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「WHY」 静寂の福音に導かれて・・・

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事業敗退~再起のモノガタリ 舞台は 南インド・チェンナイ~ガーナ・ブルキナファソ国境の名も無き村~ドバイ~シンガポール~日本
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「WHY」 静寂の福音に導かれて・・・

From エスポア島

To ここに 辿り着く前の俺自身へ・・

赤土の泥にまみれていた 

「名も無き村」で音無き福音を静寂から

ギフトされ目覚めを得た俺。

金銭面や 名誉での再起を求めて 日本を飛び出したはずたったのだが・・

今一度  あの福音を この海岸にて

味わい直してみようか?

シンガポール・チャンギ空港 200×年。

この大きなハブ空港は、まるで小規模な国際都市のようだ。

大きな荷物を抱えてヴァカンスに向かうであろうヨーロッパ系の家族。

それとは対照的に、全く笑顔無くとてもメカニカルな所作で大型家電製品を

母国での販売の為に、何台ものカートに積めるだけ積み重ねてゲートに向かうインド系の集団。

終始携帯電話で商談なのか?痴話喧嘩なのか?全く理解できないが

しかし迫力だけは確実に周

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進道真一の憂鬱

バブルという饗宴は文字通り「儚い泡」のように消え去っていった。

急速に冷め行く世の中で、過ぎ去った過去の夢のおさらいを悠長にしていられる内は、

世の中全体が未だ余熱を保有しつつ何とかなっていたが、その楽観を自ずと自覚し、

自粛して狂乱と共に萎んで消えていった。

けれど?

何も彼らは学ばなかったように、マーケットはその後ITバブルという名に踊り始め米国式錬金術に再熱し、IT・情報関

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進道真一の憂鬱

直近2度のバブルを経た今、過去の輝かしい「MADE IN JAPAN」「JAPAN AS NO.1」が 闊歩していた頃に戻る気配は全く感じられない日本。

既に先細りが加速化されている事を俺は新興国での投資案件に関わり感じていた。

時間を掛けての自己問答の末、再起の場所を

「日本ではない場所」ではどうか?・・と思索の幅を広げていったのだった。

最後のつなぎ融資を銀行から断られた帰

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心機一転の場所とは・・・・

数日間の間に、ご機嫌伺い程度のメール返信を何本か貰っていたが、

手応えを感じる場所は見つからず仕舞いで無益な日々を過ごしていた。

大きなため息と共に 「はなっから 無茶だわな」と、

自分自身を嘲る様に呟いていた一週間後の昼下がり、

全く予想外なオファーメールをインドから受信した。

確かに、自分で名刺を元に一斉メールを送ったのだが

インドには商談では無く、旅行で出向いただけだったので

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心機一転の場所とは・・・・

モニターには30歳を過ぎた位の薄い口ひげを蓄えた青年を映っていた。

元来良く似た顔をしている、インド・中近東系の顔だった。

向こうが、中・韓・日本国の人間の顔をしっかり見分けられないのと同等

モニターに映し出されている顔から、自分の記憶の糸を手繰り寄せることが出来なかった。

抑揚が激しく、発音に関してアクセントの癖は強いお世辞にも上手な部類の英語ではないのだが、

喰らいついた獲物は絶対に

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その男シャンカール

あっという間に迎えた出発日・・・・

俺を乗せたSQ機(シンガポール航空)は

シンガポールを経由し、人の波が溢れんばかりの チェンナイ国際空港に降り立っていた。

人生2回目の渡印になるが、南インドはこの時が 初めてだった。

深夜着便にも関わらずごった返す空港内、荷物を受け取るにも入国審査を受けるにも、

人の波を掻き分ける 体力を要求され続ける空間に「何ともならんな・・」と

うんざり

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その男シャンカール

翌日迎えの車が送り届けてくれた先は、

チェンナイ市郊外にある清潔感溢れる、

近代的建築施工されたシャンカールのオフィス兼自宅だった。

北インド旅行で旅してきた際に知り合った人間に招かれた

インド中流層宅を勝手にイメージしていた俺は、都心で付き合いのあったデザインオフィスに引けを取らない 佇まいに少し驚かされていた。

良く空調が効いたオフィス内の応接間でシャンカールは先ず、身の上を話し

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その男シャンカール

翌日には、チェンナイの日本領事館で事前にシャンカールが

申請を終えたガーナ入国のヴィザを受け取り、総合病院にて各種予防接種を 受け終えた。

「MR・進道、日本のパスポートは素晴らしい。行きたい国に  

 余り大きな制約もなく、大概の国へ行ける事が出来る。  

 私は、今回ガーナ行きのヴィザ申請が通りませんでした」 落胆しながら、こう続けた

「私は、MR・進道のメールを受け取る一ヶ月前

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その男アナンダン

チェンナイを離陸したEK機(エミレーツ航空)が向かった先は

シャンカールの友人が待つ、ドバイ首長国。

先日のチェンナイ国際空港の喧騒とは全く対照的に洗練され、

全てがスムーズなオペレーションで出国ゲートまで たどり着く事が出来た。

今回は迎えは来ない、自分で彼の友人が経営する食堂まで

渡された住所を頼りに辿り着かねばならなかった。

空港を出た瞬間に感じる、今まで未体験の焼け

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その男アナンダン

食堂の前に立った日本人の俺を見つけ 駆け寄ってきた男が目的の男アナンダンだった。

シャンカールとは対照的に、とても温和でふくよかな顔をした男だった。

多くの労働移民が食事でごった返す中 店舗奥の応接間に案内された。

「MR・進道、覚えていないと思いますが、実は僕も  

シャンカールと一緒に、クアラルンプールの屋台に居たんですよ。」

目じりに智と苦の深い皺を波打たせながら、シャンカ

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名も無き村へ・・・

翌日俺を乗せたEK機は9時間のフライトで、

ガーナ共和国の首都アクラにある コトカ国際空港に着陸した。

「人生初のアフリカ大陸だ」

南インドや、ドバイとは比べる事の出来ない屈強な男たちから入国審査を受けた後、到着ロビーへと向かって行った。

「あぁアフリカ人もインド人以上に見分けがつかねぇなぁ」 一人ごち呟きながら、アナンダンの食堂で渡された写真と 出迎えゲートで押し合いへしあいして

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名も無き村へ・・・

翌早朝、イマノワがホテルに迎えにやって来た。

「MR・進道。村(ヴィレッジ)に向かう前に私の事務所に立ち寄って、スーツ等村での生活に必要のないものを降ろして行きましょう。私が責任を持って保管しますから。」

俺達はアクラ市内にあるイマノワの事務所に立ち寄ちより、全ての荷物を降ろして村に向けて出発した。

小一時間程でアクラ市内を抜け終え、そこからは 自分が今まで見た事の無い原色の世界になっていっ

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村という名のキャンプ場

「MR・進道、もう直ぐ到着しますよ。」

山陰から神々しい朝陽が差し込む中、イマノワが起こしてくれた。

寝ぼけ眼にも、その神々しさは尋常ならざる美しさで「祝祭の陽光」・・とでも言えば良いのか?イマノワに掛ける言葉も見るからない間々呆けているだけが精一杯の俺だった。

木々が深く成りだした山道にて、移動は徒歩へと変わり

木々が光を遮る野良道を2時間ほど掛けて歩き続け息が上がりかけた頃

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