見出し画像

京もほっこり阿闍梨餅。

今日も今日とて、京に参る。
わたしは京女ではないけれど、学生時代のほとんどを京都で過ごした。

授業の空き時間があれば、友だちの自転車を借りて社寺をめぐった。
わたしにとって、中学時代から社寺の境内、庭は喫茶店みたいなものだった。

上賀茂神社の芝生で神馬餅、
今宮神社であぶり餅、
下鴨神社でみたらし団子。

右手に名物、ひざに文庫本。
そんなひとときを思い出していると、
おやつどきとて、小腹がぐぅ、と鳴った。

ああ京都のお三時、おやつといえば。
阿闍梨餅(あじゃりもち)が食べたい。

こんがりとした焼き色の皮を一口かじれば
もっちりとした食感の中から主張しすぎない粒あん。

大きすぎず小さすぎず、
だけど確実に小腹を満たしてくれる
阿闍梨餅は、地元京都人にも愛され、
気取らない京都土産としても大人気。
(なんてったって、おひとつ税抜き100円!)

さて、阿闍梨餅の名前の由来、
「阿闍梨」(あじゃり)についてはご存じでしょうか。

比叡山延暦寺の僧が7年かけて行う命を懸けた修行、千日回峰行。
一日数十キロを歩いての霊場礼拝、
九日間の断食、断水、不眠、不臥の行、
戦後満行した人は14人しかいないという、
過酷な荒行。

阿闍梨餅はその荒行を行う高僧、
阿闍梨さんの被る網代笠に見立てて名付けられたそうだ。

商品を入れてくれる紙袋や、化粧箱には、
絵巻からとられたような、地味な挿絵が入っているのだが、
よく見ると、驚くような意匠が描かれているのだ。

網代笠をかぶった阿闍梨さんと思しき人物が

後ろから、長い棒で「どつかれている」のだ!


当初度肝をぬかれたこの二人の関係の謎は
やがて解けた。

比叡の峰から下りて、京の町中を練り歩く
「京都大回り」の時期になると、
僧も気力体力を消耗していて、ヘロヘロになってふらつくこともある。

しかし、荒行中の阿闍梨さんは神聖な存在なので、手で触れてはならない。
この阿闍梨さんの歩を進めるために
お付きの者が「腰押し棒」で後押しているところ、
というのがこの絵の意味なのだとか。

ああよかった、阿闍梨さん、
どつかれているんじゃなかったんだ。

それでも、過酷な行には違いはないのだけれど。

今日も阿闍梨餅がおいしい。
冬場はカリっとオーブントースターで
ぬくめてからいただくのもオススメです。

京もほっこり。

阿闍梨餅は、京阪・叡山電鉄 出町柳から東へ歩いて10分の

「阿闍梨餅本舗 満月」または

全国の百貨店でも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?