あなたは、いつからソーシャルワーカーですか?| 恒吉 麻実子
1.ソーシャルワーカーの専門性
「あなたは、いつからソーシャルワーカーなの?」
これは、スーパーバイザーから私に向けられた「問い」です。これは、社会福祉士の資格を取ったのはいつ?という意味でも、ソーシャルワーカーとして仕事を始めたのはいつ?という意味でもありません。
この問いは、次のようなことを意味します。
「人の公平性や平等性、人の権利に着目し、違和感をいだいたり、行動し始めたのに、何かきっかけとなる出来事があったの?」
みなさんは、いかがですか?
ソーシャルワーカーが対象とするのは、「公平性、平等性、人権、社会正義」などに問題が生じてパワーレスになっている人や集団です。
そこに違和感をいだき、その違和感を言語化し、複雑な社会システムの中で「どこが問題になっているのか」を特定する。
そしてありとあらゆる資源の中から有効そうなものを特定、なければ開発する。時には当事者の代わりに声を上げ、「正しい在り方」に導いていく。
「感性」「情動」「創造性」「技術」「勇気」といったソーシャルワーカー自身の「リソース」をフル動員していくような、そんな営みではないでしょうか。
そしてその「違和感」は、時に「悲しみ」「怒り」のような負のエネルギーを伴うものでもあります。それは自分自身の中にあるものかもしれませんし、クライアントから受け取った情動でもあるかもしれません。
その負のエネルギーによって、自分自身が深く傷ついてしまうこともあります。
自分自身にあるそのエネルギーをしっかりと受け止めること。そしてその上でその状況を客観的に分析し、行動し続けること。
それはとても複雑なプロセスで、そうあり続けること、そのものがソーシャルワーカーの専門性の一つともいえるのではないかと思います。
2.バイジ―としての私から見えた景色
私がスーパービジョンを初めて受けたのは今から5年前です。
みんなに楽しそうだね、と言われながら、時々ヘトヘトに、燃え尽きに近いような状態になりながら、でも楽しく、がむしゃらに仕事に励む。そんな状態で走り続けて10年経とうとしていた頃でした。
「月に1回、バイザーと1時間、話をする。」
その1時間で何が行われていたのか、ひとことで言い表すのはとても難しいのですが、それは、とてもあたかかく、安心で、客観的。
今見えている世界の霧のようなものが晴れ、「今自分はどんな状況に置かれているのか」がわかり、「自分の進みたい方向」「自分の進むべき方向」の一歩先が照らされるような、そんな時間だったように思います。
「今見えている世界の霧のようなもの」
それは、自分自身がこれまで、違和感を感じていたけれど言葉にするのが怖かったもの。言葉にしてはダメだと思っていたもの。言葉にしないで、と社会から求められているような気がしていたもの。この違和感を感じている自分の方がダメだと思っていたもの。
そんなものの集合体のような気がします。
それらのひとつひとつを、バイザーがあたたかく受け止め、一緒にその正体について紐解いてくれた。時に勇気が必要でしたが、バイザーと一緒であれば、不思議と怖くないのです。
その霧のようなものが成仏していくと(笑)(浄化、みたいなニュアンスですが、ここは成仏、といった言葉がしっくりくるのでそのまま使います)、クライアントへのまなざしも、社会へのまなざしも、クリアに俯瞰的に変わっていきました。
そういった自分のまなざしが変わると、クライアントとの関係性、社会との関係性が変化していく。関係性が変化していくと、これまでと違った景色が見える。
2年間のスーパービジョンで、そんな経験をしました。
3.ここまで言葉にしてみて
ここまで言葉にしてみて、ソーシャルワーカーって何なのか?スーパービジョンって何なのか?それを言葉にすることの難しさに慄きます。
だからこそ、言葉にしていく必要があるとも思います。
そもそも、私たちは複雑なものを相手に、複雑なことをしようとしているのだと思います。
これから、この複雑なプロセスについて、いろんな形で言葉を紡いでいきたいと思います。
よかったら、お付き合いください。
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