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院内見聞録 入院シーズン3 10日目

2022年5月22日
0:37、1:57(トイレ)、4:41、5:43に目覚める。今日はドレーンの中身を抜きに来る数分前に自力で目覚めた。4時台も5時台も吉田豪に関する夢を見ていたが、詳しい内容は思い出せず。ドレーンの量がずいぶんと減った。イエイ! 朝の検温36.8℃。入院で少しぐらい体重が減るかなと思っていたが、まあまあしっかりした量のご飯を3食、完食していることもあり(ふだんは2.5食ぐらい)お腹周りが以前にも増してグラマラス。体重計は勝手に使っていいと言われたので、朝食前、トイレ済み、パジャマとこれ以上そぎ落としようのないベストコンディションで計ってみるも54.05Kg。入院時は厚めの洋服を着ていたので実質増えとるな。

昨日の夜から読み始めた「すべての道は役者に通ず」を読む。Wi-Fiエリアに行ってメールチェックとDuolingo3レッスン。新しい仕事のオファーあり。さらに漫画「大奥」を読んだり、見ないようにしていたTwitterのチェックをしたりしてると、あっという間に時間が経って気づくとお昼前だったので病室に帰る。(これが通常運転なので普段の日はTo doを積み残すんだよな)

昼食後も1話ずつちょびちょび読んでる無料漫画を何種類か読み、メールの返事を書いていると看護師さんが昼の検温のために呼びに来た。またしても36.8℃。ドレーンの管のテープを張り替えてもらう。そういえば再建手術をすることを話したときに何人かの人に「ついでに反対側も入れてもらったら?」と冗談ぽく言われたのだけど、どうも世間からは貧乳と思われているらしい。確かに体型はまったくグラマラスではないし、キャラも貧乳っぽいけれど一応Eカップあります。

「すべての道は役者に通ず」読了。台本の読み込みかた、役の掘り下げかたなどの演技論については、字幕にも学ぶこととうなづくこと多し。いくつか気になったこと。山本學の「座右の銘は『人の芝居が下手に見えた時は、自分が下手になってる時だと思え』です。ダメな人ばかり目がいって、上手い人に目が行かなくなったら、自分の感性が落ちているということだと思っています」という言葉にウグッとなった。

映画を観てるときにアレ? と思う字幕に目が行きがちだもの。でもなー、字幕もこの法則に当てはまるんかなー? うまい字幕とは見てる人に字幕を意識させず、あたかも日本語で観たかのように、セリフがするするとしみ込んでいく字幕のことだと思ってる。だから、上手いと唸るような字幕は逆に他から浮いてるんじゃなかろうか? ただ、あ~、なるほど、これは上手く処理したなと感心することはよくある。

インタビュイーがいわゆる昭和の名優と言われる人たちなので、結果的に勉強になったという、いいエピソードとして語られるのが、昨今(特にここ数カ月)の感覚からすると、完全にハラスメントとしてアウトになってるものが多い。例えば山本學の弟、山本圭は「『小林多喜二』のときは拷問研究家という人がやってきて、逆さ吊りにされました。それで揺すられて、刑事役の人たちに木刀で叩かれる。少しでも躊躇があると、今井監督からダメだしがでます。『吊るされる限度は二分』と言われていたので、降ろされては休んで。それでまた、叩かれる。それを六回やりました。最後は監督も私の傍にきて顔を見ずに『もういっぺんやってください』と言っていました。ああいう場面では、演じるといっても、やられるのをただ耐えている。それだけです」と言っている。今井正めちゃくちゃやんけ。「ラストムービー」で竹ひご製の撮影機材で映画撮ってるインディオ(本当はインディヘナと呼ぶべきだけど伝わりづらいんで)と同じですやん。そして藤竜也はこう言っている。「監督は一種の神様です。そうしないと、映画の現場って回らない」ひーーっ、確かにインディオたちは映画を儀式として行っていた。

本が出たのは2018年で3~4年前はまだこれが普通に昭和の芸能あるあるだった。でも、この数カ月、榊英雄を発端とする一連の監督や俳優によるレイプ(わたしはセクハラなんて生易しいものじゃなくてレイプだと思っています)告発で、一気にあるあるにしてはいけない空気が高まっている。撮影現場で「〇〇(監督の名前)組」と呼ぶのが監督に権力を集中させる悪しき源という人もいる。ハラスメントを起こす体制を変えていくことに対しては完全に賛成だ。でも、その一方でやっぱり映画は監督のものだとも思っている。もちろん役者やスタッフの協力がなければ成り立たないけど、全員の民意を汲んだ民主的な映画だからといって面白くなるとも思えない。作品に一本通る指示体系(つまりそれがディレクションということだけど)と労働環境の改善はひとつのことじゃなくて、別物としなきゃだよねぇ。

それから、まったく余談だが、滝田栄が舞台と掛け持ちしていた大河の撮影中に背中の筋肉が切れたエピソードを語っていて「『今夜、本番なんです!』と言ったら『分かってる。今は片方だけの筋肉で支えているから、これも切れたらもう立てなくなる。ただ、人間の体は一度に二か所は痛くならない。他の部分を痛くしちゃえば、背中の痛みは忘れる』と針を打ってくれたんです」って、これ、わたしが数日前(手術日)に書いてたことやん。漫画じゃなかったけど、まるで読む前にすでに読んでたみたい。

夜の検温36.9℃。もうわたしの平熱は36.8前後だと思うことにする。消灯後の0:00に布団の中でこっそり25日のチェリまほチケットを取ってから就寝。


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