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情報の透明性って、本当に必要?

この記事は「LayerXアドベントカレンダー2023春」の8日目の記事です。 昨日は、稲田さんによる「なぜ組織にはドキュメントが必要なのか - 透明性を担保しスケールしていくためのドキュメント文化の重要性」でした。
明日は、kajiさんによる超大作です。お楽しみに!

LayerX アドベントカレンダー(概念)

こんにちは、眠れる銭をActivateしたい丸野です。
今日は「透明性、透明性、っていうけどさ。実際大変だよね〜〜」という話をしたい思います。

透明性に1人1人が耐えられるか

例えば、こんな経験はないでしょうか。

「入社直後、slackの圧倒的な情報量に、唖然とした。」

by 社員Aさん

「議事録、議事録って・・。そんなん書く暇あったら1件でも商談こなした方がずっと生産的でしょ。共有は口頭でサクッとできるじゃん。」

by 丸野友人Bさん

「全社会議、正直自分のチーム以外の情報が頭に入ってこない。」

by かつての丸野宏之

その他、マネジメント職の方々も、透明性確保のために、並々ならぬ努力をしている方が多いのではないでしょうか。

例えば、私がいる三井物産デジタル・アセットマネジメントでは「ピア・レビュー(いわゆる360度評価)」というものがあり、全従業員がお互いに匿名でフィードバックを送り合います。

そして、ここからがキモなのですが、取締役(+任意の方)は全てのフィードバックの内容と、それに対する自分のコメントを全社公開しています。

フィードバックをもらえること自体は大変有り難いことなのですが、これがまぁまぁ心を抉られますし、更にそれを全社公開するなんて、繊細なメンタルだとやってられません。

それ以外にも、透明性を担保するために、1人1人が様々な「説明責任」を負っています。会議の結果、意思決定の背景 etc…
これらを分かりやすい形で共有するのは本当に大変で、毎日サボりたくなる誘惑に駆られます。

透明性がない方が良いケースも・・・??

その上、こんな本を見つけてしまいました。

これは、イーサン・バーンスタイン氏(ハーバード・ビジネス・スクール助教授)が「透明性を一部落とした方が生産性上がることがあるよ」ということを4つのタイプに分けて解説している本です。

詳細は本書に譲るとして、いくつか事例を紹介しておきましょう。

チーム毎にプライバシー空間を作る

グーグルは、エンジニアが個人的に興味のあるプロジェクトに勤務時間の20%を割くことを許可しており、いつ、どこで、その時間を費やしたかを追跡していない。しかし、エンジニアはプロジェクト遂行のために自主的に結成した「チーム内部」では、他のメンバーに対して透明性を維持する責任があると考えている。

引用:「ガラス張りの職場」に潜む罠

フィードバックと評価を分ける

アメリカの大手運送会社は、各車両のフロント・ガラスの上部に車載カメラを設置して運転手の安全性と業績の向上を図ろうとしている。(危険行動の特定や事故防止の活用目的)

各車両の安全性は少数のコートが管理監督しており、コーチが経営幹部と動画を共有するのは、損害が生じた場合のほか、(中略)故意に法律を犯した場合のみだ。また運転手本人を評価する上司は、このコーチングには関与しない

車載カメラの導入当初、運転手たちは「ビッグ・ブラザー」に監視されていると身構えた。なかには安全性が逆に低下した場合もある。しかし、経営幹部が人事考課や処分に動画を使わないと信頼するようになると、運転手たちの警戒心は和らいだ。

コーチの1人は「カメラを活用することで、運転手は『悪い習慣をよいものに転換』できるようになり、安全記録が向上しています」と説明する。

引用:「ガラス張りの職場」に潜む罠

どうやら生産性を考えても「何がなんでも透明性を上げればいい」というわけではなさそうです。我々は一体何を信じたらいいんでしょう・・・。

それでも、透明性にこだわる

それでもLayerXは「情報の透明性」にこだわっていきたいと思っています。それは、

個々人の仕事の成果(アウトプット)は、その個々人の能力だけではなく、「情報のアクセシビリティ」によっても変わる。

という可能性を信じているからです。

でも組織の透明性の維持は大変です。

ではどのような工夫ができるでしょうか。いくつか行った事例を見ていきたいと思います。

「透明性」に振り回されない、ちょっとした工夫

①情報の発信側 = 共有先毎に解像度調整をする

LayerXでは全社員が集まる「週次定例」を創業の頃から欠かさずやっています。しかし、そのやり方は、今と昔で異なっています。

結論から言うと「組織や事業の拡大に合わせて、内容を常に変更し続けてきた」というものです。具体的にみていきましょう。

2020年1月の週次定例(メンバー数 = 約20人)

  • 時間:1時間

  • アジェンダ

    • CEOメッセージ(20分)

    • 各チームから共有(25分)

      • 各セクションの個人のタスクレベルまで詳細に共有

    • 議論(~15分)

      • 全員好きにアジェンダを書き込んで議論する場

20年1月の週次定例アジェンダ。
共有だけじゃなく最後に全社で議論の枠がありました。
議論パートの内容(ほっこり系)
リアルタイムで議事録をコメントしていくのもLayerX流。

2023年3月の週次定例(メンバー数 = 約150人)

  • 時間:30分

  • アジェンダ

    • 週次所感(12分)

      • 代表取締役2人が毎週交互にメッセージを発信

    • 各チームから共有(12分)

      • KPI進捗やトピックスなどにフォーカス

    • ひとこと(5分~)

      • 代表取締役以外の役員が持ち回りで発信

ChatGPTが世間で騒がれ出した頃のfukkyy週次所感。
ニュース追ってるだけじゃなくて「ちゃんと触ってみよう」的なお話です。
上記のURLの先に圧倒的内容が詰まっているのですが、
こういった情報にアクセスできるのも1つの福利厚生

昔と今では、チームのサイズも変わっており、全体で共有する内容の抽象度を上げたり、時間を短くなっていたり、ということがご覧頂けるかと思います。

ポイントは「いつのタイミングから切り替わったか」ですが、LayerXの場合は(たまたまかもしれませんが)人数ではなく「ブロックチェーンを中心とした事業から、SaaS・Fintech・Privacy Techの3つの事業の形が見えてきたタイミング」でした。

例えば、私はFintech事業に関与していますが、SaaS事業の大まかな進捗は把握しておきたいものの、細かいKPIやタスクの進捗を把握したところで、(私の知的好奇心は満たされるかもしれませんが)Fintech事業の目標達成にプラスの効果はほとんどありませんし、SaaS事業に良いフィードバックができるわけではありません。

このような経緯、各チームの共有パートを思い切って時間短縮(25分→12分)し、全員集まっての議論の時間をなくし、会議全体の時間を60分→30分に短縮しました。

このように「1人1人が、全体感をつかめる状態にしつつも、各チームの目標達成にフォーカスできる状態」という絶妙なバランスを目指しています。

ただ1点忘れてはいけないのは、共有の抽象度を上げたとしても、この裏には各チームの詳細なデータなり議事録なりが存在しており、必要に応じて誰でもそれらの情報にアクセスができるということです。(もちろん、機密情報・顧客情報・個人情報などはしっかり制限をかけています)

透明性の確保の基準は「一番透明性を求める人が、知りたいときにアクセスできる状態」が1つの理想と考えており、(もちろん完璧ではありませんが)できるだけその状態になることを目指しています。

(参考)LayerX、メンバー数の変遷

20年1月頃は20名強で、23年1月で約150名まで増加。
週次定例の運用変更は、21年12月頃(約60名)のタイミングでした。

②情報の受信側 = 全ての情報を追おうとしない

情報の受け手側の「情報爆発問題」はどう解決したらいいでしょうか。

これは福島さんのnoteに詳しく書いてありますので、こちらを引用します。

LayerXのような情報が透明な会社で働く時、情報の受け手として、全ての情報を重く受け止めすぎずに情報を浴びようという、軽いスタンスを持って欲しいと思っています。
・全部の情報を見なくても仕事は回る
・全部の情報を受け止めなくとも、大きな問題はならない
・情報の流れが片隅にでも頭に入ってくることが重要
・重要な情報は繰り返されるので、全てがオープンになっていれば脳みそが反応するようになる

という感じです。全部読もうではなく、さっと読んで脳みその片隅に引っ掛けておこう。必要な時に情報はつながるというスタンスでオープンな情報と向き合うことも大切です。

情報の透明性はなぜ大事なのか ー情報の秘匿は善意から始まるー

端的にいうと、透明性が高い組織にいるからといって「全ての情報を追う必要はない」ということです。

あくまで達成すべきは「知りたいときにアクセスできること」です。

③共通 = テクノロジーを頼る

そして「共有負荷」と「透明性」のトレードオフを解決するのが、テクノロジーです。

例えば、1つの業務を考えたときに、私の場合ですと、

  • チーム単位

  • 事業部単位

  • 会社単位

それぞれに定例があり、共有内容もかなりの部分が重複しています。

そこで、私の場合は、Notion DBを活用して、

  • 報告フォーマットは全てNotionで統一する。

  • まず、チーム単位で、最も細かいレベルのタスクをDBで管理する。

  • 事業部、全社単位での報告時は、そのDBを参照し「細かくはここ見てくださいね」と前置きした上で、各単位に合った解像度になるようにサマリで補足する。(サマリ化もNotion AIが使えると最強なのですが、ここはまだ人間の方が強い)

というような運用をして、多少なりとも無駄な作業が発生しないような工夫をしています。(でも、もっといいやり方ありそう。ご存じの方いたら、教えてください!)

テクノロジーを活用、と大それたことを言いましたが、要は「最低限、ツールを使いこなそう」くらいの話でした。こういった積み重ねで業務の生産性は飛躍的に上がるので、所詮ツールと侮らず、できそうなことから試してみてください。

おわりに

透明性の高い組織作りに「銀の弾丸」はありません。

個人的には、小さいチームであれば、共有文化なんてない方が生産性高いじゃん、くらいに思っています。

それでも透明性を担保するということは、

情報のアクセシビリティを上げることで、1人1人のパフォーマンスが最大化すると信じること(=チームへの強い信頼)

に尽きると思っており、このある種の「宗教」を信じることができるか、が大切なんじゃないかと思っています。

「うんうん、共感できる!」という貴方は、ぜひカジュアル面談しましょう。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

<直通のカジュアル面談はこちら>


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