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【映画の中の詩】『まごころ』(1946)

荒野へ! 荒野へ! ーー ブロンテ姉妹

ハリウッド版の「ブロンテ姉妹」の物語です。

アイダ・ルピノ:エミリー
オリヴィア・デ・ハヴィランド:シャーロット
ナンシー・コールマン:アン
アーサー・ケネディ:ブランウェル

ブロンテ家の長男ブランウェルは姉妹の物語が語られるときにはいつもダメ男の問題児として描かれ、姉妹の引き立て役なのですが、実は才能豊かで姉妹の創作にも影響を与えたと思われ、評価する動きもあるそうです。

『雑誌の写真なんかで「ひとりとばして」なんて名前を書かれないひとのことが気になるんだ』と寺山修司は言っていますが、ブロンテ姉妹の肖像画として最もよく知られる絵の中では中央の人物は「ひとりとばして」どころか消されてしまっています。消されたのはブロンテ家の長男ブランウェル。しかもこの絵を書いたのも、塗りつぶしたのも他ならぬ ブランウェル・ブロンテ自身なのです。

ブランウェル・ブロンテ作のブロンテ姉妹の肖像画

画家であり、また詩も書いたブランウェルですが、姉シャーロットと妹エミリー、アンという名高い三姉妹に囲まれてひどく影が薄く、それを象徴するような絵となっています。

影が薄いだけではなく、ブロンテ姉妹を描いた映画やドラマでは才能もないのに長男というだけで姉妹を差し置いて父親からの期待を一身に集めながら、それに答えられない挫折感からか酒に溺れ、始終問題行動を起こすトラブルメーカー、というような扱いをされてしまうことが多いのは、表向きは大した事件も起こらない姉妹の生涯を少しでもドラマティックにするためなのでしょうか。

そんなかわいそうなブランウェルですが大成しなかったとはいえ実は姉妹にも劣らない才能豊かな人であった、というような評価もあるようで全詩集なども邦訳されています。
また姉妹の中では特にエミリーと通じ合うものがあったようで『嵐が丘』の成立に少なからず影響を与えているのではないか、とも言われています。

ブランウェルは1848年9月24日に31歳で、エミリーは同年12月19日に30歳で、翌1849年5月28日に末の妹アンも29歳で死去。
残されたシャーロットも1855年3月31日、妊娠中の胎内の子供と一緒に38歳で死去し、ブロンテ家は断絶しました。

参考リンク
世界の文学 第12 (E.ブロンテ)  書誌情報 : 出版者 中央公論社
『山中の嵐』 エミリー・ブロンテ 安藤一郎訳
我が胸は自由 : ブロンテ姉妹の生涯と芸術  阿部知二 著




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