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私の好きなミルクさんの歌 002

二つ目も静かな気付きを含んだ一首です。

・ 十代の弦は張り詰め細く鳴りモスキート音を今は聞けない

これも以前に聞いたことはあったのですが、「モスキート音」、調べました。
17キロヘルツ前後の高周波音のことで20代前半までの若者には良く聞こえるが、それ以降の年代の人には聞こえづらい音のことだそうです。

ミルクさんらしい、短歌を投げ捨てるように読んでいる若者を嘆いた歌だと思いました。同時に今その音が聞けないことへの哀しみも少し感じられます。聞き取ろう、理解しようと思ってはいても実際に音が聞こえるわけではなく、ただ細い弦が張り詰めている様子だけが目に入ってどうしようもなくもどかしいといった感じでしょうか。がむしゃらに奏でる音楽が湧き出している心の隙間から、漏れるモスキート音こそが彼らの心情を理解する為の鍵だというのに、私はもう聞き取れない大人になってしまったという少しの落胆が読み取れます。
本当の哀しみや痛みはいたずらに声をあげないものだという深い悟りも、この歌の奥にはあるような気がしています。
ミルクさんの歌はなんだかチョロQのゼンマイのような感じです。(変な例えですが)
巻き上がって心が自由に暴走して終わると、「ハイ、また巻きましょう」と元の場所から後ろに引っ張られる気分です。
それだけ自分の足元の本当に近い所に、未だ見落としている発見が幾つもあるのだと教えてくれているのかもしれません。
何度も何度も読み返すことをオススメします。

ミルクさん 短歌のリズムで  https://rhythm57577.blog.shinobi.jp/