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【活動報告】学びと遊び。児童労働のない世界へ ~インドとバングラデシュの教育プロジェクト~


ピープルツリーの母体NGO「グローバル・ヴィレッジ」のタネモリです。

ピープルツリーが活動の指針としている「フェアトレードの10の指針」のひとつに、「児童労働および強制労働を排除する」があります。

世界フェアトレード連盟がかかげる、フェアトレード団体が守るべき10の指針


子どもたちの権利を守り健全な生活や安全を実現することが、フェアトレードが目指す「みんなが幸せに暮らせる世界」のたいせつな条件だからです。

ピープルツリーは、フェアトレードの生産者パートナーであるインドの「タラ・プロジェクト」と、バングラデシュの「タナパラ・スワローズ」が運営する教育プロジェクトを支援することで、子どもたちに学びの場を提供しています。

6月12日の「児童労働反対世界デー」に合わせて、「ストップ!児童労働キャンペーン」が行われている今月。

教育という、子どもたちの未来を守る活動を続けているこの二つのプロジェクトの最新情報をお伝えします。

子どもたち自身が、児童労働を防ぐ学びを(インド)

ピープルツリーにビーズや手刺繍のアクセサリーや、ロングセラーの「おまもりパレワストーン」を届けてくれるインドの「タラ・プロジェクト」は、世界のフェアトレード運動の先駆者的存在です。インド北部で手工芸品の小規模生産者を支援する生産プロジェクトを運営する一方、貧困地域の児童労働をなくすため、教育の大切さを伝える啓発活動を行い、義務教育を補完する教育センターを5カ所運営しています。

ピープルツリーは、タラ・プロジェクトへの継続的な発注によって作り手の収入につなげると共に、アクセサリーの売上に応じて、アグラにある教育センターに支援金を送っています。

ソープストーンと呼ばれる石を加工する産業が盛んなアグラでは、大人の多くが石細工やその他の不定期の仕事についており、収入が不安定で貧困に苦しんでいます。

義務教育が無償で提供されるインドでも、貧しい家庭では文房具や制服などの費用を出せなかったり、親が教育の意義を理解していないなどの理由で、学校に通っていない子どもや途中でドロップアウトしてしまう子どもが多くいます。

タラ・プロジェクトの教育センターでは、こういった子ども達を対象に、宿題を手伝ったり教育を受ける意義や権利を教えたり、文房具や通学バッグを無償提供するなどして、正規の学校に通う後押しをしています。時には子ども達の親を招いて教育の大切さを学んでもらうこともあります。

アグラの教育センターには現在50名の子どもたちが通っており、地元の女性教師2名が常駐して主に算数と英語の宿題をサポートしています。また、人権や生きる価値などを伝える「ライフスキル・セッション」の時間帯もあり、子どもたちは学びを通じて自分たちが持つ権利を理解し、勉強を続ける意味を見出していくのです。

ライフスキル・セッションの一コマ

「児童労働反対世界デー」の6月12日、アグラの教育センターに20名あまりの子どもたちが集まりました。実は、今月は異常な猛暑のためセンターの活動は一時休止となっていました。デリーでは、6月が年間で最も暑い月。しかし、12日は特別な日ということで、数時間だけのイベントを行うことになったのです。(TOP写真は、集まった子どもたちとその保護者たち)

子どもの権利についてのお話を聞き、無償配布される通学バッグを受け取って、子どもたちは元気な笑顔で記念写真におさまりました。

センターは7月以降、気温が下がり次第、活動を再開する予定です。

通学バッグを受け取る子どもたち


海外からの訪問者が続々(バングラデシュ)

バングラデシュ北西部のタナパラ村で活動する「タナパラ・スワローズ」は、村の女性たちの働く場として手織りや手刺繍の衣料品をはじめとするフェアトレードの製品づくりを行うほか、女性の地位向上のための研修、有機農業の普及などさまざまな地域開発プロジェクトを実施しています。

ピープルツリーは、20年以上に渡って手織り布の服や雑貨をタナパラ・スワローズと共に開発し仕入れることで活動を支えてきました。また、タナパラ・スワローズが運営する小学校に支援金を送っています。

この小学校は、タナパラ・スワローズが発足直後の1976年から、貧しい家庭の子どもたちに学ぶ場を提供するために運営されていました。2022年末、地域の経済状況や政府の施策の変化などを受け、いったんは当初の役割を終えて閉校しましたが、教員の質にばらつきがあり生徒のケアが行き届かない公立学校では実現できない、少人数で質の高い教育を提供する場として2024年1月から再スタートを切りました。

現在、未就学児のためのプレスクールと、まだ1、2年生のみの小学校に、合わせて50人ほどの生徒が通い、3名の教師が午前、午後の2部制で教えています。

おそろいの制服で授業を受ける子どもたち

コロナ禍が終わった2023年以降、タナパラ・スワローズには海外からの訪問者が戻ってきました。フェアトレードと地域開発活動を両立させている好事例を視察するために、欧米のNGOのスタッフや大学生、支援を申し出る衣料品の専門家などがタナパラ・スワローズにやってきます。敷地内には訪問者が宿泊できるゲストハウスもあり、宿泊費の収入は貴重な活動資金となります。

日本からは、大学生の笹田まどかさんが2024年3月から1年間の予定でインターンとして主に生産プロジェクトの現場で活動しています。
(まどかさんに寄稿いただいているブログ「フェアトレードの現場でインターン! まどかのバングラ日誌」も、ぜひご覧ください)

Vol.1 自己紹介と研修プロジェクト調査報告会参加レポート
Vol.2 みんなで祝った世界フェアトレード・デー!

グローバル・ヴィレッジのブログ「The Fair Trade Style」より

また、4月から6週間、日本とアメリカにルーツを持つ大学生のヒンクルマン遼郎(リオ)さんが インターンとして滞在し、スワローズ小学校で英語の授業を受け持ちました。若い世代のネイティブスピーカーの先生とゲームなどを通じて英語に親しむことで、子どもたちは大いに刺激を受けたようです。

ヒンクルマン遼郎さん(左奥)から英語を学ぶ子どもたち

海外からの訪問者に接して視野を広げた子どもたちが、今後どのように成長していくのか楽しみです。


児童労働とSDGs

目標8:働きがいも経済成長も

持続可能な開発目標(SDGs)の目標8には、「2025年までにあらゆる形態の児童労働を終わらせる」というターゲットがあります。児童労働はその他の問題の根幹部分に関わるため、SDGs全体の達成目標である2030年より早い解決が求められており、期限まであと1年しかありません。

世界の子ども人口のおよそ10人に1人、1億6000万人もが児童労働に従事しているという現在、この数字をゼロにすることはとてつもなく難しいように思えます。

しかし、インドとバングラデシュの二つの教育プロジェクトだけでも、学ぶ経験と意欲を得て自分で自分の人生を切り拓く力を身に着ける子どもたちが毎年数十人、数百人と巣立っていきます。

このようなプロジェクトが発展し、さらに他の団体や地域にも広がっていくことで、一歩ずつではあっても着実に、児童労働のない世界に近づいていけると信じています。


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