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世界大戦

「まもなく第〇次世界大戦が始まろうとしてます」
 各国の記者が世界大戦の開戦をそれぞれの国に告げている。二〇XX年、地球では数年に一回世界大戦が行われるようになった。この世界大戦はたいて数日間行われ、戦うことで国の優劣を決めることができ、その数年間の地球をまとめる国が決められるのだ。各国の首脳陣はこの大戦の一年前から国の代表者を決めるべく動いている。そして、この年の開催国は日本の首都、東京である。
「おい、開催国がまだ代表を決められていないなんて前代未聞だぞ」
 アメリカの大統領が日本の首相に対し怒りをあらわにしている。
「国のこれからがかかっているものを気軽に決められないんだ」
「そんなの一番強い奴を選べばいいだろ」
 中国の国家主席が言った。
「中国の言う通りだ、俺たちも一番強い奴にしているよ」
 ロシアの大統領は中国に同意した。
「先の大戦ではブラジルが一番だったんですよね」
「そうですよ、それで毎日毎日サンバが流れているし、踊らされるしで大変でしたよ」
 イギリスの首相が質問しスペインの国王がため息をつきながら答えている。
「サンバは楽しいですよ。みんな明るくなります」
 現世界王のブラジルの大統領が楽しそうに答えた。
「ブラジルは今年は誰が代表なんですか」
 日本の首相が質問した。
「それはもちろん、前回と同じ方ですよ」
「まあ、そうですよね」
 日本の首相は頭を悩ませた。開戦まで残り一時間である。そこで日本の首相は閃いた。
「すまないが、今年一番大成した人を探してここまで連れてきてくれ。運も実力のうちというからな」
 日本の首相は補佐官に伝えた。
「この残りの時間で間に合うかね」
「もう残り一時間ですよ」
 各国の首脳陣に日本の首相は詰められている。
三十分後、日本の補佐官が戻ってきた。
「総理、日本全国探しましたが、大成された方は総理ご自身でした。昨年サラリーマンからご自身のお力でここまで上り詰めてこられた総理が一番大成された方です。」
「え、あ、そうか。そうであれば、日本の代表は私が出よう」
 各国の首脳陣は驚き、その空間がざわざわとし始めた。
 そしてついに、第〇次世界大戦が開戦される。各国の代表者たちは東京ドームの真ん中に円で囲むように並び掛け声とともに一斉に始める。
「最初はグー」
 全員が静まった。緊張が走る。全世界で同時中継されている。
「ジャンケン」
 一瞬の間が開く。出場者の中には日本の総理もいる。前回のブラジルの勝者もいる。
「ポイ」
 中心に向け出された約200人の手はきれいにみんな開いており、パーを出していると思われたが、一人の手だけ二本の指だけ出されていた。その手は日本の首相の手であった。
勝者が一瞬にして決まったのだ。全世界が驚いた。世界大戦がものの数秒で決着ついたのだ。

 そして、日本の首相だった男は地球のトップとなり、大戦のときに出した二本の指を平和の象徴となり、地球から争い消えた。

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