ピープルフライドストーリー (50) **凄腕スナイパー (漫画化希望の原作ショート小説)
【作者コメント: 新年早々に、各地でいろいろな事が起きている…。……皆様、なんとか……生きていきましょう。……】
……………………………第50回
凄腕スナイパー
by 三毛乱
その殺し屋は、自らを凄腕スナイパーであると自認していた。
自らを高く買って貰うために、雇い主は大富豪と限定していた。そして、大富豪を次々と渡り歩いていた。次なるお目当ての大富豪は、広大な土地を持っていた。どこまでも広がっているかの様な砂漠も含まれていた。
スナイパーは富豪の所有する豪邸で、ある提案をした。
「これまでの私は、もちろん射撃の腕はあります。1キロや2キロメートルのターゲットを抜かりなく撃ち抜く事が出来ます。百発百中です。この技術をステップアップさせていきたいと思っています。3キロ、4キロ、5キロメートル……いや7キロメートルの標的物でも確実に撃ち抜く程の性能を高めたいと思っています。銃の起動装置の改良が必要かもしれません。高性能の照準装置も造らなければなりません。すべての費用を出していただければ、7キロメートル先のターゲットを撃ち抜く銃が完成します。それが出来れば、あとは、銃身の先に目標人物が来るのを待つばかりです。私を雇っていただいて、その銃の完成への費用も援助していただきたいのです」
貫禄のある小肥りの大富豪は「う……む」と言った。
彼は所有している射撃訓練場でのスナイパーの腕前と、スナイパーのこれまでの経歴を調べた。そして、銃の改良への並々ならぬスナイパーの熱意を感じとり、提案を了承した。
数ヶ月後。
砂漠の中での、完成した銃のお披露目したいとの連絡があった。
富豪は指定された日時に、スナイパーと砂漠地面に設置された銃が待っている地点へと、出向いていった。
「遂に完成しました。喜んで下さい。これで間違いなく、7キロメートル先の標的物を正確に撃ち抜く事が出来ます。飛ぶだけなら、10キロメートル以上も弾丸は余裕で飛びます」
スナイパーは地面に伏せて、完成して設置された銃に触れて、狙撃スタイルで構えた。そのまま、尚も言った。
「あとは、この銃の銃身の先に標的物が来て、ドローン機からの情報と連動している高性能照準装置で、狙った相手を確認する事が出来れば、100パーセント百発百中で相手の息の根を止められます」
富豪は腕を組んで「う……む」と言った。そして、スナイパーにぐっと近寄った。片方の靴を脱ぐと、それを振り上げてから振り下ろし、思いっ切りスナイパーの頭をひっぱたいた。
砂漠地面で伏せて、銃身が7キロメートルもある銃を構えていたスナイパーの頭部は、
パッコーン
と、とっても良い音がした。
(終)