全てのアスリートへ。ー目標設定編ー
はじめに
目標設定って難しいですよね。
チームとして『甲子園出場』とか『全国制覇』とか掲げてはいるものの、正直掲げているだけであとは毎日コーチの練習をこなしているだけ...
というようなチームや選手が一定数いるかと思います。
今回はチーム向けではなく、個人向けの目標設定に関するお話です。
(チームの目標設定にも通ずる部分はあると思いますので覗いてみてください)
目標設定で必要なこと
まず、スポーツにおいて、『全国制覇』など大きな目標設定は大体どのチームも行っています。
スポーツでこのような大きな目標設定がしやすいのは、結果が順位で反映されるので目に見えてわかりやすいからです。
しかし序章でも述べた通り、大きな目標設定を掲げるだけになってしまい、それに向けた個々人の練習になっているかは疑問符がつくチームは少なくありません。
なぜか。目標がまだ抽象的だからです。
ダイエットで言えば、
『痩せる!』
と宣言しているのと同じです。
いつまでに痩せるの?
何kg痩せるの?
なぜ痩せるの?
など具体的な部分が見えてこないですよね。
目標設定が具体的にできると日々の行動が少しづつ変化していきます。
では具体的とはどういうことか。
それは、"次の行動に繋がること"です
これだけではなかなかイメージつかないと思います。
スポーツで意識しづらい部分です。
でも大丈夫です。一緒に少しづつ具体的にしていきましょう。
目標設定は『SMART』に
チームの目標が決まったらその次は個人の中で一番大きな目標設定をします。
一般的に、目標設定する際のフレームワークは『SMART』を使用します。
つまり、
Specific(具体的な)→明確でわかりやすい言葉や表現を使用する
Measurable(測定可能な)→定性的ではなく定量的な目標設定
Achivable(達成可能な)→希望や願望ではなく、現実的な目標設定
Related(経営目標に関連した)→今回の場合はチームの目標にあっているか
Time-bound(時間制約がある)→目標に期限設定をする
の頭文字をとって『SMART』です。
ここからは具体例を出しながらいきましょう。
『プロ野球選手になる』
という目標を掲げていたとしましょう。
『SMART』に沿って1つずつみていきます。
まずは『S』
これはそのままで良いと思います。プロ野球選手は誰がみてもわかるので。
続いて『M』
そのままでもある意味定量的ですが、”どのようにしてプロ野球選手になるのか”があるとわかりやすいです。トライアウトなのか、ドラフトなのか。ドラフトだったら何位指名が良いのか。
ここまであると良いですね。
そして『A』
今夏地区大会初戦で敗退してしまった選手が「今年のドラフトでプロ野球選手になる」は難しいですよね。がむしゃらに練習して”ギリギリ”達成可能なくらいの設定がちょうど良いかと思います。
その次が『R』
これはスポーツの場合あまり気にしなくて良いと思います。特に野球は個人の成績がチームの成績につながりやすい競技なので。あなたが陸上部からプロ野球選手を目指すなら話は変わってきますが。笑
ただ、チームの目標が『全国制覇』なのにあなた個人の目標が地区予選の3回戦突破レベルだったらそれはチームのためにならないですよね。
そして最後が『T』
これは『A』と重なる部分はありますがとても大切です。今あなたが高校1年生で『ドラフト1位指名されてプロ野球選手になりたい』とします。
高校3年時のドラフトなのか、大学4年時のドラフトなのかであなたのこれから歩む道は変わってきます。
いかがでしょうか。
ここまで設定できるとあなたが現在高校3年生であるとして、
『4年後、大学4年時のドラフトで3位以上で指名されてプロ野球選手になる』
くらいになると思います。
だいぶ具体的でわかりやすくなりましたね。
しかしこれは大きなゴールが決まっただけです。
このままでは当初とさほど変わりはありません。
あとは4年間をどう過ごしていくかを決める必要があります。
第三章
さて、その4年間を埋めていきましょう。
僕はスポーツの目標設定においてここが一番難しいと思っています。
なぜなら特にチームスポーツは個人向けの指標がなかなか存在しないからです。「これができたらプロになれる!」のような絶対の基準が存在しないですよね。
そこで、これからは自分で決めてしまいましょう。
順を追って説明します。
目標設定の理想は
大きなゴール→小さなゴール→その日やること
といったように分解できることです。
ビジネスの世界ではKGI、KPI、KDIなんて言ったりするそうです。
1つずつ説明すると、
KGI(Key Goal Indicator)→目指すべき最終的なゴール
KPI(Key Performance Indicator)→KGI達成にむけた中間指標
KDI(Key Do Indicator)→成果ではなく実行回数を計測するKPI
となります。
この中でスポーツの世界で一番設定が難しいのはKPIだと思っています。
なので今日はKPIを新たに定義してしまいます。
以下をご覧ください。
KPI:KGIを達成するために必要な数値(技術)目標+成果目標
KGIとは第二章で決めた大きな目標のことです。
(技術)と入れたのはどうしても数値化できない競技もあると思ったからです。
定義をもとにいくつか例を挙げると、
・50mを5.5秒で走る+地方大会で盗塁10個決める
・ストレートの10球に8球は155km/h以上を投げる+地方大会の自責点0
・スイングスピードを平均150km/hにする+甲子園でホームラン5本
などです。このように数値目標をできるだけわかりやすくしましょう。
ここまでできたところでいよいよKGI→KPI→KDIの具体例を作っていきます。
KGIは先ほどの
”4年後、大学4年時のドラフトで3位以上で指名されてプロ野球選手になる”
だとします。
ポジションが明記されてなかったのでピッチャーだとします。
①分析する
→まずはこれまでのドラフトで3位以上で指名された選手の経歴・特徴を徹底的に調べ、共通点を探ります(分析の仕方もあるのですがそれはこのnoteが好評だったらにします)。見つけたらその共通項が『プロになるための条件』になってくると思います。
②KPIを設定する
→分析が終わったら共通項の中のスキルの部分をKPIに設定します。今回は『ストレートの平均150km/h+武器となる変化球が2つ以上ある+大学日本一を経験している』だったとします。ここで注意点は見つけた共通項よりも少しレベルアップした状態をKPIに設定することです。理由はスポーツのレベルは進化していること、そしてプロになる選手は共通項に加えて何かしらの『武器』を持っているからです。『武器』に関しては今回は省きます。
③分析する
→KPIが設定できたら再び分析&調査です。今度はKPIを達成した選手がどのような練習をしてきたかを調べます。この時、できるだけ一次情報(本人の口から直接発せられた情報)をとるようにしましょう。
④KDIを設定する
→③を元にやるべきことを設定します。最初は調べた選手の練習を丸パクリしても良いと思います。重要なことは、ある一定の期間でPDCAサイクルを回しながらKDIの内容を自分流に変更していくことです。個人的にはPDCAサイクルの期間はスポーツの場合1ヶ月〜3ヶ月が良いと思いますがその理由もまた今度にします。今回は練習の共通項が『ウエイトトレーニング』だったとしましょう。
では、ここまで決めたことを整理してみます。
KGI:4年後、大学4年時のドラフトで3位以上で指名されてプロ野球選手になる
KPI:ストレートの平均球速150km/h以上で、武器となる変化球を2つ持つ。そしてエースとして大学日本一になる
KDI:KPIのためにまずこの3ヶ月は週に2回のウエイトトレーニングを練習後に実施する
いかがでしょうか。”今”やるべきことがだいぶ明確化されてきたと思います。
ここまで決まってしまえばあとはやるだけのところまできます。
今週やることはもう誰がみてもわかりますよね。
これが、本当にやるべき、"次の行動に繋がる"目標設定です。
目標を具体的にするメリット
ここで僕が思う目標を明確にする利点をお伝えします。
それは以下の通り。
1.自分がやったかどうかが○×で判断できる
2.課題も明確になる
3.トレーナーや栄養士などサポート専門職を有効活用できる
1.”週に2回ウエイトトレーニングをする”というところまで決まっているので、やったかやっていないかの判断が毎週可視化されます。適切な期間、毎週○がついた(実行した)にもかかわらず成果がなかなか上がらない物があった場合「今回は自分に合わなかったから一旦距離を取る」という判断ができます。
2.具体的に目標を決めるということは、自動的に現状とのギャップもわかるようになります。平均球速150km/hが目標なのに、現状135km/hであれば「あと15km/h上げれば良い」というように現状を具体的に把握できるので進捗管理がしやすくなります。また、目標をアップデートする際に現状は把握できているので、余計な時間がかかりません。
3.これは、まがりなりにも自分がトレーナーをしているのでそこからの目線になりますが選手のセッションを行う際、目標が明確である方が時間の無駄なく進行しますし、プログラムも作成しやすいです。「球速あげたいです!」って言われるよりも、「〇〇までに△km/h目指してて、今は□km/hです!自分なりには課題は××な部分だと思ってます!」って言われた方がわかりやすいし、フィードバックしやすいです。
※全ての専門家さんがそうだと思いますが、現在は目標が抽象的であってもセッション中に具体的にしていくので、大雑把な目標のままきてもらって構いません!!
目標は”変わるもの”
いかがでしょうか。
今までの目標設定と変わったでしょうか。
ここで1つ大事なことがあります。
それは、
『目標は不変であるべきものではない』
ということです。
「目標は一度決めたら変えてはいけない!」
というように思っているとどうしても抽象的な目標になってしましまいます。
目標は行動に繋げて初めて意味を成します。
そういう意味で抽象的な目標は直近の行動に繋げることが難しいので、ほぼ目標の意味を成しません。
少しずつでも良いので具体的な目標設定から始めてみましょう。
おわりに
スポーツで夢を語ることはとても簡単です。
さらにスポーツの夢は応援されやすいです。
しかしその夢に向かって適切に努力する、実行することがとても難しいんです。
『目標達成』という狭き門を突破していくために頑張るアスリートを僕は応援したいと思い、この文章を書いてみました。
僕のトレーニングは全員には届きませんが、文章なら届きます。
読んだ感想などあればリンクをつけてシェアしていただけると泣いて喜びます。そして次のモチベーションに繋がります。
少しでもアスリートの方のお役に立てれば幸いです。
ではまた。
Fulfill Sports' Dream 小出 慎史
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