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BIG.
今日はエアコンを付けなくても過ごせる日だった。
秋は金木犀の匂いが好き。
今年もそろそろあの匂いがしてくるのかな、とワクワクしつつ
去りゆく夏に少しばかりの寂しさが溢れる。
私には忘れられない夏の夜がある。
大学生の頃、みんなでアイスを食べながら歩いたあの夜だ。
当時私たちは実習期間真っ只中。
決して楽とは言えない実習だったが定時に終わるところだけは好評だった。
いくつかの班に分かれて行われる実習。
仲の良い子たちとはことごとくチームが分かれ、一人ぼっちで実習に向かう毎日だった。
実習先で特に仲の良い人ができるわけでもなく、仲良くなりたい人がいたわけでもなく、クラスに一人はいるであろう御局的存在の女の子に声をかけられないようにひっそり大人しく一日が終わるのを待っていた。
そんな私の唯一の楽しみは実習後の時間だ。
実習終わりは必ずある駐車場に行く。
実習が終わった他のチームの子たちと待ち合わせ。
集合時間はだいたい18時。
暑さが少しだけ落ち着いて、少しずつ秋の訪れる準備が整い始めた
ちょうど今みたいな時期だった。
まだ日が落ちる前のこの時間にみんなで駐車場に集まる。
今日もお疲れーという会話から始まって、気がつくと立ち話で日が暮れ、
お腹が空いていることに気がついてそれぞれ帰路につく。
だいたいこれがルーティン。
ただ、金曜日だけはちょっと違う。
いつもの集合、立ち話、日が暮れてお腹も空いて、そして焼肉へ向かうのだ。
今日は華金!
そう言って週一で焼肉食べ放題へ向かう私たち。
青春だったと思う。
2時間みっちりお肉を平らげ、満腹で再び駐車場へ。
解散、かと思いきや名残惜しくてまたダラダラ話す。
日付が変わる頃になってようやく帰ることを決断するが、華金の締めくくり、なんて意味不明な理由をつけてコンビニでアイスを買う。
パピコ半分こしようよ〜!
いいねいいね。何味にする?
え、3人じゃ分けられないじゃん!
お前は一人で食べてろ!笑
わいわいアイスを選びながら、結局私はパピコを半分こした。
3人組。残された一人はなぜかドヤ顔。
俺、このアイスが一番好き。今日は独り占め。
何にしたの?
「BIG」
...そんなアイスあったっけ?
2人して彼のコンビニ袋を覗き込む。
「それチョコモナカジャンボだよー!!」
「BIGじゃない!ジャンボ!いや、言いたいことはわかる。笑」
そんなくだらない会話をしながら再び駐車場に歩いていった。
女1人、男2人。
男女の友情を証明したくてたまらなかった時期だった。
あのとき、彼は私のことが好きで
私はみんなのことが好きで
この関係を壊したくなくて、みんながそれぞれに少しずつ気を使いながら過ごしていたのは間違いない。
あれからどれだけの年数が経っただろうか。
今でもこの友情は続いていて
あれ以来あのアイスは私たちの中でBIGと呼ばれ
まだ暑さは残るが少しずつ秋が顔を出し始めるこの時期になると
必ずあの夜を思い出してしまう。
未熟ですが、精一杯気持ちを文章にしていきます。よろしくお願いします。