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「地元鳥取を宇宙で元気に!高校生たちの挑戦(後編)」[鈴木 雄大]

「星取県」を名乗り、美しい星空や宇宙産業を武器に地域の活性化に取り組んでいる鳥取県。本記事では、そんな地元・鳥取県を宇宙で盛り上げようと奮闘する高校生たちを取材し、その取り組みを2ヶ月にわたって紹介している。11月号では、探求の授業をきっかけに1人の高校生が伝統産業×宇宙産業のイベントを計画し、一緒に計画を進める高校生たちやアドバイスしてくださる大人の方々を集め、プロジェクトとして本格的に動き出すまでについて述べた。
今月号では、高校生たちが進めるプロジェクトの3つのコンテンツ
(1) 絵本
(2) 名鑑
(3) お披露目イベント

について、詳しくご紹介する。

(1)鳥取県の宇宙に関連した名所を巡る「絵本」
幼稚園年長くらいの少女「宙ちゃん(そらちゃん)」が、鳥取県の様々な場所で空を見上げたり、 “宇宙人” (鳥取県にて、多様な方向から宇宙産業に携わっている方々)たちからお話を聞いて回るうちに、宇宙への興味を深め、将来自分も “宇宙人” になろうと決意する、成長物語である。
まだ小さい宙ちゃんが宇宙について学びながら成長していく姿を描くことで、同じように小さい子どもたちが宇宙に興味を持つきっかけになれば良い、という狙いがある。
構想当初は宇宙技術を紹介する図鑑を制作する予定だったが、情報量が膨大になりそうだったため、イラストを得意とする木島さんを仲間に加え、親しみやすいイラストをふんだんに使った絵本に作戦を変更した。
絵本には、次に紹介する「名鑑」で紹介されている “宇宙人” も登場する。絵本で気になる “宇宙人” を見つけたら、「名鑑」でその方の仕事やひととなりについて詳しく知ることができるという仕掛けだ。筆者もこの絵本を片手に、宙ちゃんになった気分で鳥取県の宇宙名所めぐりを行ってみたい。

宙ちゃん

絵本の主人公「宙ちゃん(そらちゃん) 」

(2)鳥取県で宇宙に関わる仕事をされている方々を紹介する「名鑑」
「名鑑」とは、鳥取県にて宇宙産業に携わって活躍されている “宇宙人” を40人ほど取材し、1人1枚ずつのカードにまとめたものである。

基本的には自分たちで取材先を考えてメールで連絡をとり、zoomで取材を行う。中には、これまでに取材をした方々からの紹介で新しく取材に応じてくださる方が見つかることもある。高校生にとって大人とメールでやり取りするのは骨が折れることだろう。思い返せば、筆者も高校生までは家族や友だち以外とメールをした経験はほとんどなかった。名鑑担当の大下さんは「最初は慣れなかったが、メールの作成にも徐々に慣れてきた。毎日手探りだが、勢いで頑張っている。」と語る。

中には、元から宇宙産業に関わっていた企業だけでなく、伝統的な産業で培った技術を活かして新しく宇宙産業に参入した企業もある。「宇宙産業」と言っても多様な形態が考えられるが、どのような “宇宙人” たちが、それぞれの強みを活かしてどのように活躍しているのか、注目だ。

(3)絵本や名鑑のお披露目イベント
作成した絵本や名鑑は今年度末にイベントを通して世間にお披露目予定だという。お披露目イベントの目玉の1つが会場を彩る和紙照明だ。

和紙照明は、鳥取県の伝統産業「因州和紙」を用いて高校生たちが自作する。因州和紙は絵本や名鑑にも使用予定であり、これらを作成するにあたり、和紙職人の方と連絡を取り、公共交通を乗り継いで山間にある職人さんのご自宅に伺った。インタビューを行うにあたり、「予備知識を入れて、聞かれたら嬉しい質問や、知識があるからこそできる質問をしようと心がけた。」と山根さん。

その努力の甲斐もあり、職人さんとのお話はとても盛り上がったようだ。盛り上がりすぎて準備していた質問を全て聞ききることができなかったほど。続けて山根さんは「インタビューを機に、和紙風の紙を見た時に本物の和紙か偽物かを考えるようになった。地域産業にも目を向けるきっかけにもなった。」とも語る。普段お話を聞かせていただく機会がほとんどない職人さんとの会話は、彼女にとって非常に鮮烈な経験となったようだ。

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お披露目イベントを彩る和紙照明の制作の様子


ここまで、高校生によるプロジェクトの3つのコンテンツを紹介してきたが、主に小さな子どもたちに鳥取県や宇宙に親しみを持ってもらう「絵本」、鳥取県で活躍する “宇宙人” の方々についてより詳しく知ってもらう「名鑑」、これらのプロジェクトを広く知ってもらうと同時に鳥取県の伝統産業をアピールする「お披露目イベント」と、本プロジェクトのバランスは完璧の一言だ。幅広い年齢層・幅広い地域の方々に彼女たちの素晴らしい取り組み、そして鳥取県や宇宙の魅力が届くことを願うばかりだ。本記事がその一助となれば幸いである。

本プロジェクトは「自分たちでできることはとことん自分でやる」という高校生の並外れた努力と、そのような高校生発案の斬新なプロジェクトを受け入れてくれる周囲の大人の方々、そして鳥取県という新しいことを始めやすい環境の全てがあって初めて成り立つものである。今後も彼女たち、そして鳥取県の取り組みに注目だ。

というわけで、2022年新春1月号からは「星取県」の取り組みに関する鳥取県庁産業未来創造課の井田さんへの取材記事を掲載します。お楽しみに!

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今回の取材の様子。ご協力、ありがとうございました!
写真の中段の左から木島さん、大下さん、
下段の左から山根さん、(株)amulapoの田中克明さん

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山根衣羽(やまねいゔ)
青翔開智高等学校2年。鳥取県出身。
星取県宇宙魅力発信プロジェクトで活動中。マイブームはアニメ鑑賞とアイスクリームとシャチ。

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木島野花(きしまののか)
青翔開智高等学校2年
イラスト担当。好きな色は黄色。

大下さん

大下知輝(おおしたともき)
青翔開智高等学校1年。青翔開智中学校高等学校でメディア委員会委員長を務める。専門は生物。本の虫。多趣味で好奇心の塊。好きな人工衛星はボイジャー2号。

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梶田息吹(かじたいぶき)
青翔開智高等学校2年
マイブームは洋酒チョコレート。趣味はドラムとギター。

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清水千絢(しみずちひろ)
鳥取城北高等学校 2年
アントレプレナー部部長

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橋本 栞 (はしもとしおり)
鳥取城北高等学校 2年
アントレプレナー部所属

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田中克明(たなか かつあき)
宇宙ロボットの専門、博士(工学)。(株)amulapoの代表取締役としてxR、ロボット,AI等のICT技術で宇宙体験コンテンツの制作を行う。(株)ispaceのロボティクスエンジニアとして月面探査車のモビリティの設計にも従事、その他、経産省ELPISから派生のELPIS NEXTの理事、早稲田大学の招聘研究員、TECHNO-FRONTIERの航空宇宙委員、日本かくれんぼ協会の研究員などを兼任。2050年に向けて宇宙を中心に科学技術を促進。最高峰の宇宙体験の開発を目指している。

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鈴木 雄大(Udai)
東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士2年
すいせい(水星・彗星)の大気や探査機に搭載するカメラの開発に関わる研究を行う一方で、「惑星の探検家」としてYouTubeチャンネル「宇宙冒険隊」など多様な媒体で活動中!
Webサイト: http://spaceadv.wp.xdomain.jp
YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/c/uchuuboukentai


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