見当もつかない、という。

私が小学生の時は、世界なんて自分の目の届く範囲にしかないように見えてもっと大きく広がっているらしくて、それがすごく怖かった。勉強して少しでも世界を知ることで、怖くなくなるかもしれないなんて想像もつかなかった。

劇中、アオヤマ君の妹が、「ママが死んじゃう」と寝ているアオヤマ君を起こしに来たことがあった。
アオヤマ君は、妹が夢の中で、ずっと遠い未来にお母さんが死んでしまうことを見たのだと悟り、「僕だっていやだけれど、生きているものは必ずいつか死ぬんだ」と妹を諭していた。

私も、いつか家族が死んでしまう、という恐怖にさいなまれたことがある。この先一歩も家から出ないでくらせば、死ぬことはないんじゃないかと思い詰めたこともある。

その点、アオヤマ君はきちんと勉強して、生き物がいつか死ぬことを知っている。悲しいけれど、事実だということを知っている。そして、泣く妹をなだめることさえできる。

アオヤマ君は本当に偉いと思った。

そして、お姉さんは本当に魅力的だった。
少し低い声で笑って、どんな生活をしているのかわからないような人で、自分の知らない世界をいくつも持っていそうな人だった。
私も、「自分の知らない世界を知っていそう」と誰かに思わせるように笑う練習をしてみようかしら、なんて。

また、もう一人とても魅力的な人物がいた。アオヤマ君のお父さんだ。
アオヤマ君のお父さんは、悩むアオヤマ君に、問題の解き方を教える。

たとえば、問題を分解してみること、複数の問題が実はつながっているのではないかと考えること、ひとつの大きな紙にわかっている情報をかいて、その情報が頭の中をびゅんびゅん飛び交うぐらい自由に動くようにしてみること。考えても分からなければ考えるのをやめてみること。

お父さんのアドバイスを実行して、目の前の謎に体当たりで挑むアオヤマ君をみていると、ここ最近自分が謎にぶち当たって、そしてそれをきちんと解決したことなんてあっただろうか?と思う。
普通にぼんやり生きているだけじゃ、解決するべき謎なんて落ちていないのではないか?

映画を観ている最中、最近の自分は大変格好悪いな、と思って悲しくなってしまった。悲しいのは嫌なので、きちんと格好良くなるようにしよう。

さて本題に戻ると、やはりストーリーが一番魅力的だったように思う。
結局最後までよくわからないし、ファンタジーなのかと言われればそうなのだけれど、将来ちゃんと偉くなってお姉さんに会いに行くという、とても明るい終わり方なのが素敵だった。

こんなにもよくわからないのに、明るく終われる話も珍しいのではないかと思う。納得させられてしまった、という感じ。

とにかく素敵な映画だった。
滑り込みで映画館で観ることができて、本当に良かった。


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