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赤ちゃんに教わった事業のミライ。People「お米のおもちゃ」編part1『ピートラ』Vol.73

ピープルでは商品の良し悪しを決めるのは赤ちゃんです。
代表である、わたくし機ちょーまさとの感性よりもガチで赤ちゃんの感性が優先。しかも、社内的にはこれが当たり前のこととして捉えられています。
このことは世界に誇れる企業文化だと、個人的には思っています。

そんな経緯をもつロングセラーの一つ、「Peopleのお米のおもちゃシリーズ」について、数回の連載で語る『ピートラ』番外編をお送りします。第一回は機ちょーまさとがアツめ、クドめに語ります。

さて、前提から。
実ははやりすたりの激しい玩具市場で、一つの商品が「15年も継続」はかなりレアな数字と言えます。
なので業界の方によく聞かれます。「ピープルは(ノンキャラ商品なのに)、どうやってロングセラーをつくれるの?」(※玩具市場はキャラクターを付けて販売数を伸ばす戦術が主流なのでこういう質問になります)。
こたえはもちろん、子ども観察に時間かけてるからなんですが、加えてこうお伝えしています。「ピープルってヘンな仕事を色々やるんですよね」。


おもちゃづくりのために、田植えをしてきました

先週のヘンな仕事。
新潟県は南魚沼市にあるPeople農場にて行われた、田植え体験のイベントに家族4人で参加しました。

無言で泥に苗を置いていく、ピープル社員とその家族たち

社員やそのお子さんたちと一緒に、素足でじゃぼじゃぼ水田に入って、素手で苗を植えるんですが、大人も子供も始終無言&夢中です。スピードと正確さで、隣の人と静かな競争が始まったりしましたがやっぱり無言。もっと子ども達ときゃっきゃイメージだったんですが……笑。

普段、頭を使う仕事以外は、全部外注やAIに頼んじゃえ!と手の作業を減らすことを言われるピープル、こういう頭を使わないで、黙々と体を動かす仕事が楽しくて仕方がないんだなあとしみじみ思いました。

また、こちらは農薬不使用のため、カエルやらゲンゴロウやらがたくさんいて、都会に暮らす我々には新鮮です。めっちゃ楽しい。でもみんな静か。

……さて。
問題はなぜおもちゃつくるのに田んぼやってんの?ということです。

我々当事者としては、新しい素材追及として始まったこのプロジェクトですから、使っているお米や地域のことも芋づる式に研究していくことになり、気づいたら田んぼをやっていたというわけです。そうやって研究にのめり込んでいく自分たちのことは、やっぱりちょっとヘンだなとは思うんですが。

でも、だからこそこのシリーズが15年も続いていると思うんです。

お米のおもちゃのはじまり

ピープルのお米のおもちゃシリーズはもともと、2000年代前半ごろ「食の安全」「口に入れるものへの不安」などが話題になっていたころから、「日本の親御さん方が、本当に安心して赤ちゃんに渡せるもの」として素材探しを始めました。

そんな中、食物を原料としたバイオマスプラスチックという素材と出会い、お米やお茶の出し殻、トウモロコシなど様々な食品原料の可能性を知りました。玩具での使用実績はありませんでしたが、環境面で良い点もあったことから、これだ!と思ったんです。
……そこまでは良かったのですが、原料の品種や配合率により、あまりに性質が大きく変わってしまう問題に直面し、試行錯誤が始まります。
完成品として赤ちゃんが遊べる強度や重さ、品質にならないと意味がない。

ものすごい数のトライ&エラーを繰り返し、お米51%の配合率と、”赤ちゃんが夢中で遊べるカタチ”を実現するための内部工夫がつまった構造(外見はシンプルなんですが)、そして国内製造という工程を経て、今でも続く商品が完成しました。

お米をたっぷり使った素材を加熱してつくるので、完成品はお餅やせんべいのような良い香りがする、という副産物がついてきました。

そして2010年、第一弾として「純国産 お米のつみき」発売となりました。「赤ちゃんが舐めても安心」なことに共感をいただき、大ヒットに至りました。

お米のつみき、初代は白米色のみでした

その後、純日本製で赤ちゃんが舐めても安心のおもちゃ、という点が海外の方にも人気に火が付き、特に中国人観光客の爆買いブームと共にさらに成長しました。

コロナ禍とインバウンド需要

ところが2019年、コロナ禍が始まり、おもちゃ業界に大きな影響を与えました。巣ごもり需要でものすごく売れる商品と、激減してしまう商品とに分かれたんです。

お米のシリーズは減してしまった商品です。その原因は海外からの旅行客が、日本に事実上来られなくなったこと。

その後、コロナの騒動がだいたい落ち着いた今になっても、このインバウンド需要は復活していません。もともと大半を占めていた日本のお客様が減ったわけではないんですが、ニーズの限界を迎えたかに見えました。

根強いファン(赤ちゃん)が教えてくれたミライの姿

ところで、ピープルは新しい商品づくりにリソースを集中するため、ぽぽちゃんやPeopleじてんしゃという一時は会社を支える強力なロングセラーシリーズを生産終了にしました(『ピートラ』過去ログでも何度か話題にしました)。

そんなバッサリやっちゃうピープルでも、お米のシリーズを終了させるという発想はありませんでした。なぜだかは自分たちでもわかりませんでした。

そこで、もうすぐ15周年を迎えるこのタイミングで、改めて「お米のおもちゃとは、赤ちゃんにとってどんな価値があるのか?」という根本的な問いに立ち戻ることにしました。「なめても安心なおもちゃ」以上の何かがあるのかも知れない。
まずは、購入者からいただいたアンケートを追跡調査していきます(いつもの手順です)。すると

「うちの子、お米のおもちゃじゃないとなめかみしてくれないんです」

こんなお声をいただきました。え……そんなことってある?と一瞬思ったんですがそういえば。
このおもちゃで舐めて遊ぶと、よだれがあふれ出ちゃう子が結構いらっしゃいます。赤ちゃんと商品のスチール撮影をしていると、したたるよだれがばっちり映ったりするんですよ。他の舐めかみおもちゃでは、そんなだらだら滴るほど出るのを見たことがない、というほど。

お米の香りと、独特のやわらかでしっとりした感触が原因……と、考えて良いのではないかという結論になりました。

そして、私たちはあまりに当たり前すぎて忘れていたことがあります。
ピープルは商品開発プロセスとして、これでもかという回数の試作テストを繰り返して、執拗に赤ちゃんが良く遊ぶことを確認してきました。

そこにお米が原料になったことで、さらに赤ちゃん喜ぶ要素が上乗せになったのでした。これは……発売当初に想定していたよりもずっと、赤ちゃんのそばに、常に置いておくものとしてふさわしいおもちゃなんじゃないか。

お米のおもちゃ、15周年イベントをはじめます

15周年という機会に、改めてこのおもちゃの価値を私たち自身で見直し、もっと多くの赤ちゃんに遊んでもらって、生まれ持った「なめたい かみたい」好奇心を存分に満たしてもらおう、ということでプロジェクトが動き出しました。
冒頭の田植えイベントはその第一歩目として、素材からこだわって自分たちで作る体験をし、地元の方とつながりながら、より良いモノづくりにつなげて行きたいと開催したわけです。

長くなってしまったので、お米のおもちゃ連載第一弾は一旦ここで終了します。次回は開発にまつわるエピソードを、企画・開発チームのメンバーに書いてもらう予定です!
最後まで読んでいただきありがとうございました!

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