WeWorkプラットフォーム化の序章 -洋服レンタル会社Rent the Runwayとの提携-

ソーシャルインシュアランスで話題の保険会社Lemonadeと提携したことが話題となっているWeWorkですが、今回はその裏側で行われていたもう一つのストーリー「Rent the Runway社との提携」について、個人的に思うところを連ねてみようと思います。


Rent the Runway has partnered with WeWork to place drop-off boxes in the lobby of 15 WeWorks across the country.” 

-北米6都市15箇所のWeWorkにおいて、Rent the Runway社のDrop-off回収ボックスが設置される-


Rent the Runway社とはアメリカで展開している洋服のレンタルサービス会社です。

UberやAirbnbなどの台頭と共に注目されているシェアリングエコノミーの中の洋服のシェア・レンタルサービスを提供する会社です。(欧州でも同様のサービスが何社か見受けられます)

顧客は以下の料金体系から自分にあったレンタルプランを選ぶことが出来ます。

①特定のイベントやアイテムのレンタル:4-8日 / 1着 / 30$

②4着のマンスリーレンタル:月一回 / 4着 / 89$(初月69$)

③無制限のマンスリーレンタル:いつでも / 何着でも / 159$(初月99$)

(※2018年10月時点、photo by Rent the Runway Website


さらに、Business Insiderの記事によれば、

・現在の顧客の90%が忙しく働いている女性でありWeWorkの拠点がある近くで働いている

・サブスクリプション顧客は1年のうち120日を同社が提供するレンタル服を着ている

・無制限プランにおいて、郵送やロジスティクスの時差・遅延により顧客は無制限レンタルに制限がかけられている状態である

(次の洋服を借りるためには、現在借りている洋服の返却が確認された後でないとレンタルできない模様)

とのこと。


これらの条件が揃っていれば、WeWorkとRent the Runwayの提携は記事にあるようにスーパー"Natural Fit"であることは納得できますね。

WeWorkとの連携により、Rent the Runwayの顧客は

(1)カスタマーは郵送の時差や遅延によるストレスが軽減され、返却と同時にレンタルすることが可能になる

(2)都市を移動しながら働くような顧客にとっては、WeWorkがある場所に移動する限り、現地へ衣類を持ち運ぶ必要性がなくなる(スーツ・ドレスなどのビジネスジャンルのレンタルに拡張する余地もあるのでは)

などの利便性を得ることができると予想されます。


逆にWeWork側は、「ただ生きるためではなく、人生を満たすために働く世界を創造する」という彼らのミッションを体現する場所に近づくことができますね。

WeWorkの利用者たちが、よりストレスフリーに月曜日が待ち遠しくなるように働くという”体験”を提供することができるのではないでしょうか。

「仕事」という切り口を武器に、これからWeWorkはいろんなビジネスのハブでありプラットフォーム化していく序章なのではないかと、企業価値2兆円起業の今後の展開が気になるところです。

「Thank God It's Monday!」

これはTGIF:Thank God It's Friday「今日は金曜日で良かった!」をWeWorkがもじったものです。

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実は、今回なぜこの提携に特別な思いを抱いているのかというと、私がこの夏ドイツで参加したグローバルアントレプレナーシップサマースクールで考えていたビジネスモデルに関連があるからなのです。


私が参加したサマースクールは、全世界700人以上から選抜された23ヶ国35人による7日間のアントレプレナーシップのコースです。その中で私達が考えていたのが「Amazonのレンタル事業版」。

これ実はわたしが今回日本からヨーロッパへ帰国する際になんと寝坊してしまい1つスーツケースを持ってくることを諦めたという個人的なストーリーに紐付いています。

私のケースは特殊ですが、旅行に行ったことがある方は共感して頂けるかと思うのですが、旅行に行くときの全日のパッキングがとてつもなく嫌になることってありませんか?

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「旅行先でしか使わないような厚手のコート・専用のブーツ・・・買うのもったいないなあ・・・」

「ああ!ついウルトラライトダウン持ってくるのを忘れてしまった・・・」

「気候が真反対の季節に行くとき、空港までの洋服はどうしよう・・・?」

そんなとき、

「もしすべてのアイテムを現地でレンタルすることができ、何も持たずに手ぶらで旅行に行けたら・・・?」

そう思ったのがきっかけです。


私達のチームのインターナルなアンケートによれば、4割の観光客(※)が一度きりの旅行のために新しい洋服やグッズを買い、その後使わずにクローゼットに眠っている、もしくは捨ててしまっていると回答しています。

(※ N=約60、日本インド中国韓国からヨーロッパ圏に冬季に旅行することを想定)


実はこのアイディア、既に数年前に米国では有名な起業プレゼン番組シャークタンクで優勝し会社として運営されていました(※2018年9月時点でのサービスの運営は確認できず)


彼らの現状はわかりませんが、私達がぶつかった障害はやはり「ロジスティクス」「価格」「利便性」の3点です。

顧客の観点からすれば、

空港の免税店・都心のファストファッションブランド、、、彼らが一度きりの旅行でも洋服を買う機会もインセンティブも無数にあるため、それを上回る利便性をファストファッション以下の低価格で提供する必要があります。

そんな中での今回のWeWorkとRent the Runwayの提携。

これはまさに!という提携ではないでしょうか。空港・ホテルといった当たり前の選択肢ではなく、顧客のカスタマージャーニーを考えた上で一番ベストな最適ポイントに設置すること、それによりユーザーに更に快適で楽しく「働きたくなる」という「体験」を提供できること。


「体験」という言葉を敢えて使ったのには理由があります。

Uber, Airbnbなど類似のビジネスモデルでも同じことが言えると思いますが、WeWorkは仕事場という「プロダクト」を提供しているのではなく楽しく働くという「特別な体験」を提供しているということです。(※詳しくはこちらの記事でも紹介しています。)


言われてみれば、納得するこのストーリーですが、横展開やピボットが比較的機能するこのようなビジネスモデルであるからこそ、始めにどのようなターゲットに「最高の体験価値」を提供するのか。

この部分をWeWork とのシナジーに結びつけた部分に感銘を受けました。


「体験」とはきっと私達が普段無意識に行っている行動であり、意思決定も含まれています。日常を常に驚きと新しい視点で見つめ続け、最適なアセットとの結びつきこそ、新しい驚きの「体験」の創造に繋がるのではないかと思ったニュースでした。


Wonders will never cease.

Cheers xx

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