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院内見聞録 入院2日目 手術

2021年1月26日

4時40分起床。いや、床から起きてはいない。が、目が覚めて時計を見ると4時40分。そりゃ、前の晩あんなに早く寝たら、早くに目も覚めるわ。午後3時半から手術なので朝・昼と絶食。そしておそらく夕食も抜き。それは分かっているが、昨日の夕食が6時だったため、既にお腹が減っている。もはやここは断食道場だと思い込むしかない。うふ、一度、行ってみたかったんだぁ…。むなしい…。麦茶の代謝がいいのか、やたらとトイレに行く。

仕事をしていても空腹が気になるので、気を紛らわすためにかわいい倫也さん(*1)でも見るかと配信で「星が丘ワンダーランド」を見る。木村佳乃に佐々木希、杏にダメ押しの菅田将暉。トップコートありきの企画か? 画面が暗かったのでやたらと自分の顔が映りこむのに閉口した。そしてクソみたいな脚本だったけど、ダッフルコート姿のかわいい倫也さんが見れたから、最初の目的は果たせたのでよかったことにする。

邦画があんまり得意じゃない理由は人物に一貫性がないことが往々にしてあるからで、こういう性格の人が、こんな行動はしないだろとか、こんなこと言わないだろ、というシーンが目に付くとうんざりしてしまう。もちろん、実人生において、ある人物が思ってもみない行動をとることはあるけれど、物語を動かすためだけに言わされるセリフや人物にそぐわない行動はフィクションにおいてはやめてほしい。

なぜ、わたしがその点にうるさいのかというと、自分が訳すときにそこに腐心しているからだと思う。セリフの内容は変えられないけれど、どんな言葉遣いなのかはキャラクター設定にかかっている。主人公以外の人物の内面もちゃんと掘り下げてほしい。

手術は15時半ごろからの予定だが点滴はすでに10時から入っている。何時ごろだろうか、病院付きの牧師さん(女性)が手術の成功とその後の回復を祈りに来られる。その直前にお正月で帰省したときにチェリまほ民に引き込んだ地元の友人とLineでやり取りしていたのだが、漫画版とドラマ版では藤崎さんのキャラがどのように変わったのかを説明するために、PCでPixivのチェリまほのページを開いてたので非常に気まずい。ま、サムネ画面で、一番まずいシーンは開いてなかったからセーフだと思いたい。

何年ぶりだろうか、自分の口で「アーメン」と言った。

ここにいると牧師さん以外にもいろんな人が入れ替わり立ち代わりやってくる。昼間の担当の看護師さん、夜の担当の看護師さん、担当医、麻酔医が挨拶にやってくる。病院とはそういうものなのか、あるいはここが特別なのか、大きな手術をしたことがないからよく分からない。

15時を過ぎたくらいに担当の看護師さんが呼びに来る。歩いて移動。白衣というか緑の手術着を着た人以外に、台湾のマッサージの人が着ているような花柄のチュニックみたいなものを着た人もいる。どういう区別なのだろうか。何度も名前や手術の部位を確認される。この期に及んでも、まだ特に不安や緊張はない。なるべく多くのことを記憶しておこうという気持ちのほうが強い。これは2年前に受けた白内障の手術が面白い体験だったことも関係していると思う。あと、わたしは病気の治癒を当面の目標にしていないせいもあるだろう。治るのは当然でその後にやりたいことがまだいっぱいあるんや。そっちを見てる。

手術の前にもお祈り。すでに手術台に乗り、落ちないように手足を固定されているので、手は組めないが、本日二度目の「アーメン」

いよいよ全身麻酔が始まる。「大きく深呼吸をしてください」と言われて深呼吸を繰り返す。「麻酔薬を入れるので、ちょっと沁みます」沁みるってどういうこと? と思っているとイターーーー! 点滴が刺さっている左腕が痛くなる。沁みるっていうか、普通に痛い。すると口の中に何かの味が広がったと思うと、急に息が吸えなくなる。息を吸おうとするのだが、全然肺がふくらまないし、空気が入ってこない。え? 何これ、まずい。苦しい。ヤバいことが起きてるんじゃ? と思って気づいてもらうために腕をバンバンしようとするが、まったく体が動かない。

あ、そういうことか。

そういえば昨日麻酔の説明のときに、麻酔中は口を大きく開けて固定させた管から酸素と何かを入れると言っていた。だから術後は声が出にくいし、喉が痛むことがあると言われた。でも、そのことと麻酔中は自力呼吸が止まることとが結び付いていなかった。そうか、全身麻酔というのは小さな死なんだな、とそこまで考えたところで記憶が途絶えた。

次に気づいたのは麻酔から起こされているときだった。目覚める直前に何かの夢を見ていた気がするが、目覚めた瞬間から色々話しかけられたので何も覚えていない。手術は成功。3時間は安静ということで、ベッドの上でじっとしている。

術後、最初の尿を看護師さんに確認してもらう必要があり、200ml以上ないとやり直しになると言われたので、麦茶を飲んで溜まるのを待つ。いい感じの尿意を感じ、満を持してトイレに行くと、色鮮やかな青緑色の尿が出た。嘘だと思うかもしれないが、うっすら緑ではなく、本当に絵の具を解いたかのような色。証拠写真を撮りたかったが、まさかそんなことになると思っていないのでスマホも持っておらず、かといって300ml分の尿が溜まった容器を置きざりにして、病室に取りに行くこともできず、泣く泣くあきらめた。っていうか、こんな面白いことあるなら事前に教えといてよ~、と思ったので後学の徒のためにここに記しておく。

看護師さんによると、色素でつけているのでトイレに行くたびに薄くなりますとのこと。ただ、自分が記憶している限り、ソルラクトの点滴も、抗生物質の点滴も無色透明で、一体どこで入れられたんや。麻酔液か?(*2)

消灯は10時だが、手術中も実質、寝ていたようなものなので、全然眠る気になれない。映画秘宝のDMの件(*3)をどのように振り返ったのかが気になって、radikoでアトロクを聞いているうちにいい感じに眠気が訪れたので6時台だけを聞いて寝る。やっぱり手術って疲れるのかも。


  1. 中村倫也はファンだが、推しは町田啓太。しかし、もし実際に話すチャンスがあったとしたら、話が合うのはどう考えても中村倫也のほう。だって、町田くんってアングラ要素いっさいないやんか

  2. 後になって分かったが、センチネルリンパ節生検のため組織を染色したのだった

  3. 映画秘宝の編集長が一般人女性のTwitterアカウントにDMで恫喝した事件。あれから1年以上経っているが、たぶんちゃんと解決していない


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