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脂肪・炭水化物の消化と吸収


はじめに

前回の記事では、消化器の働きを部位ごとに簡単に解説し、そのあとでタンパク質の消化と吸収について解説しました。
(前回の記事はこちら

前回のまとめ

  • でタンパク質は立体構造がこわされ、ペプシンによってある程度の大きさにまで消化される

  • 十二指腸では、数種類のタンパク質分解酵素を含むすい液が分泌される

  • 小腸で、タンパク質はアミノ酸にまで分解されて吸収される

  • タンパク質の構造によって、消化率は大きく違う

  • 未消化のタンパク質は、うんちの悪臭や腸内環境が乱れる原因になる

まず、消化器の部位ごとの働きを下の図にまとめました。
(文字が小さくて申し訳ありません。)

消化器の部位ごとの働き(まとめ)

これをふまえて、今回は、脂肪・炭水化物の消化と吸収について解説します。


脂肪の構造と特徴

食べ物に含まれている脂肪の大部分は中性脂肪です。
中性脂肪はグリセリンに3つの脂肪酸がくっついて出来ているため、トリグリセリド(TG)とも呼ばれます。

中性脂肪の構造

「トリ‐」というのは「3」を表す接頭語です。
「グリセリン」に「3つ」の脂肪酸がくっついているので「トリ‐グリセリド」ですね。

ちなみに「モノ‐」は「1」を、「ジ‐」は「2」を、「オリゴ‐」は「少し」を、「ポリ‐」は「多い」をそれぞれ表す接頭語です。

食べ物に含まれているのは主に中性脂肪ですが、体の中でいろいろな働きをするのは脂肪酸です。
これまでに何度かお話してきたように、細胞膜のパーツになったり、ステロイドホルモンなどの材料になったりするのは脂肪酸です。
ですから、”脂肪酸が中性脂肪のパーツになっている”というより、「脂肪酸を3つまとめて蓄えているのが中性脂肪」だと思ってください。

脂肪酸の構造(イメージ)

脂肪酸は”頭の部分”と”しっぽの部分”からできています。
頭の部分は水と仲がよくて、水と混じる性質があり、油とは逆に仲が悪くて油とはなじみません。
一方、しっぽの部分は頭の部分と真逆の性質をもっています。つまり、油と仲がよくて油になじみ、水とは仲が悪く水とは混じりません。

脂肪酸は、頭の部分よりもしっぽの部分のほうが大きいため、全体としては水に混じりません。
そりゃそうです。脂肪酸というくらいで、脂肪ですから水には溶けません。

厳密にいうと、脂肪酸の中にはしっぽがすごく短いものもあります。
そのようなしっぽが短い脂肪酸は、頭の部分の影響が大きいため、脂肪酸という名前がついていながら、水に溶けます。

一例をあげると「酢酸(さくさん)」つまり「お酢」も脂肪酸のひとつですが、しっぽがほとんどなく、水に溶けます。

そのため、中性脂肪や脂肪酸は水の中では、水と仲のよい頭の部分を外側(水と接する側)に、水と仲の悪いしっぽの部分を内側(水と接しない側)に向けて球状の脂肪滴(しぼうてき)を作ります。


水の表面の脂肪滴
脂肪滴の構造(イメージ)

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