舞台芸術関係者に対する適切な補填を求める要請

 本年2月26日、安倍総理大臣は、スポーツ・文化イベントの開催を2週間自粛するよう要請する考えを示しました。さらに、3月10日には、自粛期間を10日間程度延長するよう求める考えも示されました。

 こうした自粛要請は、法的根拠や強制力を伴うものではありませんが、要請を受けて、多くの劇場や劇団・楽団などが、予定していた公演を中止せざるを得なくなりました。

 公演を中止したことに伴う損失について、現在のところ、国からは補償などの方針は示されていません。しかし、多くの舞台芸術関係者は、中止によって、多大な経済的損失を蒙っており、経済的に力の弱い小規模な劇団・楽団をはじめとして、団としての存立そのものが危うくなりつつあるところもあります。

 舞台芸術は、一つの文化として役割を果たしているものであり、そうした舞台芸術による表現が失われることは、国民にとっても大きな損失となります。

また、多様な表現が流通し、多様な表現に触れる機会があるということは、民主主義にとっても重要な意味をもちます。劇場やホールは、多様な表現が流通されることを確保する「場」であり、表現者の想いを私たちに届ける「媒介」でもあり、そうした役割は民主主義の守り手と評価されるべきものでもあります。

 そうだとすれば、舞台芸術は、私たちの日常にとって不可欠なものであり、その存在が保証されなければなりません。とくに、今回のような感染症の拡大と総理大臣の要請に基づく公演の中止という事態については、適切な補填がなされるべきです。

 そこで、私たちは、所属の有無を問わず、舞台芸術にかかわる個人の集まりとして、政府に対し、次のことを要請します。

1.中止となった公演について、主催者に対し、既に支出した製作費や人件費などの経費を補填してください

2.1に該当しないことから、主催者から支払いを受けられない公演関係者に対し、出演料などを適切に補填してください

3.公演を行う際に、客席の間隔を広げるなど、通常に比べて客席数を減らすなどの対策を採った場合には、主催者に対し、適切な補填をしてください

 

                         2020年3月30日

 

       呼びかけ人(五十音順)
       伊原農(俳優)
       ケラリーノ・サンドロヴィッチ(劇作家、演出家、音楽家)
       国広和毅(音楽家)
       桑原裕子(俳優、劇作家、演出家)
       シライケイタ(俳優、演出家、劇作家)
       鈴木光介(音楽家)
       瀬戸山美咲(劇作家、演出家)
       中津留章仁(劇作家、演出家)
       日澤雄介(演出家、俳優)
       馬奈木厳太郎(弁護士)


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