実写化についてと【映画感想】ゴールデンカムイ
作品のドラマ化にあたっての不本意な改変に心を痛め、作家さんが最も辛い結末を迎えた最近の事件。
ちょうどリアルタイムでその方のSNSの投稿が流れてきて、なんてことだと思っていたところだった。
心からご冥福をお祈りします。
頭に浮かんだのは、三谷幸喜のコメディ映画『ラヂオの時間』だった。
たまたま前の日にパートナーとお酒を飲みつつこの映画を観ていた。
(DVDをもっており、「みんなの家」とかも繰り返し見ている)
その中でシナリオライターの鈴木都(鈴木京香)が叫ぶ言葉。
「みんなで寄ってたかって私の本めちゃくちゃにして!!……本の通りにやってくださいっっ!」
あるラジオドラマの制作現場。
演者のワガママで録音ではなく生放送。
そのなかでさらに演者のワガママで起きるすったもんだ。
コメディなので、面白おかしく表現され、最後もハッピーな感じで終わってるけど、やってることはかなり酷い。
実際パチンコ店勤めの主人公、律子の設定は女弁護士メアリー・ジェーンに変更となり、漁師の虎蔵は最終的に宇宙飛行士のドナルド・マクドナルドになってしまった。
シナリオライターコンクールに応募したのは都ひとりだった。
一人だから一位。
しかも今回初投稿だったという都はその世界の素人だ。
シナリオの手直しは仕方ないにしても、律子がメアリー・ジェーンは酷い。
これは律子役の千本ノッコ(戸田恵子)から因縁のある名前だからこの名前ではやれないなどと本当か嘘か分からない理由で、八つ当たりとも思える役名変更の要求があったからだ。
そしてその一言からどんどんと関係者の手によって台本は改変されていくのだ。
作品、作者へのリスペクトは一切感じられない。
スタッフ、演者、みんなが自分のことしか考えていない。
いつも楽しく見ていた作品だが、今回の件があって改めて考えさせられた。
この作品も、脚本家である三谷幸喜自身の経験が反映されているんだと思うと……。
漫画家さんの件について、憶測で物事は言えないけれど、改変については作家さんが了承しているのならば問題ないかったはず。
(ファンは嫌だと思うけど)
ただ、変えないことを約束しておいて改変したなら、それは決してあってはならないことだ。
誰がどうしてそれを許可したのか、そもそも作家さんの意向はちゃんと伝わっていたのか、そのことについて契約書に記載があったのか、それは分からない。
ただただ、もう二度とこんなことは起きてほしくない。
物語を愛する人間のひとりとして。
わたしはどんな作品でもできるだけ原作を読んでみたいと思っている。
出会った作品の映像が先でも。
発信されたものの解釈は人それぞれだったとしても、物語を生み出した作者さん自身から、原作から受け取りたいものがあるからだ。
先に原作に出会って好きになった漫画や小説の実写化の話題が上ると毎回ザワザワする。
大好きな漫画だと、アニメ化の話題ですら緊張が走る。
声優さんに詳しくないので、推し声優さんの話題で心が華やぐこともなく(中の人などいないっ)、見るかどうか、ソワソワしたことも数回ではない。
たとえば台詞ひとつにしても、本から得た自分なりのイメージがある。
それがアニメ化、実写化することで途端に否定されたような気持ちになることがある。
正解はコレなんだと押し付けられたような変な気持ち。
ゲームですらそうだった。
(キャラが喋らない時代から喋る時代への境目に立ち会った歴史の証言者)
そして映画となれば、2時間程度の尺に収めるための改変が必要となる。
仕方がないとはいえ、これが最も原作派にはキツイ。
他愛のないやりとりの積み重ねこそがキャラや物語への親しみを深める要因だったりもするからだ。
逆に改変具合によって、時系列などが整理され、作品が分かりやすくなることもあるけれど。
魔女の宅急便も幼少期に原作を読んでいたので、映画をみたときは、色々アレ?と思ったし、エッ…ここで終わるの??と拍子抜けした。
(作品の良し悪しではなく)
風の谷のナウシカは映画に出会ったのが先で、幼い頃から大好きで何度も繰り返して見たが(今でも最後までアテレコできる)大人になって原作を買い、読み、映画があそこで終わるのは幸か不幸か、と頭を悩ませた。
原作は傑作です。
難解でなかなかに苦しい話ではあるけれど是非読んで欲しい。
ただ、長編の作品とかだと、続編の制作でしっかり原作を辿っていくものもあり、出来が素晴らしいと原作派も十分楽しめるものにもなる。
で、最近ですとゴールデンカムイです。
最初『実写化』の文字が目に入った時、ハァァァ!?!?
と怒りすら湧いた。
あの筋肉を……あの人数集められるのか??
だいたい、アニメ化ですらビビったのに、劇場でチン○やら勃○やら連呼させられるのか?
※作品ご存知ない方はギョっとされるでしょうが、そんな変な感じじゃないんですよ?ただし、もっと酷いところはいっぱいあります。(◯◯探偵とかさ……もはや全てを伏せねば書けぬ……)
それを……アシㇼパさん役の子に言わせるのか!?
アシㇼパさんと杉元の相棒関係とか、設定もちゃんと守られるのか?
アイヌのことも、あの時代の北海道のことも、しっかり表現できるのか?
と、ありとあらゆる角度から疑問符が浮かびまくった。
変な脳汁が出そうになるくらいはこの件について考えた。
SNSでもかなり荒れたようで、全員鈴木亮平でいいんじゃないか、なんて暴論まで飛び交っていた。
今の日本の俳優さんであそこまで身体を作り上げられる人、なかなかいないよ。
そしてキャスト発表。
この時のポスター。
相当原作に寄せてきていた……。
ちょっと興味がでてきた。
杉元が山崎賢人。
うーん……筋肉……相当パンプアップしないと……不死身だもん。大丈夫かな。
鶴見中尉の玉木宏はハマりすぎなのでは。
(ロシアでの過去編も演じるのかな)
土方さんの舘ひろしもなかなか……。
月島軍曹……やるな。
アシㇼパさんが山田杏奈ちゃん、いい。
サイズ感がちょっと違うけど、そこは大丈夫そう。
みんな……いいんだけど。
いいんだけど、ポスターに収まる人があまりにも原作に寄せすぎて漂う……コスプレ感。
これを映画内でどう馴染ませて行くか。
そして公開。
予告は見ていた。
ある日曜の朝、突然思い立ち、ネットで朝一番の回を予約し、劇場へと向かった。
朝一番が好きなのだ。割と空いてるし。
突然思いついたから開演まで時間がほとんどなく、駐車場から劇場までわたしは全力で走った。(なんでこんなことに)
それでもしっかり珈琲を買い、席に座って息を整えた。
ショッピングモールの映画館、それも朝一番。
狙い通り人はまばらだった。
見渡すと年配のご夫婦が数組。
そして始まる直前に親子が入ってきた。
両親と、小・中学生くらいの娘さんふたり。
で、反対側から中学生か、小学生かという感じの男の子四人組が。
なんだか妙な空間だった。
そして幕は開いた。
結果。
かなりの再現度だった。
自然が素晴らしかった。
北海道には一度訪れたことがあるが、深い自然には触れることができなかったから今度行けることがあればそういうところを味わいたいなぁと思った。
(寒いの苦手なんだけど……)
あとからネットで森のシーンに杉が一本も映ってなくて素晴らしいと言う意見をみて、なるほどと思った。
杉は人工植樹の痕跡だからと。
一応、まだお耳に障りのある言葉は流れてこなかったので、娘さん連れの親御さんは気まずい思いをせずに済んだと思う。
(次回は知らないぞっ)
あと、オハウ!
オハウが美味しそうだった。
ヒンナヒンナ!
フードコーディネーターのはらゆうこさんが担当されているとのこと。
実際にあった料理だけど、現在はないものの再現ということで色々苦労もあったようだ。
食事のシーンは本編にたくさん出てくるが、もちろん食いしん坊のわたしには未知の料理に興味津々の楽しいシーン。
そういうところを手を抜かず大切に作ってくれていて嬉しかった。
カワウソの頭は流石に模造品だそうだが、当たり前だよね。
(はらさんご本人は、原作に寄せてニシン蕎麦のシーンは熱々の湯気にこだわったそうだけど、映画では食べてしまったシーンからのスタートで少し残念だったとのこと。くぅぅ……リスペクトっ!)
インタビューはこちら。
実写『ゴールデンカムイ』アイヌ料理どう再現 キャストもハマった食事シーンの裏側
わたし的に少し引っかかったところは……。
ウィルクがアシㇼパのために彫ったマキリが真新しく少し簡素に見えたこと。
柄の部分はそんなものなのかな。鞘の部分には細工はあったし。
ストーリーにも変な改変はなかった。
かなり原作に忠実だった。
『ゴールデンカムイ』最終巻ラストの真相…野田サトル1万字インタビュー#1でもそこについて触れられていた。
実写は実写の論法、脚本というのがあるだろうが、主人公以外のキャラがモノローグで心情を伝えるというのは難しいので、セリフや映像を遠慮なく変換できるのは原作者の自分しかいない、というようなことだ。
そうなんだよね、そうなんだ。
そして今作はやはりかなり野田さんとのやりとりがしっかりと行われていたんだな、と思った。
演者の方もみんな良かったと思う。
ありがとうございます……。
また観たい!
ただ……欲を出せば皆さんの筋肉を……あともう少し……(欲深くてすみません)
特に源次郎ちゃんはもう少し牝牛感が欲しかった。
続編に期待します。
牛山役の方はむしろ体重を絞ったらしく、役者の皆さん本当に大変だなぁと思います。
ゴールデンカムイはどのキャラクターも個性的で素晴らしく、箱推しだが、その中でもわたしの最推しは源次郎ちゃん……を差し置いて、鯉登少尉です。
(ボンボン!)
鯉登と月島の関係。うぅ…(泣)
心も(少年期はさておき)太刀筋もまっすぐな音之進!
鯉登はまだ登場していない。
どうなるのかドキドキ……キェェェー!
次回作も期待しております。
あと、アニメ5期も楽しみに待っております!!
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