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自分の欲には正直でいいのだとサーティワンで教えられた

「サーティワンの割引券もらったからアイスでも食べに行く?」

恋人から思わぬ提案が飛んできた。

前々からnoteを読んでくださっている方はご存じかと思いますが、私はアイスが大好き。

もちろんサーティワンも大好きで、シーズンごとの限定フレーバーも欠かさずチェックしている。

前々から気になるフレーバーも出ていたので、恋人の提案に喜んで乗り、サーティワンデートをすることにした。



店舗前に着き、メニュー表と睨めっこする。

一つは決まっていた。(この時点でダブル食べる気満々)

サーティワンのフレーバーの中で一番好きなものが、春先に期間限定で発売されるバーガンディチェリーなのだが、それに似たフレーバー『ダークチェリーフォレスト』というものが出ていて絶対にこれを食べようと決めていた。


ひとつは決まっているけどもう一つは何にしよう、、、

だったらシングルで頼めばいいだろ!と言う声も聞こえてきそうだが、どうせサーティワンを食べるならダブルを食べたいじゃない?

好きだからと言って同じフレーバーでダブルにするのも違う気もするし、なんだか気恥ずかしい。

「なんでも好きなの選んでいいんだよ。」

と恋人は言い続けていたけれど、どうしても決めきれなくて恋人に選んでもらった。

自分の中では候補にあがっていなかったフレーバーだが、色味もポップでサーティワンらしさが溢れていて魅力的だ。

さっそくこの二つを注文して作ってもらう。


高揚感を高まらせながらお会計をしている時に、四輪のカートを押した腰の曲がったおばあちゃんがお店にやってきた。

やっぱりいくつになっても、どんなに気温が下がってきても、みんなアイスが好きなんだなぁ。なんてぼんやり考えていたら、おばあちゃんがビックリすることを口にした。

「私ね、この大好きなキャラメルのやつが食べたいの。大きいのをふたつ、コーンにのせてくださいな。」

おばあちゃんが頼んだのはキャラメルリボン
しかも、レギュラーサイズのダブルで。

私はびっくりして耳を疑ってしまった。

最初は誰かと一緒に食べるのかな?なんて思ったりもしたけれど、近くにそれらしい人はいない。

じゃあ、やっぱりおばあちゃんは、このアイスを一人で食べるの?

私はアイスを受け取って席に着いたけれど、どうしてもそのおばあちゃんが気になってしまい目で追い続けた。

やはりどうやら、アイスは一人で食べるらしい。

重そうな足取りでフードコートの席に着き、にこにこ顔でアイスを頬張りはじめた。

私はその様子を横目で見ながら、自分のアイスを口に運ぶ。

もちろん、アイスは美味しかった。

想像通りのチェリーのアイス、それに深みを持たせるチョコの香り。

恋人の選んだフレーバーもパチパチとしたサーティワンらしい楽しさと、甘いチョコと爽やかなミントが合わさって特徴的なものだった。

でも何故か、ほんの少し空虚な気持ちが湧き起こった。

横目でチラリとおばあちゃんを盗み見る。

相変わらず優しい笑みをそっと浮かべながら、ダブルのキャラメルリボンを口に運び続けている。

私は、二度と会う事が無いかもしれない店員の目や、見えない誰かの目を気にして、同じものを二つ頼む勇気がなかった。

見知らぬアラサーの女が同じフレーバーをダブルで頼んだとして、いったい誰がそんなことを気にすると言うのだ。

だいたい、そういう細かいことを気にするから生きにくいんじゃないのか。

好きなものをたくさん食べた方が満足度は高いだろうに。

ほら見なよ、おばあちゃん、あんなに幸せそうじゃん。

決してこのアイスを選んだことを間違いだとは言わない。
今食べてるものも美味しいし、新しい美味しさに出会うこともできた。

でも今度サーティワンに来る時は、必ず大好きなバーガンディチェリーをダブルことを心に誓った。

サーティワンでくらい、自分の欲に正直になろう。

そんなことを、キャラメルリボンのおばあちゃんに教わった。


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