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ペットxスタートアップ海外事例の詳細解説 CtoCマッチング 「Rover ローバー」

近年の新型コロナウイルスがペット産業に与えた影響の一つは、Non-Medicalなサービスに対する需要減でした。自宅で過ごす時間が増加したことにより、自宅外での活動、例えば旅行や移動に費やす時間が減少し、その結果、ネガティブな影響を受けていたのが、ペットに関する宿泊やケアや散歩等のCtoCマッチング(ペットの家族とペットケアを提供する個人とを繋ぐ)サービスです。ペット版のUberやAirbnbですね。

今回取り上げるのは「Rover」。Beforeコロナで成長を遂げ、コロナで大きく沈み、今後の展開に注目のCtoCマッチングを手掛ける2011年創業のスタートアップです。米国でコロナが猛威を振るっていた2020年3月には470人いた従業員のうち41%にあたる194人をレイオフも経験しました。With/Postコロナの世界への適応が求められています。まだまだ若い企業ですが、すでに2021年にナスダックに上場しているのでスタートアップと表現するにはという感じですがまあいいでしょう。

Rover 会社概要

・会社名 : A Place for Rover, Inc.
・本社 : アメリカ シアトル
・設立年 : 2011年
・創業者 : Greg Gottesman, Philip Kimmey
・買収:競合のDog Vacay(2017)、Dog Buddy(2018)
・上場:2021年2月(NASDAQ)
・上場前ラウンド:2018年5月 Series G $125M調達(Pre-Val: $845M)

crunchbase

ペット向けのAirbnbを作ろうと、2011年のハッカソンSeattle Startup Weekendで誕生したのがRover(GeekWireより)。創業後は成長を続け、大きな動きだと、2013年には大手リテイルのPetCoと資本業務提携を行いプラットフォームを構成する飼い主及びシッターへの訴求を強化、2017年には競合のDog Vacayを買収、さらに2018年には競合のDog Buddyを買収し、マッチングプラットフォームの価値を強化。そしてさらなる成長を計画していた中でのコロナショック。海外進出にも積極的で現在は合計10か国(米国、カナダ、欧州8カ国。以下図参照)でサービス提供、300万世帯の顧客、800,000人のサービス提供者がいるという巨大なプラットフォームを持つ。

サービス

犬の場合、5種類のマッチングメニューがあります。

1.Boarding(シッターの家でペットを一晩滞在させる)
2.House Sitting(シッターが飼い主宅でペットのお世話とお留守番を代行。ペットに必要なお世話をする)
3.Drop-in Visits(シッターが飼い主宅に行き、ペットと遊んだり、フードを提供したり、トイレ休憩やゴミ箱を掃除したりする)
4.Doggy Day Care(シッターの家でペットが朝から夕まで過ごす。朝預けて、夕方にはお迎え。)
5.Dog Walking(近所をお散歩)

UIは以下のような感じです。上記のメニューに加えて、住所や日にち、犬のサイズを選択してサービス提供者を検索します。

そうすると、以下のような検索結果が表示され、

さらに、以下のように個々の自己紹介文、金額、過去のレビュー等を確認でき、予約を検討するという流れです。Airbnbの設計と非常に似ています。

ユーザー属性

・サービスの提供者の構成はGenZが36%とミレニアルが44%で合計80%を占める。若い層が供給の担い手となっていることがわかります。
・一方で、サービスの依頼主(受益者)は幅広いことがわかりますが、あえてボリュームゾーンを言うなら、ミレニアルが45%、GenXが26%。

以下チャートのように顧客のLTVも年々増加してることが示されています。

業績

上場会社なので定量面も情報開示されているのでざっくり見ておきましょう。直近のFull YearだとFY2021のデータを参考にします。

・売上:$109M(コロナ前のFY19から+16%)
・営業損益:$▲17M
・税引後当期純利益:▲$64M

Key Business Metrics

・Roverが重要視しているメトリクスはBookings(プラットフォーム上での予約数)とGBV(=Gross Booking Value。プラットフォーム上の流通総額を示す。)
・New Bookingsは804,000(コロナ前のFY19から+21%)
・GBVは$521.9M(コロナ前のFY19から+20%)

チャートを見て明らかなようにFY20はかなり凹んでいたことがわかります。これらメトリクス及び業績ともにコロナ前の水準には戻りつつある様子。そして下記図で示すようにFY22もGBVは成長を計画。もうすぐFY23の決算も出ますが取り急ぎ。

メトリクス - bookings推移

以下はbookings=予約件数のざっくりした推移です。

・2012年:サービスロンチ
・2013年:100,000件
・2015年:1,000,000件
・2015年〜:サービス拡張や海外進出の積極化で急成長し
・2022年内:70,000,000件の実績を見込む、という感じです。

メトリクス - GBV構成

以下は5種類のサービス内容とその価格、GBVの構成です。
ボーディングとハウスシッティングが主力のようです。

Roverが見る成長余地の大きなペット市場と優位性

以下はRoverが分析するペットマーケット。特に宿泊を伴うペットケアサービス、また、デイタイムにおいても、市場はまだまだ未開拓で成長性が存在することに触れています。ペットの家族の10%以上はペットを外泊させるサービスを使ったことがないことが示されています。

以下で示されていますがこれまでは、留守中ケアを含むペットケアは家族や友人、ご近所さんにお願いするのが常で、もちろん獣医やペットケアのチェーン店もあるけれど、Roverがテクノロジーを駆使してペットケアを変革させていく、ということです。

そしてプラットフォーマーであり多様なデータが膨大に蓄積されており、データが他社の真似できないアセットであり、競争優位性をつくりだすと。

競合の動き

ちなみにCtoCマッチングで競合のWag!は最近フードのマーケットプレイスのDog Food Advisorを買収するなど新たな手を打ってきています。

株価

最後に上場来の株価。以下が上場来の株価推移チャートです。
・2021年2月に上場。
・2021年9月に最高値。
・その後は下落トレンド。現在は最高値からは▲75%ぐらいの水準。
・現在の時価総額は$733Mほど(2023年1月末)
FED主導の急激な金利上昇に耐えられず2022年は他のハイパーグロース株と同様に暴落した形です。

もうすぐ発表されるFY22通期の決算発表での業績を確認しつつ、来るリセッションにおける今後の打ち手にも注目です。


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